月見栞(つきみ・しおり)ちゃんが休業宣言して数ヶ月が経った、今年3月下旬。ちょっと空虚な気分が続いていた私は、検索サイトになんとなく「月見栞」と打ち、検索ボタンを押してみた。すると、ブログと思しきタイトル名が掲示された。怪訝に思いクリックしてみると、それは果たして栞ちゃんのブログだった。
栞ちゃんが、ブログを再開したのだ! しかも開設してから1週間ほどしか経っていない。これは神のお導きか、私はドキドキしながらページを見た。すると、衝撃的な事実が公表されていた。
栞ちゃんはAV(アダルトビデオ)女優に転身し、4月1日にMUTEKIから、「誘惑」というタイトルでデビューする、とあったのだ。
まさかの展開だった。もう会えないと観念していた栞ちゃんに、再び会えるという喜びは、何物にも代え難い。しかしAV女優とはどういうことか。
確かにいままで発売されたDVDジャケットを見ると、内容はどんどん過激になっている感じだった。しかし最後の一線だけは守っているところに、彼女の価値があったと思う。栞ちゃんの容姿なら、全部をさらけ出さなくても、十分にタレント活動はできたはずだ。事実、各メディアに露出は増えていたのだ。それなのになぜ、AVなのか。彼女は福祉の仕事を体験したいと言っていた。あの抱負は、どこへ行ったのだ。
むろん私も男だから、栞ちゃんのすべてを見たいと夢想したこともある。しかし本人が日々の生活の中で自暴自棄になり、ヤケ気味で脱ぐのだとしたら、そんな栞ちゃんの裸は見たくない。
だが私が困惑をよそに、新作DVDの発売イベントが、3月29日(日)に行われる、との告知も目に入った。その整理券は、27日(金)に秋葉原のイベント会場でDVDの購入と引き換えに配布される。先着90名となっていたので、これは早めに購入しなければならない。
私は幸か不幸か、金曜日はワークシェアリングで休みであった。午後からはLPSA金曜サロンがあるので、スーツ姿(女流棋士に教えを乞うので、着用している)のまま、午前中に家を出たのだった。イベント会場であるDVD専門店でそれを買うと、整理券をくれた。番号は「27」。先客が、もう26人もいたのだ。
ちなみにこの日の金曜サロンは、昼が藤田麻衣子女流1級、夕方が石橋幸緒女流王位の担当だったが、両局とも惨敗した。会員のY氏にも、私の香落ちで完敗。ちなみに私が上手の駒落ちを持って負けたのは、金曜サロンではこの1局だけである。
当29日は、複雑な気持ちで秋葉原の会場へ入った。DVDの購入者は、定員の90名までは達していなかった。
栞ちゃんは、以前と変わらぬ元気な姿で現れた。いや、ちょっとやつれたかもしれない。しかしAV女優に転身した、という後ろめたさはいささかも感じられなかった。もちろん職業に貴賤はないから、本人が望むならどんな仕事に就いても構わない。
…と、ここで思ったことがある。彼女は大学に迷惑を掛けたくないから、大学の卒業を待って、AV方面での活動を開始したのではないか。彼女には、そういう義理固いところがある。
トークショーで栞ちゃんは、「友だちから、しおりはいつか脱ぐんじゃないかと思ってたー、って言われちゃいました」と、笑顔で話した。そんな話を、ファンは静かに聞いている。
その後は、例によって水着撮影会となった。今回は6人1組で、持ち時間はたったの1分。将棋を指しているときの30秒も短いが、この撮影タイムも短い。カメラの絞りやシャッタースピードを決めるどころではなく、プログラムオートで数枚撮ると、あっという間に1分が過ぎ、撮影タイムは終了した。
最後は恒例のサイン会である。色紙かDVDジャケットにサインをしてもらうのだが、そういうとき、ほかのファンは栞ちゃんとよくしゃべる。しかし私にはそんな度胸がないから、彼女の所作を見るだけだ。ただ今回は、私が最初に栞ちゃんを目にした、あの某イベントで撮った写真を、彼女に渡した。もう渡せる機会はないと諦めていた、自分なりの自慢の写真だ。
栞ちゃんは、「あ、ちょっと太ってたね…」と笑ったあと、ちょっと寂しそうな顔をした。もうあのころの自分には戻れない、という思いが脳裏をよぎったのだろうか。
何故だろう。彼女のすべてが観られることになったのに、私は何か割り切れないまま、秋葉原をあとにしたのだった。
それから約3ヶ月後。私は沖縄県・宮古島にいた。
もう15回は訪れている宮古島は、私の第二の故郷のようなものである。泊まる宿も毎年同じで、泳ぐ海岸、外食する場所もだいたい決まっている。
7月4日(土)夜、いつもの軽食喫茶に行くと、なんと臨時休業だった。この店は夫婦で経営していて、焼肉定食が安価で美味なのだが、休みでは仕方がない。それからぶらぶら歩き、港近くの西里大通りへ向かう。その近くに本屋があったので、反射的に入った。旅に出ると、活字が恋しくなるものだ。
本屋にはひととおりの雑誌や書籍が置いてあったが、エロ系の雑誌が充実していた。
と、出入口近くの棚に、月見栞ちゃん表紙のエロ雑誌が陳列されていたので、ビックリした。
「ビデオメイトDeLUXE」という月刊誌の7月号だった。中を見ると、巻頭グラビアこそなかったが、6月7日に「芸能人×エスワン解禁」というタイトルで新作AVを出す、という告知があった。
6月7日!? とっくに過ぎてるじゃないか!! DVDが発売されるなら、当然秋葉原でイベントがあったはずだ。あ~っ、しまった!!
まったくうっかりしていたと思う。あの日以来、ほとんど彼女のブログはチェックしていなかった。どちらかといえば、自分のブログを更新することに注力していたからだ。何ということだ…。
しかし、過ぎたことは仕方ない。新作DVDと同じデザインであるこの表紙も、栞ちゃんのスタイルと美脚が強調されていて素晴らしく、それだけでこの雑誌を買う価値がある。だから即購入したいが、旅先で荷物が増えるのは、極力避けなければいけない。
この雑誌は東京で買うことにして、私は近くのインターネット喫茶に入った。
1時間ほどして出てくると、宮古島の夜の、最後の晩餐である。先ほどの本屋の隣が食事処だったので、入ってみる。2階の座敷に通されたが、食事をオーダーして障子を閉められると、急に寂しくなってきた。
座敷にひとり。咳をしてもひとり。
こういうところは、ひとりのときはカウンターで食すのがいい、と痛感した。
オーダーした豪華な定食が運ばれてきたので食べていると、あることを軽視していることに気が付いた。先ほどの雑誌は「7月号」だったが、これは6月発売ではあるまいか? 「将棋世界」も、7月売りなら「8月号」である。
とするならば、東京ではもう次号が出ている可能性はないか? いや7月号が発売中でも、売り切れている可能性もある。最悪の場合、大手のエロ本屋をハシゴする必要にも迫られる。いや違う、次号が発売されていたらどうするか。本屋へ注文するしかないが、いい大人がエロ雑誌のバックナンバーを注文するのは、さすがに憚られる。
ということは、いまここで買うしかないのだ! しかしまだお店が開いているかどうか。腕時計は午後8時40分を指している。
私は、目の前に並んでいる鰻や味噌カツ、刺身、小鉢その他をかきこむと、急いで会計を済ませ、隣の本屋を覗いたのだった。幸い、本屋はまだ開いていた。
私は慌て気味に「ビデオメイトDeLUXE」を手に取ると、急いでレジに向かうのだった。
帰京後、久しぶりに栞ちゃんのブログを覗いてみた。栞ちゃんは、相変らずマメにブログを更新していた。彼女が元気で活動していることが分かって、私は嬉しかった。
直近の面白話としては、6日(月)の「笑っていいとも!」のテレホンショッキングで、お笑いのTKOが指名されたのだが、この電話のとき、TKOのいる現場に、栞ちゃんもいたらしい。
栞ちゃんが現在の心境に至るまで、いろいろ葛藤があったに違いない。しかしこれは自分が選んだ道である。これっぽっちの後悔もないであろう。とにかく栞ちゃんには、これからも自分の信じた道を、しっかり歩んでほしいと思う。
さて、私はけっきょく、月見栞ちゃんのDVDを3本有したことになる。しかしその3本とも、中身は一度も観たことはない。けっして演技ではない彼女の素敵な笑顔が、いまも私の脳裏に残っているからだ。
栞ちゃんが、ブログを再開したのだ! しかも開設してから1週間ほどしか経っていない。これは神のお導きか、私はドキドキしながらページを見た。すると、衝撃的な事実が公表されていた。
栞ちゃんはAV(アダルトビデオ)女優に転身し、4月1日にMUTEKIから、「誘惑」というタイトルでデビューする、とあったのだ。
まさかの展開だった。もう会えないと観念していた栞ちゃんに、再び会えるという喜びは、何物にも代え難い。しかしAV女優とはどういうことか。
確かにいままで発売されたDVDジャケットを見ると、内容はどんどん過激になっている感じだった。しかし最後の一線だけは守っているところに、彼女の価値があったと思う。栞ちゃんの容姿なら、全部をさらけ出さなくても、十分にタレント活動はできたはずだ。事実、各メディアに露出は増えていたのだ。それなのになぜ、AVなのか。彼女は福祉の仕事を体験したいと言っていた。あの抱負は、どこへ行ったのだ。
むろん私も男だから、栞ちゃんのすべてを見たいと夢想したこともある。しかし本人が日々の生活の中で自暴自棄になり、ヤケ気味で脱ぐのだとしたら、そんな栞ちゃんの裸は見たくない。
だが私が困惑をよそに、新作DVDの発売イベントが、3月29日(日)に行われる、との告知も目に入った。その整理券は、27日(金)に秋葉原のイベント会場でDVDの購入と引き換えに配布される。先着90名となっていたので、これは早めに購入しなければならない。
私は幸か不幸か、金曜日はワークシェアリングで休みであった。午後からはLPSA金曜サロンがあるので、スーツ姿(女流棋士に教えを乞うので、着用している)のまま、午前中に家を出たのだった。イベント会場であるDVD専門店でそれを買うと、整理券をくれた。番号は「27」。先客が、もう26人もいたのだ。
ちなみにこの日の金曜サロンは、昼が藤田麻衣子女流1級、夕方が石橋幸緒女流王位の担当だったが、両局とも惨敗した。会員のY氏にも、私の香落ちで完敗。ちなみに私が上手の駒落ちを持って負けたのは、金曜サロンではこの1局だけである。
当29日は、複雑な気持ちで秋葉原の会場へ入った。DVDの購入者は、定員の90名までは達していなかった。
栞ちゃんは、以前と変わらぬ元気な姿で現れた。いや、ちょっとやつれたかもしれない。しかしAV女優に転身した、という後ろめたさはいささかも感じられなかった。もちろん職業に貴賤はないから、本人が望むならどんな仕事に就いても構わない。
…と、ここで思ったことがある。彼女は大学に迷惑を掛けたくないから、大学の卒業を待って、AV方面での活動を開始したのではないか。彼女には、そういう義理固いところがある。
トークショーで栞ちゃんは、「友だちから、しおりはいつか脱ぐんじゃないかと思ってたー、って言われちゃいました」と、笑顔で話した。そんな話を、ファンは静かに聞いている。
その後は、例によって水着撮影会となった。今回は6人1組で、持ち時間はたったの1分。将棋を指しているときの30秒も短いが、この撮影タイムも短い。カメラの絞りやシャッタースピードを決めるどころではなく、プログラムオートで数枚撮ると、あっという間に1分が過ぎ、撮影タイムは終了した。
最後は恒例のサイン会である。色紙かDVDジャケットにサインをしてもらうのだが、そういうとき、ほかのファンは栞ちゃんとよくしゃべる。しかし私にはそんな度胸がないから、彼女の所作を見るだけだ。ただ今回は、私が最初に栞ちゃんを目にした、あの某イベントで撮った写真を、彼女に渡した。もう渡せる機会はないと諦めていた、自分なりの自慢の写真だ。
栞ちゃんは、「あ、ちょっと太ってたね…」と笑ったあと、ちょっと寂しそうな顔をした。もうあのころの自分には戻れない、という思いが脳裏をよぎったのだろうか。
何故だろう。彼女のすべてが観られることになったのに、私は何か割り切れないまま、秋葉原をあとにしたのだった。
それから約3ヶ月後。私は沖縄県・宮古島にいた。
もう15回は訪れている宮古島は、私の第二の故郷のようなものである。泊まる宿も毎年同じで、泳ぐ海岸、外食する場所もだいたい決まっている。
7月4日(土)夜、いつもの軽食喫茶に行くと、なんと臨時休業だった。この店は夫婦で経営していて、焼肉定食が安価で美味なのだが、休みでは仕方がない。それからぶらぶら歩き、港近くの西里大通りへ向かう。その近くに本屋があったので、反射的に入った。旅に出ると、活字が恋しくなるものだ。
本屋にはひととおりの雑誌や書籍が置いてあったが、エロ系の雑誌が充実していた。
と、出入口近くの棚に、月見栞ちゃん表紙のエロ雑誌が陳列されていたので、ビックリした。
「ビデオメイトDeLUXE」という月刊誌の7月号だった。中を見ると、巻頭グラビアこそなかったが、6月7日に「芸能人×エスワン解禁」というタイトルで新作AVを出す、という告知があった。
6月7日!? とっくに過ぎてるじゃないか!! DVDが発売されるなら、当然秋葉原でイベントがあったはずだ。あ~っ、しまった!!
まったくうっかりしていたと思う。あの日以来、ほとんど彼女のブログはチェックしていなかった。どちらかといえば、自分のブログを更新することに注力していたからだ。何ということだ…。
しかし、過ぎたことは仕方ない。新作DVDと同じデザインであるこの表紙も、栞ちゃんのスタイルと美脚が強調されていて素晴らしく、それだけでこの雑誌を買う価値がある。だから即購入したいが、旅先で荷物が増えるのは、極力避けなければいけない。
この雑誌は東京で買うことにして、私は近くのインターネット喫茶に入った。
1時間ほどして出てくると、宮古島の夜の、最後の晩餐である。先ほどの本屋の隣が食事処だったので、入ってみる。2階の座敷に通されたが、食事をオーダーして障子を閉められると、急に寂しくなってきた。
座敷にひとり。咳をしてもひとり。
こういうところは、ひとりのときはカウンターで食すのがいい、と痛感した。
オーダーした豪華な定食が運ばれてきたので食べていると、あることを軽視していることに気が付いた。先ほどの雑誌は「7月号」だったが、これは6月発売ではあるまいか? 「将棋世界」も、7月売りなら「8月号」である。
とするならば、東京ではもう次号が出ている可能性はないか? いや7月号が発売中でも、売り切れている可能性もある。最悪の場合、大手のエロ本屋をハシゴする必要にも迫られる。いや違う、次号が発売されていたらどうするか。本屋へ注文するしかないが、いい大人がエロ雑誌のバックナンバーを注文するのは、さすがに憚られる。
ということは、いまここで買うしかないのだ! しかしまだお店が開いているかどうか。腕時計は午後8時40分を指している。
私は、目の前に並んでいる鰻や味噌カツ、刺身、小鉢その他をかきこむと、急いで会計を済ませ、隣の本屋を覗いたのだった。幸い、本屋はまだ開いていた。
私は慌て気味に「ビデオメイトDeLUXE」を手に取ると、急いでレジに向かうのだった。
帰京後、久しぶりに栞ちゃんのブログを覗いてみた。栞ちゃんは、相変らずマメにブログを更新していた。彼女が元気で活動していることが分かって、私は嬉しかった。
直近の面白話としては、6日(月)の「笑っていいとも!」のテレホンショッキングで、お笑いのTKOが指名されたのだが、この電話のとき、TKOのいる現場に、栞ちゃんもいたらしい。
栞ちゃんが現在の心境に至るまで、いろいろ葛藤があったに違いない。しかしこれは自分が選んだ道である。これっぽっちの後悔もないであろう。とにかく栞ちゃんには、これからも自分の信じた道を、しっかり歩んでほしいと思う。
さて、私はけっきょく、月見栞ちゃんのDVDを3本有したことになる。しかしその3本とも、中身は一度も観たことはない。けっして演技ではない彼女の素敵な笑顔が、いまも私の脳裏に残っているからだ。