一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第3期マイナビ女子オープン・一斉予選対局を見に行く(後編)

2009-07-29 00:59:25 | 将棋イベント
15日の「第3期マイナビ女子オープン予選・組み合わせ抽選会」から旬日を経て、「一斉予選対局」が行われた日の夜、マイナビのホームページにて、本戦進出者の集合写真を見た私は唖然とした。私の予想とは、大きくかけ離れたものだったからだ。
島井咲緒里女流初段が、写真中央でニッコリ笑っている! 関根紀代子女流五段が映っている! 上田初美女流二段も映っている! じゃあ、上田女流二段は、中倉宏美女流二段との一戦に勝ったということか!? とすると、枠抜けの成田弥穂アマにも勝ったことになる。あれっ? そういえばアマの姿がない。では女流棋士会3棋士が、アマ3人を破ったということか!
昨年に続いて長沢千和子女流四段の姿もある。久津知子女流初段の姿もある。
もう、なにがなんだか分からなかった。
試みに、1回戦の勝敗をすべて知ったと仮定して、自分なりの勝敗予想をしてみた。
7勝5敗だった。ちなみに昨年は13局の勝敗予想で、9勝4敗だった。今回、女流棋士の過去の成績や現在の調子などを鑑みて、私の予想は、まあ常識的なものだったろう。それで7勝5敗とは、相当な番狂わせがあったと思われる。
ちなみに今年も、現地での全問正解者はいなかった。それはそうだろう。データがすべてではない。これが一番勝負の恐ろしさといえようか。
それにしても、自分で懸賞金スポンサーになりながら言うのもナンだが、島井女流初段の勝負強さには恐れ入った。まさか島井女流初段が早水女流二段を破るとは思わなかった。将棋を鑑賞してみると、自玉と敵玉との距離感をキッチリ見切った、島井女流初段の持ち味がよく出た、いい将棋だった。
関根女流五段の将棋も素晴らしい。相矢倉の格調高い戦形から、筋よく攻めて快勝。まさに「女流五段」の肩書にふさわしい、堂々とした指し回しだった。
長沢女流四段の2年連続本戦進出も、特筆に値する。久津女流初段も、地方在住のハンデをものともせず、久しぶりに存在感を示した。
石橋幸緒女流王位の本戦入りは、予想どおりとはいえ、さすがである。
笠井友貴アマ、成田アマ、小野ゆかりアマを破った熊倉紫野女流初段、上田女流二段、甲斐智美女流二段は、プロの貫禄を見せた。
このところLPSA棋士が、アマ強豪に軒並み痛い目に遭っている中で、女流棋士会の若手実力者がしっかり結果を出したことは、プロとはいえ、見事である。女流棋士会は若手の層が厚いと、あらためて思う。
さて、本戦進出者の写真をあらためて見ると、やはり島井女流初段がピカピカ光っている。ほかの女流棋士とは輝きが違う。ここ数ヶ月、島井女流初段はLPSA金曜サロンでも休場状態で、私は彼女の存在を忘れたことすらあった。が、
「ヨーコだヒロミだエリコだってうるさいけど、私を忘れてないかしら?」
という声が聞こえた気がした。まったく私としたことが、うっかりしていたと思う。おみそれしました、というところだ。島井女流初段には、本戦でも台風の目になってもらいたい。
また今期は、懸賞金スポンサーが述べ50本以上も集まったようである。この制度が浸透した証でもあるが、いくつか希望もある。
「懸賞対局」の札は今回、記録机の向かって右側に立てられていたが、「応援している棋士のほうへ置く」とか、何か配慮ができなかったものか。むろん中立ならば、立札を机の真ん中に置けばよい。ただこれをやると、懸賞金が一方に偏った場合、気分を害する女流棋士も出るかもしれない。だから賛否両論はあろうが、とにかく「私はあなたを応援しています」という意思を、なんらかの形で伝えたいのだ。代替案として、立札にスポンサーの名前を書けるようにするのもよいと思う。
まあ手っ取り早いのは、今回のように特別観戦席にすわればいいのだろうが、あれもオリの中の動物のようで、ちょっと恥ずかしいものがある。来年はさらにスポンサーが増えるだろうから、改善できるところは実行してほしい。
ついでに苦言をいくつか書いておこう。
今回の一斉予選で、投了の代わりに、いきなり感想戦に入った女流棋士がいた。これはよくない。加藤一二三流に「負けましたですね」と言うなり、升田幸三流に「それまで」と言うなり、駒台に手をかけるなり、なんらかの意思表示をしてから、感想戦に移るべきであろう。
またこれは戦形の問題だから素人が口を出すものではないが、穴熊の将棋が多かった気がする。調べてみたら、千日手を含めた全37局中、相穴熊が3局、それ以外、振り飛車対居飛車の対抗形13局のうち、振り飛車穴熊が1局、居飛車穴熊が8局あった。また相振り飛車は11局あったが、ここでも2局、穴熊が出現した。
これだけの数字を見るとそう多くも感じないが、1回戦の注目局を見た限りでは、私の色メガネもあったのだろうが、どこもかしこも穴熊、という印象があった。
まあ数少ない公式戦、絶対に負けられない一戦、と条件が重なれば、まず玉を安全にしたくなる気持ちはよく分かる。もちろん棋風的に穴熊が合う女流棋士はいるから全員の穴熊を否定はしない。しかし「この人は対振り飛車に急戦でバリバリいくのが棋風に合っている」と考える女流棋士まで、(居飛車)穴熊を採用しているのは、個性を殺してしまい、もったいないと思う。
▲5七銀左から攻め倒すような、爽快な将棋は、確実にファンを魅了する。そんな指し方をする女流棋士が現れないものか。
最後に書かずもがな、を書くと、これは観客のマナーの問題だが、マイナビルーム内はケータイの使用禁止と謳っていたのに、平気でいじっている人がいた。あれはよくない。たとえば将棋会館でプロの対局を拝見するとき、ケータイをいじる人はいない。マイナビルームでも、同じことである。
ああ、なんで私はこんなに怒っているのだろう。やっぱり山口恵梨子ちゃんが負けたからだろうか。
とにかく勝ち残った12選手と、シードの4選手は、引き続き本戦でも、素晴らしい将棋を見せてほしい。
皆さま、今期も熱い戦いを、ありがとうございました。
コメント (5)
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