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何とも皮肉なシアーズの倒産

2018-10-15 20:23:47 | ビジネス

アメリカの大手小売企業「シアーズ」が、破産法申請をした。
日経新聞:米小売り大手シアーズ、破産法申請 事業継続を探る

米国でも小売り大手であるシアーズだが、日本では「カタログ通販で事業拡大をした小売」として、経営などの授業で紹介されてきたのではないだろうか?
私が学生だった頃、米国という東海岸から西海岸までを網羅する小売り業の一つの在り方として、「シアーズ」が始めた「カタログ販売」が百貨店などの代わりをした、と教わった記憶がある。
「シアーズ」が登場する前の米国の小売りスタイルの一つが、アーサーミラーの「セールスマンの死(作品の内容とは関係ない)」で紹介されるのような、セールスマンが全米各地で売り歩く、という販売スタイルが一般的だった。
そのような販売スタイルから、カタログという百貨店の売り場で扱う商品を1冊の本にまとめ、全米の家庭に置かれるような販売を定着させたのが「シアーズ」だったのだ。
その後、ニューヨークなどの大都市に百貨店として店舗を持ち、全米展開をしてきた。
この「シアーズ」の他にも、「メイシーズ」や「JCペニー」など、百貨店でありながら積極的に「カタログ通販」をしてきたのが、米国の小売りスタイルの一つだったともいえる。

なぜ米国で「カタログ通販」が、一般的であったのか?と言えば、やはり広大な面積を持つ国だからだ。
ニューヨークのような大都市では、百貨店として売り場を持つことができても、全米各地に百貨店としての店舗を持つことはできない。
そのような地方であっても、店舗と同じように商品を売るためには、分厚いカタログで商品を紹介し、購入に結びつける通販という方法は、欠かせなかった。
「シアーズ」は、「メイシーズ」や「JCペニー」とは違い「カタログ通販」を中心に展開をし、その後百貨店の店舗を持つようになったのだった。

しかし、考え方を変えると「シアーズ」があったからこそ、Amazonのような「ネット販売」が急速に伸びたのかもしれない。
なぜなら、「カタログ通販」という消費文化は既に根付いており、生活の一部として「通販」は利用されてきたからだ。
それが「カタログ」という紙から、インターネットという新しいツールに代えたのがAmazonだからだ。
もちろん、Amazonが展開している「注文からお届けまでの日数の短縮」などの「通販の付加価値」を付けたことも大きいと思うのだが、それだけではAmazonが急成長することはできなかったのでは?と、考えている。

「カタログ通販」から小売業を始めた「シアーズ」が、Amazonのような「ネット通販」の台頭によって、倒産を余儀なくされる・・・なんとも皮肉な気がする。