日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

データは、その数字の背景を知ることから始まる

2019-09-09 12:42:31 | マーケティング

台風15号の上陸で、関東は大変な状況のようだ。
JRをはじめ、私鉄各社も昨日中に「運休」などの発表をしたため、早めの対策をされた方もいらっしゃるのでは?
とはいうものの、「平日だから出社して当然」という意識は企業側にも働く側にも強くあり、何とか出社された方もいらっしゃるだろう。
このような状況になるたびに、「出社に及ばず」という就業規則があっても良いのでは?という、気がしてくるのは私だけだろうか?

先日「老後資金には最低2千万円必要」という記事があり、世間を騒がせた。
というのも現在年金を受け取っている人も、現在年金を支払っている人も「老後資金・2千万円」という数字は、「そんなに必要なのか?!」と、驚く数字だったからだ。
10月から消費税が8%から10%に引き上げられることもあり、収入が増えないのに物価や税金が上がり、生活がますます苦しくなる、と実感していることも、より不安を煽ることになったのだと思う。
というのも、6割の世帯が「平均値」を下回る貯蓄高しかないからだ。

「平均値」という言葉のマジックに注意すべき、という記事が、朝日新聞にあった。
朝日新聞:「平均値」はもう限界 格差広がる日本に新指標のススメ

学生の頃から「平均値=データのボリュームゾーン」というようなイメージで、とらえてきた方は多いと思う。
売上データや購入客層を分析するときなどは、目安になることは事実だ。
特に購入客層のデータの「平均値」からえられる情報で、おおよその生活者像がつく。
マーケティングで使われる「F1層(20~34歳の女性)」などは、分かりやすい例かもしれない。
F1層のイメージとなっているのは、数多くのデータから出てきた「平均的な20~34歳の女性像」と捉えられるからだ。

今回の「老後資金2千万円」という数字には、富裕層の高齢者と富裕層以外の高齢者の間にある「格差の広がり」がある、という指摘だ。
同じようなデータとして、「世界中の富の分配」というものがある。
世界の人口の1%の富裕層に、世界の富みが半分以上集中している、という指摘だ。

資産(貯蓄や有価証券などの保有額)を単純に足し算をして、人数で割るという「平均値」の出し方では、富裕層に集中している富の実態というものが、見えなくなってしまうのだ。
分析として必要なのは、「富裕層から、富の再分配をどの世代でも行っていく為にはどうしたらよいのか?」ということであり、単純な「老後資金2千万円」という数字の独り歩きによる、不安や不満を抱かせることではない。

マーケティングにおいては、このような「データの背景」というものを知ることが重要であり、背景に潜んでいる「(多くの場合)社会的問題」をあぶりだし、解決を考えるということが必要になる。
もちろん「ビジネスの基本」とも言われる、マーケティングなので「企業利益と社会利益のバランス」を取りながら、社会に対して提案をしていく必要がある。

昨今のように「AIによるデータ分析万能」のような風潮があるが、一番重要なのは「データ分析結果」ではなく、そのデータの背後にある潜在的問題点だと思う。