一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第3期マイナビ女子オープン・一斉予選対局を見に行く(中編)

2009-07-28 00:10:49 | 観戦記
豪華な昼食を摂って、午後1時すぎにパレスサイドビルへ戻る。
マイナビルームへ入る前に、本日3本目のスポンサーの手続きをする。担当の方は、「毎度ありがとうございます」という顔でニコニコしている。
私は少し震える手で、新品の壱万円札を三たびピッ、と出す。
「明日から断食します」。
入口右手前の野田澤彩乃女流1級-成田弥穂アマ戦を見る。野田澤女流1級の気合は十分と見た。成田アマは端然と座り、プロと対峙するプレッシャーは微塵も感じない。
そのまま奥に進んで、中倉宏美女流二段-上田初美女流二段戦を見る。中倉女流二段の表情は、指導対局と比べて、あまり変化がない。上田女流二段は、額に手をやり、うつむいている。早くも自分のスタイルで読みに没頭しているようだ。
そのまま進んで左折、室内左奥の対局は船戸陽子女流二段-古河彩子女流二段。船戸女流二段のファッションはいつも楽しみだ。マイナビ予選では、LPSAはいつも専用のブレザーを着用しているが、その下に着ているワンピースなど、ブレザー以外の部分をどう表現するかが見どころである。
昨年の同棋戦では「女子高生?」がテーマだった船戸女流二段は、今年は下のワンピース?とスカーフを流水のデザインで統一させた斬新なファッション。キャビンアテンダント風、とでもいおうか。
ただ残念だったのは、この位置からでは船戸女流二段のお顔が拝めないこと。6月の「とちのきカップ」決勝戦に続いて、またも斜めうしろからの観賞となった。いや、これでは観賞とはいえない。
まあそれはともかく、船戸女流二段のこのいでたちを拝見できただけで、今日はここに来ただけの価値はあったと、私は大いに満足した。戦型も夏らしく、相居飛車の急戦となっていた。
そのまま左折して、入口左側手前まで戻ってくる。千葉涼子女流三段-島井咲緒里女流初段戦をやっている。
15日に東京・将棋会館で行われた予選抽選会のとき、帰り際に、千葉幸生五段・涼子女流三段ご夫妻にお会いした。そのとき、LPSA金曜サロンの棋友が、「千葉先生、山下先生に当たりましたよ!」と、うっかり誤った情報を教えてしまったのだ。
もちろん千葉夫妻はそのまま会館に行き、正しい組み合わせを聞いたに違いないが、対戦相手が島井女流初段と知ったときの困惑は、どの程度だったのだろう。これが勝敗のカギになるような気がした。
島井女流初段は予選抽選会のときに、長い髪をバッサリと切って、サッパリした髪型になっていた。美人はどんな髪型でも良く似合う。まだ体調は万全でないはずだが、この日の表情には凄味があった。笑顔の島井女流初段も魅力的だが、対局時の表情は、その数倍素晴らしい。
ひととおりの女流棋士チェックが終わって、興味をそそられる対局を巡回する。
本田小百合女流二段-早水千紗女流二段戦も相居飛車系の将棋。本田女流二段はかわいらしい。対して早水二段は、足を組み、口元に手をやって熟考している。綺麗に引かれたマユがキリッとしていて、絵になる。いやまさに、油絵のモデルのようだ。素晴らしい。早水女流二段には甚だ失礼ながら、彼女がこんなに魅力的だとは思わなかった。
気合十分だった藤田麻衣子女流1級は、室田伊緒女流初段との一戦。室田女流初段の振り飛車に、居飛車穴熊で対抗している。私見だが、藤田女流1級は、玉を固める将棋より、急戦の将棋が合っていると思う。
もう一度島井女流初段の対局に戻り、観賞する。と、午後1時37分45秒、島井女流初段がブレザーのボタンをゆっくり外し始めた。なんだかドキドキする。腰の名札を下の服に付け替えブレザーを脱ぐと、38分06秒、隣りの椅子の背もたれに、パサッ、と置いた。
ブレザーの下から、涼しげな白のワンピースが現れた。なんて艶やかなんだろう! マイナビルームに、一気に夏が訪れた気がした。
私は以前中井広恵LPSA代表理事に、マイナビ一斉対局でのブレザー着用はやめたほうがいいのではないか、と提言したことがある。
対局で着用する服は戦闘服である。たとえば島井女流初段にはブルー系の服を愛用している。それを紺色のブレザーで隠してしまうことで、出せる力が減殺するように思えたからだ。
いま、室内は快適な温度だ。しかし島井女流初段は「暑い」と感じ、ブレザーを脱いだ。島井女流初段の白い肌が、ピンク色に染まっている。からだが火照っているのは、気合が入っている証拠だ。この将棋は期待できると思った。
今回島井女流初段は白のワンピースだったが、アイシャドーとヒールは、しっかり「ブルー」だった。
ちなみに千葉女流三段は紺色のブレザー。傍目には、どちらがLPSA所属か分からなくなった。そういえば昨年も、岩根忍現女流二段が、ピンクのワンピースの上に紺色のブレザーを羽織っていて、彼女がLPSA所属の棋士だったらなあ、と嘆息したことを思い出す。
船戸-古河のFF対決を見に行く。2時03分05秒、船戸女流二段が「ウーン」と発する。駒得ではあるが、少し攻めあぐねているようだ。
中倉-上田戦は、上田女流二段の振り飛車で、予想どおり相穴熊となっていた。中倉女流二段は居飛車対振り飛車の対抗形の場合、たいてい穴熊に潜る。中倉女流二段も藤田女流1級同様、穴熊は棋風に合わない気がするが、どうだろうか。
だめだ、どうしても島井女流初段の容姿が頭から離れない。またまた観賞に戻る。
2時27分28秒、島井女流二段が、両手で髪の毛をクシャクシャッ、とする。ワイルドだ。
島井女流初段は女優の米倉涼子に似ていると思う。いまのクシャクシャッ、も米倉涼子がやりそうな仕種だ。私の島井女流初段に対する評価が、グングン上がっていく。
船戸女流二段を観賞に行く。2時35分28秒、「ううーん…」とうめく。今度の声はちょっとマズい。古河女流二段の辛抱が実り、形勢は逆転模様だ。古河女流二段はタレントの小野真弓に似ている、と思った。
中倉-上田戦に行く。局面は中倉女流二段が6六の馬を抜いて依然有利。しかし相手はガチガチの穴熊なので、決めるのは難しい。中倉女流二段が右の頬をグニュッと抑えているので、唇がとんがっている。そんな表情もかわいらしい。
上田女流二段は7一に駒を打ちつけ、長期戦の構え。これは私の観戦中に終わらないな、と確信した。
船戸-古河戦を見に戻る。どうも対局が終了したようだ。古河女流二段がにこやかな笑顔をしているので、たぶん彼女が勝ったのだろう。
船戸女流二段はLPSAファンの期待を一身に背負ったが、力が空回りしたか。しかしこれからも対局は続く。とことんまで落ち込んだら、また這い上がって、力強い将棋を見せてほしい。
解説場では、千葉-島井戦が取り上げられていた。聞くと、島井女流初段の攻めが切れ模様、とのことだった。
再びマイナビルームに戻る。野田澤-成田戦は、成田アマ勝勢。野田澤女流1級は、投了の時期を逸したか。
千葉-島井戦を見に行くと、なんと島井女流初段が勝っていた。解説場の検討の局面から、どうやって勝ちにもっていったのだろう。これは久々の「シマイ攻め」が出たか。
告白すれば、今回のLPSA出場棋士12名の中で、島井女流初段は、勝利が期待できない棋士の筆頭に挙げていた。まったく、とんだ見当違いをしたものである。私は心の中で島井女流初段に、申し訳ありませんでした、と謝るしかなかった。
そろそろ時間である。私は後ろ髪を引かれる思いで、マイナビルームを退室した。
帰り際、例によって懸賞金受付のコーナーへ行く。スタッフも、「お待ちしておりました」という顔で迎えてくれる。
「島井-早水戦を1枚」。
私はブルブルと震える手で、新品の壱万円札を四たび、ピッと出した。
「私は明日からどうやって生きていけばいいんでしょう」。

夜帰宅すると、さっそくパソコンを起動し、マイナビ予選通過者を確認する。
と、予想もしない女流棋士が何人も顔をならべており、私は唖然とした。
[つづく]
コメント (7)
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