一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

米長邦雄・日本将棋連盟会長を目にした日

2009-07-06 23:05:49 | 将棋雑記
永世棋聖の称号をお持ちである米長邦雄・日本将棋連盟会長に、一度お目にかかりたい、お話をしたい、というファンは多いと思う。もちろん私もそのひとりだが、米長会長は毎日が超多忙だし、お目にかかれる場所も限られている。だから私のそんな願望はいつしか雲散霧消していたが、今年に入ってから立て続けに、米長会長を間近で拝見する機会に恵まれた。
最初は2月4日(だったと思う)に日比谷で開かれた、石橋幸緒女流王位の就位式だった。
主催者代表として列席された米長会長は、いわく言い難いオーラを発し、「私はLPSAが大好きです」とコメントを述べられた。ということは、私も「日本将棋連盟が大好き」ということになるのだろうか。
この日は一将棋ファンである私がお邪魔したくらいだから来場者も多く、米長会長に挨拶するなど夢のまた夢、日本将棋連盟会長を初めて肉眼で拝見できたことだけで満足し、石橋女流王位に祝福の言葉を述べ、日比谷をあとにした。
ところが「2回目」は意外とすぐにやってきた。
3月9日(月)、マイナビ女子オープン挑戦者決定戦が将棋会館で行われ、私がそのスポンサーとなったため、対局開始の席に立ち会うことができた。挑決戦だから当然米長会長も立ち会う。田中寅彦常務(当時)とともに入室されたときは、ただただ緊張するだけだった。ただ、米長会長が私の名札(「スポンサー」と記してあった)を見て、何か言いたげだったことを覚えている。聡明な米長会長のこと、ひょっとしたら私の名前を事前に把握していたのかもしれない。
というのも、私は以前、米長会長が開いている「対局型掲示板」に、実名で書き込みをしていたことがある。サイトの主人が実名で書き込みをしている場合、「対等」を主張するべく、私も実名で書き込みをするのだ。
むろん著名人の場合は、売名行為のために実名でサイトを開設しているケースが多いから、真っ正直に張り合うのもバカバカしいが、とにかく私の方針はそうなのである。また会長のサイトで実名で書きこみをしたのはもうひとつ理由があり、もし何かのパーティーで、万が一私がネームプレートを付けた状態で米長会長にお会いしたことがあったら、「おおー、キミが一公君か!」と、他者より厚遇してくれるのではないかと、甘い読みをしていたからである。
この日は対局が終了後も、米長会長が控室に顔を出された。私ともうひとりのスポンサー氏は、「週刊将棋」のA記者と最後の打ち合わせをして帰るのみだった。と、米長会長が
「お、お、お、これはスポンサー様! スポンサー様がこんなところに居てはいけません。ささ、こちらへ」
と、私たちを継ぎ番の前に促したのだ。
実はこのときが、米長会長と話をする最大のチャンスだったと思う。しかし私にそんな度胸はまったくなかった。なにしろ天下の日本将棋連盟会長と下町の職工である。住んでる世界がまったく違う。私のような地位も肩書きもない雑魚ファンが、会長と話を交わそうなどと、とんでもない話で、僅かでも不遜な考えを持った自分が恥ずかしかった。
斎田晴子女流四段が場所を空けてくれ、そこにもうひとりのスポンサー氏が座り、その向かい側が空席だったので、そこに私が座った。
左を見ると、前年に女流棋士となった山口恵梨子という名の新人が、K六段にレクチャーを受けていた。見ると、その局面は相振り飛車だった。
山口女流2級は、数日後に女流名人位戦でB級リーグ入りを懸けて蛸島彰子女流五段との対戦が決まっていた。蛸島女流五段も研究熱心で有名だが、私はこの勝負、山口女流2級が勝つと思った。
米長会長を目にした最後のひとつは、それから2ヶ月半後の5月23日(土)、「将棋ペンクラブ」の関東交流会の席だった。
私が石橋幸緒女流王位に指導対局を受けていたとき、背後で米長会長の声がしたのでびっくりした。米長会長は、自著を20冊も寄贈してくださったうえ、
「実は私も将棋ペンクラブの会員でして、いままで会員だっただけなんですが、これからはできる限りの協力をしていきたいです」
ということを言われたと思う。
会員の皆さんは対局を中断し会長の話に聴きいり、盛大な拍手を送っていた。しかし私はといえば、石橋女流王位との対局が中盤の難所を迎えており、話を聞く余裕も拍手をする余裕もなかった。
しかしそこまでして頑張った将棋は私の惜敗で終わった。
「ウギギギギ…」と歯ぎしりしながら、私は手合係氏のもとへ向う。と、その途中で背の高い紳士にぶつかりそうになり、誰だか確認すると、それが米長会長だったので飛び上がった。まだ大広間にいらしたのだ。
慌てた私は自分の名字を小声で告げると、コソコソとその場を離れ、アマ強豪の手合係氏に、「あの将棋を負けましたよー」と、対石橋戦での愚痴をぶちまけた。このとき米長会長はほかの会員とお話中だったし、3月に抱いた「とても連盟会長とお話をできる身分ではない」という気持ちが持続していたので、今回もお声をかける気は起きなかった。
まあその話はともかく、米長会長の先ほどの申し出は、慢性的な資金不足に悩む将棋ペンクラブにはありがたいことだった。しかし、何もしないのが最大の協力、という場合もある。
いずれにしても米長会長には、日本将棋連盟、女流棋士会の隆盛のために、これからも全力を尽くしてほしいと思う。
コメント (5)
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