Yahoo!のトピックスに取り上げられていた「JASRAC」の2019年度の徴収・分配の記事。
Yahoo!弁護士ドットコム:JASRAC、徴収・分配ともに過去最高の見込み・・・動画サイト・音楽サブツク好調
「徴収額と分配額が一致していない」という、ツッコミがあるとは思うが(徴収額が1,157億円に対して、分配額が1,173億円と、分配額が16億円ほど多い)問題なのは、「何にどれだけ使われたのか?」という明細が情報として公開されていない為、様々な憶測を呼ぶ結果になっている。
そこで、ネットで公開されているJASRACの2018年度の事業報告書を探してみた。
JASRAC:2018年度事業報告書 (注意:PDFファイル)
事業報告書からわかることの一つは、役員が多いのでは?という印象があること。
職員数も500名弱というのは、この業務に対して適正な人数なのか?という、疑問を持たれる方も多いかもしれない。
というのも、記事にあるように、動画サイトや音楽サブツク(正しくは、ストリーミング再生回数だと思われる)による、徴収額が増えている、という点を考えるとJASRACができた時代のような徴収システムではなくなってきている、と考えられるからだ。
例えば音楽チャートデータを毎週発表しているbillboard誌などには、動画やストリーミング、カラオケなどの再生回数が一桁まで発表されている。
billboardJapan:Charts (2020年2月3日付 最新データに代わることがあります)
これらのデータが明快に発表できるのは、インターネットなどの通信システムを利用している為で、特にサブスプリクションを利用したストリーミングデータ=売上と見ることができる。
これらのデータを利用するのに、多くの人達はCDショップに行き購入しているわけではない、ということはご存じの通りだ。
スマホにアクセスするだけで、自動的に課金(ただし利用者の多くは「サブスプリクション」という月額定額を利用している為、課金されているという認識はないだろう)されるからだ。
言い換えれば、人の労力によって徴収しているわけではない、という点を考えれば、本当にこれだけの職員数が必要なのか?という、疑問が出てくる。
まして役員数と職員数の比率を考えてみると、役員数が多いのでは?という、印象を持たれても仕方ないのでは?という感じがする。
更に、事業報告書をみて驚くことがあった。
それは「音楽文化の振興に資す取り組み」という項目だ。
JASRACが音楽教室もどきの「音楽講座」を開設しているのだ。
ヤマハなどの「音楽教室」から徴収をし、自前の「音楽講座」を開設し、音楽文化の振興をしている、というのはいかがなものだろう?
今回の徴収額を伸ばしたストリーミングで聞かれた楽曲は、official髭男dismやKing-Gnu、米津玄師、あいみょんなどだった。
その中でもofficial髭男dismの主に作詞作曲ヴォーカルを担当している藤原さんは、子どもの頃からクラシックピアノを習い、Baseとsaxを担当している楢﨑さんは、音楽教師の免許を持っている。同様にKing‐Gnuの作詞作曲を担当している常田さんは東京藝大音楽学部中退、ヴォーカルの井口さんも東京藝大音楽学部の出身だ。昨年ヒット曲を出した代表的バンドは、音楽の基礎教育をシッカリ受けてきた人たちでもあるのだ。
彼らの活躍を考えると、ヤマハの「音楽教室」をはじめとする市井の「音楽教室」が音楽振興を支えてきていた、というのは間違いないだろう。
そのような役割を果たしてきた市井の「音楽教室」を蔑ろにし、自前の「音楽講座」を「音楽振興の資」と謳うことに、大きな違和感を感じるのだ。
むしろ自前の「音楽講座」よりも市井の「音楽教室」をサポートすることで、より多くの人たちが音楽に触れ、将来の音楽クリエーターとなるのではないだろうか?
このような音楽を楽しみクリエイトする市井の人達への「利益再配分」こそが、JASRACの事業の目的のような気がするのだ。
JASRACが社会からなかなか理解が得られないのは、このような「自前でやっていることは凄い」が、市井の音楽振興へのサポート意識が無い、ということなのではないだろうか?