hiyamizu's blog

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小川洋子「ミーナの行進」を読む

2007年03月23日 | 読書
2006年谷崎潤一郎賞受賞した小川洋子の「ミーナの行進」を読んだ。

小川洋子の小説は、数、素数の面白さを随所に披露していた「博士の愛した数式」(本屋大賞受賞)が気に入って、その後、「妊娠カレンダー」(芥川賞受賞)、「沈黙博物館」、「凍りついた香り」、「やさしい訴え」、「ホテル・アイリス」、「貴婦人Aの蘇生」、「寡黙な死骸 まだらな弔い」と読んできた。いずれもちょっと不思議で跳んだ話で、変わり者だが魅力的ある人物を描いている。

「ミーナの行進」は、美しく、か弱く、本を愛したミーナと過ごした山の上の洋館での懐かしの日々を語る少女の物語である。優雅な生活の中でも問題を抱えた家族が互いにいたわりあう様子を、穏やかに愛情をもって描いている美しい小説である。

1972年のミュンヘンオリンピックでの日本男子バレーボールチーム、川端康成の自殺、ジャコビニ流星雨など実際に起こった事柄を元に物語が進む。一方、夢のような話も織り込まれている。ミーナはコビトカバのポチ子に乗って小学校へ通っている。美しい絵が描かれたマッチ箱を集めているミーナは、絵柄一つ一つに少女らしい物語を作る。二人の淡い初恋も描かれ、夢と現実と懐かしさが美しく混じりあう小説になっている。

是非触れたいのは、人気のイラストレーター寺田順三の装丁、挿絵が物語をいっそう味わいのあるものにしていることである。彼の描く絵は、ノスタルジックな色で、優しくほんわかしている。私は、とくにマッチの絵にはつくづく見入ってしまった。

主な登場人物は以下の通りである。
1972年、小学校を卒業したばかりの主人公、朋子は家庭の事情で神戸にある伯母の家に預けられる。そこは広くて立派な、山の上の洋館だった。
洋館の心優しい家族達はみな朋子を歓迎する。ドイツ人のローザおばあさん、その息子で、ほとんど家にはいないハンサムで会社社長の伯父さん、妻のおとなしい伯母さん、お手伝いのすべてを仕切る米田さん、忠実な庭師の小林さん。そして、朋子より一歳下の喘息持ちの美少女ミーナ。広い庭にはコビトカバのポチ子が飼われている。



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