日々是マーケティング

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「東急ハンズ」というブランド力

2021-12-23 20:30:54 | マーケティング

昨夜、「東急ハンズ」が、ホームセンターのカインズに買収される、というニュースが飛び込んできた。
讀賣新聞:東急ハンズ、カインズ傘下に…将来は名称も変更へ

このニュースを聞いた時、それほどまでに東急ハンズは経営的に厳しかったのか?と、意外な気がしたのだ。
記事にあるように、インターネット通販などで商品を購入する人達が増え、「コロナ禍」が追い打ちをかけた、という説明には納得できる部分はあるのだが、それは「東急ハンズ」に限った事ではないのでは?

その一方で「コロナ禍」によって業績が伸びた業種の一つが、ホームセンターだと言われている。
外出できない事で、DIYなどへの関心が高まり、様々な工具や材料を扱っているて、比較的安価なホームセンターで、買い物をする人が増えた、ということのようだ。
しかも今のホームセンターで扱っている商品は、プロ仕様のものもあるというのが、魅力ということなのだろう。
その視点で考えれば、「東急ハンズ」で扱っている商品とホームセンターで扱っている商品の一部は、重なるということになる。

ただ気になっているのは「東急ハンズ」という、ブランド力だ。
記事によると、将来的には名称変更も検討している、ということのようだが、それはこれまで「東急ハンズ」が創り上げてきたブランド力を捨ててしまう、ということにもなる。
新しい名前で事業を始めたとしても、多くのユーザーは「元東急ハンズ」ということを忘れてはいないだろうし、むしろ「東急ハンズ」という名前が持っていたブランド力が失われる事を、残念に思う人の方が多いのではないだろうか?

ホームセンターと「東急ハンズ」で扱う商品の一部が重複する、という点では、ホームセンターとしての「元東急ハンズ」は、アリだと思う。
しかし「東急ハンズ」は、商品を売っていたというよりも「売り場の空気感」や「東急ハンズに行くワクワク感」のようなモノを売っていたのではないだろうか?
それは文房具でいえば、ボールペンだけでも相当数の品ぞろえをし、その中から自分が書きやすい1本を見つける、というような「冒険」のような感覚があった。
しかも、新商品が数多く並べられるだけではなく、スタッフさん自身が「クラフト心」を持っている人たちが多かったので、「つくりたい気持ち」を後押ししてくれるアドバイスがあった、ということも「東急ハンズ」の魅力でもあったのではないだろうか?
「東急ハンズ」のブランド力を高めていたのは、そのようなモノ・コトだったような気がしている。

カインズ側が、「都市型のホームセンター」という考えを持っているとすれば、それは単なる買収劇で終わってしまうのではないだろうか?
生活者の多くが「東急ハンズ」に感じていた、ブランド力を十分理解し名称変更を検討しなくては、残念な結果を招くような気がするのだ。