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行政が選ぶデザインが、「・・・」な評価を受ける訳

2015-08-21 19:47:34 | アラカルト

2020年の東京オリンピックのエンブレムデザイン騒動は、いろいろなところへと波及し始めている。
私にとって身近な「名古屋東山動植物園」のマークまで、疑惑をもたれているようだ。
HUFFPOST:佐野研二郎氏デザインのマーク、東山動植物園が調査に乗り出す

佐野氏のデザインパクリ?問題が、発覚する前から今回のエンブレムデザインは、イマイチ評判が良くなかった。
このエンブレムデザインよりも不評なのは、オリンピックでの「観光ボランティア」が着用する、ユニフォームだった。正しくは、東京都「街なか観光案内」ボランティアの制服という事らしいのだが、確かにデザインを見てみると「なんだかな~」という気になってしまう。
東京都:報道発表資料「おもてなし東京」東京観光ボランティアのチーム名、ユニフォーム決定!
このユニフォーム発表直後に法被のデザイナーさんが発表したデザインの法被のほうが、評判が良いという話もある。
しかし考えてみれば、行政が関係するイベントで「素敵なデザインだな~」と思えるような、デザインというのは案外少ないのではないだろうか?
それこそ、1964年の東京オリンピックのポスターデザインをした亀倉雄策さんくらいで、その他となるとイベントそのものは覚えていても、エンブレムデザインだとか(スタッフ)ユニフォームなど印象に残っているものは、ほとんどないと思う。

ではなぜ、そのようなことになるのか?と考えると、行政が行うイベントだからこそ、そのような結果になってしまうのでは?という気がするのだ。
一番の理由は、「誰からも文句が出ないような、著名な人に依頼する」という事があると思う。
「誰もが知っている著名な人がデザインをした」となると、「反対する人が少ない」と考えるからなのでは?
「著名なデザイナー」というだけで、「素晴らしい!」と思う人はある程度いらっしゃるし、それが悪いわけではない。何よりコトを進めるうえで、重要な点は「反対者が少ない」という点なのではないだろうか?
言い換えれば「トラブルを回避して、通りやすくする」ために、著名なデザイナーを起用するメリットがあるのだと思う。

もちろん「著名なデザイナー」に依頼したからと言って、そのデザイナーがデザインを起こすわけではない。
多くの場合、デザイナーさんの事務所のスタッフが、ある程度のデザインを起こした上で、大先生が手を入れる、というケースがほとんどだろう。
そうしなければ、大先生自身の仕事が停滞してしまうだろうし、事務所で働いている若いデザイナーさんたちの経験の場にもならないからだ。
その結果として、高額なデザイナー料を支払うことになるのだが、支払うにしても「著名なデザイナー」という、ある種の肩書は、周囲から納得が得やすい材料になっているはずだ。

ただしそのような方法が有効だったのは、20年位前の話だろう。
というのも、PCによるデザインが主流となりつつある現在では、ある程度PCで絵を描いたりデザインすることができる人であれば、ある程度センスの良いデザインを起こすことができるからだ。
もう一つは、様々なビジュアルの情報が増えたことによる、影響があるのでは?と、考えている。
それを使ってしまったのが、佐野氏のサントリーの懸賞バッグという事になると思う。

これから先、行政が様々なイベントでシンボルマークのようなデザインは、おそらく「公募」になっていくのではないだろうか?
そして選考そのものも、市民参加型になり、選にもれたとしても、それなりの理由がわかるような形式になっていくような気がする。
イベントの準備段階で、市民に参加を呼びかけることで、イベントそのものへの関心も高まるだろうし、ボランティアなどの募集もスムーズに行える・・・などのメリットがあると思われるからだ。