「野神」さんは五穀豊穣の神として何百年もの間、各集落で祀られてきたといい、毎年夏頃になると各集落で野神祭の祭事が行われるといいます。
一般的に野神さんは集落の端に巨樹や石を祀ることが多く、悪いものが入らないようにしたり、悪いものを集落から追い払う集落の結界としての役割も果たしてきたともいわれます。
伊香高校のケヤキ(野大神)
滋賀県の湖北地方では野神信仰は特に旧高月町の野神さんが紹介されることが多く、集落ごとに観音さまを祀る観音信仰と相まって、湖北地方の自然や仏に対する信仰の深さを感じます。
高月の隣町の木之本町にも野神信仰はあり、その一つの「伊香高校のケヤキ(野大神)は、高校の校門の中の前庭に野神さんが祀られています。
しかし困ったことが一つ。野神さんは学校の門の中にあるため許可がないと入れません。
行くだけいって学校に電話して聞いてみようと思いながら現地に着くと、地元の方が数名で掃除中でしたので、これ幸いと声をかけてみる。
“そうぞ入って。”とのことでしたので、これで不審者扱いされることはないだろうと一安心して野神さんへ向かいます。
樹の幹はほぼ空洞となっていて、途中で折れている枝の内部にもポッカリと穴が開いているのが痛々しい。
とはいえ、脇から生えた枝がよく伸びていますので、生命力の強さに感心する反面、幹の部分の異形の姿には言い知れない妖しさを感じてしまいます。
幹には注連縄が巻かれ、御幣が供えられており、野神さんとして祀られているのだが、疑問が一つ湧いてきます。
「野大神」と彫られた石碑は、本来ならば樹の前にあるはずなのだが、石碑の正面は斜め対面にある。
石碑の後方の樹は、野神さんとは思えないサイズであり、注連縄なども見受けられないので野神さんではないようです。
そこにかつて野神さんがあったのか?と調べてみると、石碑の両サイドに2本のケヤキがある写真があり、以前は石碑の横後方にも野神さんがあったようです。
野神さん野間手に立てられた長浜市の「保存樹指定樹木標識」の案内板によると、樹種はケヤキで樹高は約18m。
幹周は約8~9mとされており、樹齢は“約1000年~1300年といわれている”とあった。
このケヤキは正面から見ると大きな空洞があるが、後方から見ると朽ち果てそうな感じはない。
“命あるものはいつか朽ちるから美しい”と言われる方がありますが、痛みながらもなお枝を伸ばしているその姿からは生命感の強さや生きる意志のようなものを感じます。
黒田のアカガシ(野神)
伊香高校のケヤキのある「木之本町木之本」の隣村の「黒田」地区には「黒田のアカガシ(野神)」というまだ見ぬ巨樹があります。
夏前に一度訪れようとしたのですが、アカガシがある場所までの道が竹藪の横の細い登り道で、草がぼうぼうに生えたジクジクと湿気の多い道で蛇でも出そうで気持ち悪くて断念しています。
しかし今回は草がほぼなく、ぬかるみもなかったため安心して登ることが出来ました。
山へ向かって細い道を進むと、すぐに獣除けの鉄柵があり、鉄柵を開けて少し登ったところに黒田のアカガシはある。
周辺は整備されてちょっとした広場のようになっており、周囲に背の高い樹がないおかげでアカガシは陽の光を浴びて生き生きとした姿に見えます。
「黒田のアカガシ」は滋賀県の天然記念物に指定され、大阪市と新聞社が企画した「新日本名木百選」にも選ばれている名木で、幹周は6.9mもあり、間近で見るとその太さに感動する。
樹高は15mとされ、樹齢は300~400年。集落では御神木として毎年「野神祭」が行われていいるといいます。
アカガシは本州(宮城県・新潟県以南)・四国・九州など比較的暖かい地方に広くみられ、旧伊香郡のような寒冷地にはほとんどみられず、わずかにびわ湖周辺及び菅山寺周辺に自生しているだけだといいます。
黒田のアカガシのように巨木で村里近くに自生しているのは稀少な樹木として学術的に高い価値があるといい、アカガシとしては県内最大級の巨樹だとされます。
太い幹はすぐに数本の枝に分かれ、上部に伸びる枝葉さらに枝分かれして、葉がこんもりと茂って樹勢も良さそうです。
山の斜面にあるためやや集落側に傾いていて、巨樹を支えるように根はしっかりと張っている。
下から見上げてみてもゴツゴツとした複数の枝が空に向かって伸びており、まさに神の依り代の樹といえます。
地域の方々が数百年、何世代にも亘って守り続けてきた信仰と環境保全の証の樹の出会えるのは幸せなことだと思います。
斜面の山側には根が盛り上がるように這い、アカガシを支えています。
この根の部分も間近に見ると異様なまでの迫力があります。
黒田のアカガシのある山は天正寺という曹洞宗寺院の裏山にありますが、すぐ近くには「観音の里 たかつきふるさとまつり」の御開帳寺院「大澤寺」があります。
同じ黒田地区には伝千手観音立を祀る「黒田観音寺」、いも観音の「安念寺」があり、観音の宝庫の村ともいえます。
2020年の「観音の里 たかつきふるさとまつり」は新型コロナのため中止になってしまいましたが、次回開催された時には再訪したい場所です。
追記
本屋さんの立ち寄った時、「長浜み~な」という雑誌に『「野神信仰」って何ですか?』長浜市と米原市の野神さんが特集されているのを偶然発見。
野神さんの分布や詳細が細かく書かれていて、湖北の野神さんを網羅しています。
併せて閉館中の琵琶湖文化館の至宝を特集している「湖国と文化」誌も購入。2冊とも実に興味深い。
一般的に野神さんは集落の端に巨樹や石を祀ることが多く、悪いものが入らないようにしたり、悪いものを集落から追い払う集落の結界としての役割も果たしてきたともいわれます。
伊香高校のケヤキ(野大神)
滋賀県の湖北地方では野神信仰は特に旧高月町の野神さんが紹介されることが多く、集落ごとに観音さまを祀る観音信仰と相まって、湖北地方の自然や仏に対する信仰の深さを感じます。
高月の隣町の木之本町にも野神信仰はあり、その一つの「伊香高校のケヤキ(野大神)は、高校の校門の中の前庭に野神さんが祀られています。
しかし困ったことが一つ。野神さんは学校の門の中にあるため許可がないと入れません。
行くだけいって学校に電話して聞いてみようと思いながら現地に着くと、地元の方が数名で掃除中でしたので、これ幸いと声をかけてみる。
“そうぞ入って。”とのことでしたので、これで不審者扱いされることはないだろうと一安心して野神さんへ向かいます。
樹の幹はほぼ空洞となっていて、途中で折れている枝の内部にもポッカリと穴が開いているのが痛々しい。
とはいえ、脇から生えた枝がよく伸びていますので、生命力の強さに感心する反面、幹の部分の異形の姿には言い知れない妖しさを感じてしまいます。
幹には注連縄が巻かれ、御幣が供えられており、野神さんとして祀られているのだが、疑問が一つ湧いてきます。
「野大神」と彫られた石碑は、本来ならば樹の前にあるはずなのだが、石碑の正面は斜め対面にある。
石碑の後方の樹は、野神さんとは思えないサイズであり、注連縄なども見受けられないので野神さんではないようです。
そこにかつて野神さんがあったのか?と調べてみると、石碑の両サイドに2本のケヤキがある写真があり、以前は石碑の横後方にも野神さんがあったようです。
野神さん野間手に立てられた長浜市の「保存樹指定樹木標識」の案内板によると、樹種はケヤキで樹高は約18m。
幹周は約8~9mとされており、樹齢は“約1000年~1300年といわれている”とあった。
このケヤキは正面から見ると大きな空洞があるが、後方から見ると朽ち果てそうな感じはない。
“命あるものはいつか朽ちるから美しい”と言われる方がありますが、痛みながらもなお枝を伸ばしているその姿からは生命感の強さや生きる意志のようなものを感じます。
黒田のアカガシ(野神)
伊香高校のケヤキのある「木之本町木之本」の隣村の「黒田」地区には「黒田のアカガシ(野神)」というまだ見ぬ巨樹があります。
夏前に一度訪れようとしたのですが、アカガシがある場所までの道が竹藪の横の細い登り道で、草がぼうぼうに生えたジクジクと湿気の多い道で蛇でも出そうで気持ち悪くて断念しています。
しかし今回は草がほぼなく、ぬかるみもなかったため安心して登ることが出来ました。
山へ向かって細い道を進むと、すぐに獣除けの鉄柵があり、鉄柵を開けて少し登ったところに黒田のアカガシはある。
周辺は整備されてちょっとした広場のようになっており、周囲に背の高い樹がないおかげでアカガシは陽の光を浴びて生き生きとした姿に見えます。
「黒田のアカガシ」は滋賀県の天然記念物に指定され、大阪市と新聞社が企画した「新日本名木百選」にも選ばれている名木で、幹周は6.9mもあり、間近で見るとその太さに感動する。
樹高は15mとされ、樹齢は300~400年。集落では御神木として毎年「野神祭」が行われていいるといいます。
アカガシは本州(宮城県・新潟県以南)・四国・九州など比較的暖かい地方に広くみられ、旧伊香郡のような寒冷地にはほとんどみられず、わずかにびわ湖周辺及び菅山寺周辺に自生しているだけだといいます。
黒田のアカガシのように巨木で村里近くに自生しているのは稀少な樹木として学術的に高い価値があるといい、アカガシとしては県内最大級の巨樹だとされます。
太い幹はすぐに数本の枝に分かれ、上部に伸びる枝葉さらに枝分かれして、葉がこんもりと茂って樹勢も良さそうです。
山の斜面にあるためやや集落側に傾いていて、巨樹を支えるように根はしっかりと張っている。
下から見上げてみてもゴツゴツとした複数の枝が空に向かって伸びており、まさに神の依り代の樹といえます。
地域の方々が数百年、何世代にも亘って守り続けてきた信仰と環境保全の証の樹の出会えるのは幸せなことだと思います。
斜面の山側には根が盛り上がるように這い、アカガシを支えています。
この根の部分も間近に見ると異様なまでの迫力があります。
黒田のアカガシのある山は天正寺という曹洞宗寺院の裏山にありますが、すぐ近くには「観音の里 たかつきふるさとまつり」の御開帳寺院「大澤寺」があります。
同じ黒田地区には伝千手観音立を祀る「黒田観音寺」、いも観音の「安念寺」があり、観音の宝庫の村ともいえます。
2020年の「観音の里 たかつきふるさとまつり」は新型コロナのため中止になってしまいましたが、次回開催された時には再訪したい場所です。
追記
本屋さんの立ち寄った時、「長浜み~な」という雑誌に『「野神信仰」って何ですか?』長浜市と米原市の野神さんが特集されているのを偶然発見。
野神さんの分布や詳細が細かく書かれていて、湖北の野神さんを網羅しています。
併せて閉館中の琵琶湖文化館の至宝を特集している「湖国と文化」誌も購入。2冊とも実に興味深い。
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