一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第4期マイナビ女子オープン・一斉予選対局④・1回戦午後(後編)

2010-07-22 00:38:51 | 観戦記
里見香奈女流名人・倉敷藤花-藤井敬子アマ戦は、里見女流二冠が最後は勝つのだろうが、意外といい勝負になっている。将棋は強いほうが勝つとは限らない。
14時20分。中倉彰子女流初段-小野ゆかりアマ戦。先ほどは、中倉女流初段が飛車を切り、☗6三銀と詰めろに迫ったが、いまは小野玉が「8二」から「5四」にワープしている。いったい何があったのか。
周りを見渡すと、観客が増えてきた。午後から入場した客もいるのだろう。
14時25分、中倉-小野戦を再び見に行くと、すでに終わっていた。小野アマの逆転勝ちであろう。中倉女流初段、28日の日レスカップ・林葉直子戦は大丈夫だろうか。
中井広恵女流六段-山口絵美菜アマ戦は、山口アマもよく指しているが、中井女流六段が押し切りそうだ。藤井アマは、まだ頑張っている。
中井女流六段が、ひときわ高い駒音で着手する。と、山口アマが投了を告げた。14時30分00秒。やはり女流六段の壁は厚かった。
同じ山口姓の山口恵梨子女流初段は、久津知子女流初段を相手に、うつむきながら考えている。制服は着ていないものの、やはり可憐だ。
竹部さゆり女流三段-岩根忍女流二段戦。岩根女流二段が迷いつつ着手し、その手をうしろへ回した。
中倉宏美女流二段-関根紀代子女流五段戦。長い長い中盤戦がすぎ、ようやく局面がほぐれてきた。中倉女流二段、勇躍飛車を成る。これは中倉女流二段が優勢だ。
14時35分。村田智穂女流初段-里見咲紀アマ戦が感想戦に入っている。カメラは里見アマを追っているが、将棋は村田女流初段が勝ったようだ。勝っても負けても写真を撮られるということは、人気がある証だ。
岩根女流二段の表情が心なしか険しい。駒台の駒と駒の間にスペースを空け、そこに相手の駒を置き、自分の手を進めた。谷川浩司流の、流れるような所作である。やはり奨励会経験者は、ほかの女流棋士と一味違う。しかし形勢はよくないように思う。
中倉女流二段、2枚目の竜を作った。これは中倉女流二段の勝勢。チャレンジカップへの逆戻りを回避しそうだ。
14時40分。テレビカメラが山口女流初段をジーッと映している。さぞ撮り甲斐があろう。テレビカメラマン氏、振り返って、今度は岩根女流二段を映している。仕事とはいえ、うらやましい。
里見-藤井戦は、意外と時間がかかっている。もう少し早く勝負がつくと思っていた。
野月浩貴七段がいらっしゃる。渡部愛アマの「☗1七桂」について、私の見解を小声で話す。
いっしょにいた金曜サロン会員のW氏が、
「カオリン(松尾香織女流初段)がさ、なんでワタシに懸賞を懸けてくれないの、って怒ってたよ」
と小声で言う。私がやたらLPSAの女流棋士に懸けているのに、松尾女流初段には懸けていないので、それはおかしい、ということらしい。
「倉敷藤花戦でマッカランを買わずに済んだんだから、次は懸けて、って言ってたよ」
とW氏。
大きなお世話である。倉敷藤花戦は、「ベスト4」でマッカラン贈呈なのを、「ベスト16でもマッカラン12年」と、途中でハードルを下げたのだ。それでも勝てなかった彼女がわるいのだ。もっともそのときの対戦相手は、男性プロ七段にも勝つ甲斐智美女王・女流王位だったが、それは関係ない。マッカランは旦那様に買ってもらいなさい旦那様に!
14時44分。長沢千和子女流四段-山田久美女流三段戦が終わっている。これは長沢女流四段の勝ちであろう。私は穴熊を好まないが、長沢女流四段の振り飛車穴熊は豪快な捌きが身上で、好きである。もっとも本局は美濃囲いだった。
渡部アマがいらしたので、声をかける。つぶらな瞳が魅力的である。しかし午前の将棋で惜敗し、さすがに元気がない。
現在彼女は高校2年生。金曜サロンなどで4局ほど指したことがあり、ファンというより、好敵手という感じである。しかし間近で拝見すると、やっぱりかわいい。
「また来年がんばればいいよ」
と慰めておく。金曜サロンの会員がいない場で、こうして渡部アマの点数を稼いでおくことが肝心なのである。
貞升南女流1級-長谷川優貴アマ戦、関根-中倉戦が終わった。長谷川アマと、中倉女流二段の勝ち。長谷川アマの棋力は分からぬが、殊勲の銀星といえよう。中倉女流二段は来期のチャレンジカップ回避。これは嬉しい勝利だったろう。
熊倉紫野女流初段が目に入る。知人と観戦中だ。現在NHKBS2の「囲碁・将棋ジャーナル」で司会をしている彼女は、当然きょうは休みである。そのピンチヒッターは矢内理絵子女流四段が務めている。
ところで松尾女流初段の相手が、熊倉女流初段である。なんとなく気になってしまう。
大庭美樹女流初段-渡辺弥生女流2級との将棋は、大庭女流初段が先ほどまで優勢に見えたが、大庭女流初段の表情が厳しくなっている。
優劣不明に見えた久津-山口戦は、久津陣に火がついている。山口女流初段の手がしなってきた。
うむ、とうなずいて後ろを振り返ると、熊倉女流初段と目が合った。
「く、熊倉先生、次は先生に懸賞金1本懸けますから。絶対に勝ってください!!」
船戸陽子女流二段へ懸ける予定だった1万円が、こちらへ移った。そして自動的に、松尾女流初段にも懸賞金を懸けたことになった。
14時50分。竹部-岩根戦が終了したようだ。岩根女流二段のこぼれるような笑顔がよい。これは岩根女流二段の勝ちか。
北尾まどか女流初段-中村桃子女流1級戦が終わったようだ。先ほどは中村女流1級が☖8五桂と跳ねていたが、ちょっと攻めが細いように思った。その流れだと、たぶん北尾女流初段の勝ちだろう。
さらに大庭-渡辺戦、里見-藤井戦も相次いで終わった。大庭女流初段、里見女流二冠の勝ち。どちらも優勢の将棋から押し切った、というところだろう。
うん…? 竹部-岩根戦は、竹部女流三段の勝ちだった。じゃあ岩根女流二段の笑顔は何だったのだろう。厳しい局面から解放され、癒し系の素顔が出たか。とにかく第2期の挑戦者が、今年は予選1回戦で姿を消した。
これで残るは、久津-山口戦、1局のみとなった。久津女流初段が決め手を与えず、粘っている。
15時06分。里見-藤井戦は、まだ感想戦をやっている。それは午前の松尾女流初段-小川詩織アマ戦のように、プロがアマに心ゆくまで将棋を教えているようであった。
15時16分。久津-山口戦はまだ続いている。秒読みの1分は長い。社団戦なら、1手20秒に短縮されているところだ。最初は閑散としていたこのカード、いまは場内にいるすべての観客が、この将棋を観戦している。この黒山では、山口女流初段を鑑賞できない。
入口近くのテーブルで、予選決勝の勝者予想を記入する。鉄板のカードもあれば、どちらか迷うカードもある。今期でいえば、早水千紗女流二段-本田小百合女流二段、中倉宏美女流二段-大庭美樹女流初段、室谷由紀・新女流2級-小野ゆかりアマあたりがむずかしい。本田女流二段、中倉女流二段、室谷女流2級を応援したいが、勝敗は逆になりそうな気がする。
こうした予想がむずかしいのは、非情に徹することができないからだと思う。やっぱり私情が入ってしまう。大庭美樹女流初段の実姉、大庭美夏女流1級がいらした。まことに書きにくいが、勝者欄に「中倉」と書く。けっきょく、どれも私情を優先した。
久津-山口戦はまだ続いているが、これだけ長い将棋を指しては、次の将棋に影響が出る。決勝の相手は村田智穂女流初段だが、どちらが出ても村田女流初段の前に屈すると思った。
勝者予想投票を終え、対局場に戻る。15時25分、最後の予選1回戦が終わった。山口女流初段の勝ち。
予選決勝は30分遅れの、16時からとなった。
(つづく)
コメント (3)
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