4月30日のLPSA金曜サロンは、今年度から始まった「第5金曜日特別企画」として、植山悦行七段の指導対局や自戦解説、早指し将棋大会などの催しがあった。
私は29日に仕事をし、翌30日を休みにしたので、30日は早朝からとっとと九州(G.W.旅行)へ発ってしまった。植山七段との指導対局のチャンスを逃したのは残念だったが、将棋より旅行のほうが大事なので、やむを得なかった。
きょうは、以下の局面を提示する。
上手・中倉宏美女流二段:1一香、1三歩、2一角、3四歩、6四歩、6九竜、7一角、7三歩、7七銀、8一桂、8三歩、9一香、9二王、9四歩 持駒:金、銀、桂、歩2
下手・一公:1六歩、1九香、3六歩、3七桂、4七銀、4八玉、5七金、6七歩、7二竜、7六歩、8七歩、9七歩、9九香 持駒:金2、銀、桂、歩4
☗7二竜と銀を取りながら王手を掛けたところ。このあとの攻防を考えてください。
5月7日のLPSA金曜サロン、1部(午後2時~6時)は大庭美樹女流初段、2部(午後4時30分~8時30分)は「夜のナカクラヒロミ」こと、中倉宏美女流二段の担当だった。
私は前日の朝まで九州旅行を満喫したので、7日は早びけという雰囲気にはならず、定時まで仕事をし、駒込へ向かった。
インターフォンでは渡部愛ツアー女子プロの声でお出迎え。やはり10代の声は張りがあってよい。渡部ツアー女子プロと私は、彼女が上京すると私が旅行中、というケースが何度かあり、すれ違いの運命を感じていたのだが、今回はそうではなかった。
さて、中倉女流二段との指導対局である。前回も中倉女流二段とだったので、1週置いたものの、同じ女流棋士と連戦、という珍しい形になった。
前局に続き、中倉女流二段の三間飛車。私はどういう作戦を採るか模索しながら指したが、結局☗5七銀左からの急戦に落ち着いた。
中倉女流二段の☖9四歩に挨拶をせず、☗3七桂と跳ねる。うしろでは植山悦行手合い係と渡部ツアー女子プロがこの将棋をのぞきこんでおり、植山手合い係が
「下手が☗9六歩と受けないのは、数手後上手が☖8四角成から馬を寄って、☖9五歩から端を攻める手を警戒しているからなんだよ」
とか言っている。
アマチュアの指し手をプロの七段がボソボソ解説しているので、指しにくくてしょうがない。ちなみにこの局面の変化は、羽生善治不朽の名著「羽生の頭脳」にそっくりそのまま載っている。最近文庫本で復刊されたので、興味のある方は購入されたい。
中盤から終盤にかけては、私の☗2二飛に中倉女流二段が☖4四角と打ち、飛車取りと☖8八飛を狙う手が出た。そこで私が☗7一銀と捨てたのが返し技(上手は美濃囲いから☖6一金がない形)。これを☖同王でも☖同角でも、☗2一飛成と☖2一の角を取って十分。本譜は☖9二王と逃げたが、ここで☗5二飛成と金を取ったのがやや甘かったか。☗2一飛成と、角のほうを取るべきだった。
しかしこの次善手が、終盤思わぬドラマを生む。
以下10手進んで、☗7二竜と迫ったのが、上に掲げた局面である。
ここで☖8二金合なら、☗8四桂☖9三王☗7一竜がほとんど受けなしで下手勝ち。
☖8二銀合なら、☗8四桂☖9三王☗8一竜で、☗9二金以下の詰みを見る。下手玉は☖4九金☗3八玉☖3九金☗2七玉☖2六歩(王手)☗1七玉、で際どく詰まない。もっとも上手も☖8四歩と桂を外すから一筋縄ではいかないが、何とか下手が勝つと思っていた。
ところが本譜は☖8二桂合。この手は1秒も考えていなかった。とりあえず☗8四桂☖9三王を決め、☗7一竜と必死を掛けようとしたら、自玉が☖3九銀☗2八玉☖2八金までの詰めろになっていることに気づき、アオくなった。
金気を温存したのは、この詰みを狙っていたからなのだ。中倉女流二段、大人しい顔して、しっかり狙っている。
いや~、これはどうしたものか。とりあえず☗4五桂と逃げ道を開けるか(この手には☖2六角があった)。だがどうもパッとしない。
そんな時、詰将棋ばりの好手が閃いた。
☗8三竜!!
まるで作ったような、次の一手があった。以下☖同王の一手に☗7二銀。あとは金が2枚あるから並べ詰めである。☖8四王☗7五金まで、中倉女流二段の投了となった。
それにしても☗8三竜とは、うまい手があったものである。これ、上手王に詰みがある、と言われれば、☗8三竜の発見は容易である。また☖8三歩が☖8三金とかなら、竜切りは第一感であろう。しかし歩を取っての竜捨ては、盲点ではないかと思う。詰みがあるかどうか分からない局面でこの手を発見したことに、大きな意味があるのである。
実際私の左で見ていたWパパは、あとの食事会で、
「私はあまりヒトの手を見て感動はしないんですけど、大沢さん、どう寄せるんだろう、と思って見てたら、竜を切られたんで、あそっかと、感動してしまいました」
と、嬉しいことを言ってくれた。
昨年度は上田初美女流二段との指導対局で指した鬼手が「2009年度ベストワンの一手」だったが、今年度はこの手がベストワンになりそうである。
私は29日に仕事をし、翌30日を休みにしたので、30日は早朝からとっとと九州(G.W.旅行)へ発ってしまった。植山七段との指導対局のチャンスを逃したのは残念だったが、将棋より旅行のほうが大事なので、やむを得なかった。
きょうは、以下の局面を提示する。
上手・中倉宏美女流二段:1一香、1三歩、2一角、3四歩、6四歩、6九竜、7一角、7三歩、7七銀、8一桂、8三歩、9一香、9二王、9四歩 持駒:金、銀、桂、歩2
下手・一公:1六歩、1九香、3六歩、3七桂、4七銀、4八玉、5七金、6七歩、7二竜、7六歩、8七歩、9七歩、9九香 持駒:金2、銀、桂、歩4
☗7二竜と銀を取りながら王手を掛けたところ。このあとの攻防を考えてください。
5月7日のLPSA金曜サロン、1部(午後2時~6時)は大庭美樹女流初段、2部(午後4時30分~8時30分)は「夜のナカクラヒロミ」こと、中倉宏美女流二段の担当だった。
私は前日の朝まで九州旅行を満喫したので、7日は早びけという雰囲気にはならず、定時まで仕事をし、駒込へ向かった。
インターフォンでは渡部愛ツアー女子プロの声でお出迎え。やはり10代の声は張りがあってよい。渡部ツアー女子プロと私は、彼女が上京すると私が旅行中、というケースが何度かあり、すれ違いの運命を感じていたのだが、今回はそうではなかった。
さて、中倉女流二段との指導対局である。前回も中倉女流二段とだったので、1週置いたものの、同じ女流棋士と連戦、という珍しい形になった。
前局に続き、中倉女流二段の三間飛車。私はどういう作戦を採るか模索しながら指したが、結局☗5七銀左からの急戦に落ち着いた。
中倉女流二段の☖9四歩に挨拶をせず、☗3七桂と跳ねる。うしろでは植山悦行手合い係と渡部ツアー女子プロがこの将棋をのぞきこんでおり、植山手合い係が
「下手が☗9六歩と受けないのは、数手後上手が☖8四角成から馬を寄って、☖9五歩から端を攻める手を警戒しているからなんだよ」
とか言っている。
アマチュアの指し手をプロの七段がボソボソ解説しているので、指しにくくてしょうがない。ちなみにこの局面の変化は、羽生善治不朽の名著「羽生の頭脳」にそっくりそのまま載っている。最近文庫本で復刊されたので、興味のある方は購入されたい。
中盤から終盤にかけては、私の☗2二飛に中倉女流二段が☖4四角と打ち、飛車取りと☖8八飛を狙う手が出た。そこで私が☗7一銀と捨てたのが返し技(上手は美濃囲いから☖6一金がない形)。これを☖同王でも☖同角でも、☗2一飛成と☖2一の角を取って十分。本譜は☖9二王と逃げたが、ここで☗5二飛成と金を取ったのがやや甘かったか。☗2一飛成と、角のほうを取るべきだった。
しかしこの次善手が、終盤思わぬドラマを生む。
以下10手進んで、☗7二竜と迫ったのが、上に掲げた局面である。
ここで☖8二金合なら、☗8四桂☖9三王☗7一竜がほとんど受けなしで下手勝ち。
☖8二銀合なら、☗8四桂☖9三王☗8一竜で、☗9二金以下の詰みを見る。下手玉は☖4九金☗3八玉☖3九金☗2七玉☖2六歩(王手)☗1七玉、で際どく詰まない。もっとも上手も☖8四歩と桂を外すから一筋縄ではいかないが、何とか下手が勝つと思っていた。
ところが本譜は☖8二桂合。この手は1秒も考えていなかった。とりあえず☗8四桂☖9三王を決め、☗7一竜と必死を掛けようとしたら、自玉が☖3九銀☗2八玉☖2八金までの詰めろになっていることに気づき、アオくなった。
金気を温存したのは、この詰みを狙っていたからなのだ。中倉女流二段、大人しい顔して、しっかり狙っている。
いや~、これはどうしたものか。とりあえず☗4五桂と逃げ道を開けるか(この手には☖2六角があった)。だがどうもパッとしない。
そんな時、詰将棋ばりの好手が閃いた。
☗8三竜!!
まるで作ったような、次の一手があった。以下☖同王の一手に☗7二銀。あとは金が2枚あるから並べ詰めである。☖8四王☗7五金まで、中倉女流二段の投了となった。
それにしても☗8三竜とは、うまい手があったものである。これ、上手王に詰みがある、と言われれば、☗8三竜の発見は容易である。また☖8三歩が☖8三金とかなら、竜切りは第一感であろう。しかし歩を取っての竜捨ては、盲点ではないかと思う。詰みがあるかどうか分からない局面でこの手を発見したことに、大きな意味があるのである。
実際私の左で見ていたWパパは、あとの食事会で、
「私はあまりヒトの手を見て感動はしないんですけど、大沢さん、どう寄せるんだろう、と思って見てたら、竜を切られたんで、あそっかと、感動してしまいました」
と、嬉しいことを言ってくれた。
昨年度は上田初美女流二段との指導対局で指した鬼手が「2009年度ベストワンの一手」だったが、今年度はこの手がベストワンになりそうである。