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医療の進化で、置いてきぼりにされる人のこころ

2017-12-23 21:53:08 | 徒然

先日、名古屋大学の先生が「尿でがんを見つける」という研究を発表した。
日経新聞:名大、がん診断に使う微小物質 1ミリリットルの尿から1000種類検出

このニュースを聞いたとき、過剰ながん検査のリスクが軽減される、と思った。
それだけではなく、リスクが判明した病気に対して、予防ができる可能性が出てきた、と感じた。
同様のことを感じられた方は、少なくないと思う。

今、医療の世界では(?)「ゲノム治療」に対する研究が、世界的に進められている。
むしろこれからの医療は「ゲノム(=遺伝子)レベルでの治療」が、主流になると言われている。
「精密化医療」と呼ばれる、個人に合わせた治療ということだ。
このような「精密化医療」が進むコトで、体の負担の大きい抗がん剤治療が、負担の少ない抗がん剤治療へと変わっていく可能性が高い。
個人に合わせた抗がん剤投与というだけではなく、「ドラッグデリバリー」と呼ばれる、がんにピンポイントで直接的に抗がん剤などを投与する、という考えも含まれていると言われている。
それだけではなく、「生活習慣病」や「認知症」などのリスクもある程度わかるのではないか?と、期待されているのが「ゲノム治療」ということになる。

このような「ゲノム治療」を考えた時、人の判断よりもAIのほうが的確な判断ができる、とも言われている。
何故なら、膨大な「ゲノム情報」から該当する情報を集め、分析をするというのは、人よりもAIのほうが得意だからだ。
一昨年だっただろうか?AIの進歩で失われる職業の中に、医師が入っていたのはそのよう「医学の進歩」があるからだろう。

本当だろうか?
今でも「がん告知」という場面では、患者となる人の多くは「茫然自失」となり、医師の説明など覚えていない、という方は多い。
むしろ「がん告知」の場面で、冷静に医師からの説明を聞き、その後の治療計画を考えられる患者のほうが、はるかに少ない。
何故なら、「がん」という病気に対する恐怖や不安、何故自分ががんになったのか?という、憤りや自分を責めるような様々な心の葛藤があるからだ。
そして「心の葛藤」は、人それぞれでAIのデータで分析できるほど、簡単なコトではない。

そう考えると、医学の進歩で人のこころは、置いてきぼりにされてしまう可能性のほうが高いのでは?
上述した「わずかな尿で、様々な病気がわかる」のは数年後だとしても、今でも「がんの遺伝子検査」や「出生前診断」と呼ばれる生まれてくる赤ちゃんの染色体異常を見つける検査は、行われている。
「がんの遺伝子検査」の場合、必ず「遺伝カウンセラー」のカウンセリングを受けるようになってはいるが、より簡便な「遺伝子検査」を行う機関は数多くあり、そのようなところで受けた「遺伝子検査」では、検査結果を通知するだけで、カウンセリングなどを実施している機関はほとんどないのではないだろうか?

医療技術や研究の進歩で、人の体や病気のことはわかるようになってきている。
それだけではなく、一人ひとりの個人にあった治療が受けられるような将来像も、ボンヤリとだが見え始めている。
だが、人のこころが取り残されるような「医療」は、本当の「医療」なのだろうか?
むしろこれからの医療は、人に寄り添う「人の力」が重要になっていくのでは?という、気がしている。