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「宝島社」の1月広告が問いかけるもの

2019-01-07 19:10:51 | CMウォッチ

今朝、朝刊の中ほどあたりに「宝島社」の2面を使った広告があった。
「宝島社」の広告は、朝日、讀賣、日刊ゲンダイに掲載されていたようだ。
その広告について、Buzz Feed News が取り上げている。

Buzz Feed News :「嘘に慣れるな、嘘を止めろ、今年、嘘をやっつけろ」宝島社の広告に反響 

広告意図は、この記事にある通りだろう。
今世界中で「嘘(あるいはフェイク)ニュース」が無数に飛び交っている。
米国のトランプさんは、「自分の都合が良いことが真実で、都合が悪いものは全て嘘(フェイク)」とTwitterで、呟いている。
多くの米国民は、それが「嘘」であると分かっているはずだが、トランプさんのTwitterを見て、自分の持っている何かしらの不満のようなモノに対して溜飲を下している、という人達も少なからずいる。それが、トランプさんの熱狂的な支持者となっている。

トランプさんほどではないにせよ、自分の都合の良し悪しで、適当な小さな嘘を言う人は、周囲にもいるだろうし、自分自身も同じようなことをしていることはあるはずだ。
問題は、その「嘘」が多くの人を傷つけ、不信を呼び、社会に断絶を起こすまでになっている、という点だろう。
そして「その嘘」が、真実として捉えられ、間違った認識が広がることで、社会は大きく変わってしまう。
今回の広告の中でも、朝日新聞に掲載された「原油まみれの水鳥」の写真は、過去にあったタンカーなどの事故により、原油が流出する度に同じような写真を見てきた。
それが、「ある特定の国が故意に行ったこと」として、制裁という名の戦争の切っ掛けだったら。
真実かどうかを確かめることなく、戦争へと導く指導者が今多くなりつつある、という、問いかけをしている。
確かに、上述したようにトランプさんのTwitterは、「自分の都合が良い=真実。都合が悪い=嘘」という内容がほとんどだ。
トランプさんのように分かりやすい指導者であれば、まだしも世界中の指導者がトランプさんのように分かりやすい人物ではない。
むしろ、トランプさんのような指導者は少ないだろう。

彼らの多くは、市民が分からないように真実と嘘を上手に混ぜ合わせることで、「嘘を真実」のように見せかける。
それが、時には戦争を引き起こすことになり、「嘘」を信じた市民の多くはヒットラーの「全体主義」のような体制に飲み込まれ、場合によっては自ら「(結果として)嘘をつく」ことになる。
そのような危険性を、今回の「宝島社」の広告は訴えているのでは?という、気がするのだ。

記事にあるように、「宝島社」の広告は社会に問いかける広告が多い。
1980年代~2000年代のベネトンの広告を手掛けた写真家・オリビエーロ・トスカーニほどのセンセーショナルさはないが、広告としての役割である「社会に問いかける」という点では、「広告の力」をまざまざと見せつけていると思う。
そしてそのような広告を出す企業が、今ではほとんどなくなっている、というのも今という社会の姿なのかもしれない。