京大の本庶佑教授が、ノーベル賞受賞の報から約1週間。
ノーベル賞受賞の対象となった「PD-1」という分子の発見が、「免疫チェックポイント阻害剤」への研究・開発につながり、現在では臨床の現場でも使われている、という内容の記事などは新聞だけではなくテレビなどのメディアでも大々的に報じられた。
そして「やはり!」という感じで、「免疫」を謳う治療が一種の魔法のような言葉をして、使われ始めている。
このことに一番危惧をされていたのは、本庶先生ご自身だったようで、メディアなどが盛んに「免疫療法」という言葉のがんの治療法を取り上げるようになると、すぐに警告をされている。
朝日新聞:本庶さん、根拠ない免疫療法に苦言「金もうけ非人道的」
「免疫療法」と呼ばれるがんの治療法は、随分前から言われてきた治療法だ。
一番有名なのは「丸山ワクチン」だろうか?
「丸山ワクチン」そのものは、効果があった人・全く効果が無かった人がいて、がんの治療法として認められることは無かった。
「科学的根拠」となるモノが、まったくなかったからだ。
以来、「体に優しく・副作用もない治療」として、度々「免疫療法」と謳う治療法が民間療法としてではなく、一部の診療所などで行われてきた。そしてそれは今でも続いている。
とはいうものの、抗がん剤で苦しむのは嫌だ!と感じている患者さんや患者家族が数多くいらっしゃるのも事実だ。
場合によっては「使える抗がん剤は、ありません」と担当医から言われ、絶望の淵にいる方にとっては、新しい治療法と聞けば「藁にもすがる思い」だろう。
他にも「抗がん剤は毒だから、絶対に抗がん剤治療は受けたくない」という患者さんにとっても、エビデンス(化学的根拠)が無い治療法だと分かっていても、「免疫療法」を選ぶという場合もあるだろう。
インターネット上には「免疫療法」を謳う医療サイト(の広告)が、数多くある。
そのような状況の中で、患者自身は「自分にとって最善の治療」を、選択しなくてはならないのだ。
先日亡くなられた樹木希林さんは、「抗がん剤治療」を行わず「(特殊な)放射線治療」を受けていた。
標準治療(=最適で効果が高く、保険適用の治療)ではないが、乳がんの治療の中には「放射線治療」はある。
骨などに転移をしている場合、転移した骨に放射線を照射する、という治療も標準治療として行われている。
その意味では、樹木さんが受けていた治療は、標準治療から大きく離れた治療ではなく、「がんをコントロールする」という意味では、それなりの効果が期待できる方法だったのだ。
あくまでも想像だが、樹木さんには的確なアドバイスをされる医療者がいて、樹木さんご自身も「がんの治療」について、相当勉強をされていたのではないだろうか?
今回、本庶先生がノーベル賞の受賞対象となった「免疫チェックポイント阻害剤」であっても、決して魔法の治療薬ではない。
抗がん剤とは違う副作用もあり、対象となる患者さん全ての命が救えるわけでもない、というのが現実なのだ。
以前のように「先生にお任せ治療」では、患者自身が納得できる治療を受けることができない、というのが今の「がん治療」でもあるのだ。
「都合の良い甘い言葉や文句に騙されない」ことが、一番大切なのかもしれない。