一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第4期マイナビ女子オープン・一斉予選対局⑤・予選決勝(前編)

2010-07-23 00:16:05 | 観戦記
久津知子女流初段-山口恵梨子女流初段戦が最終盤にさしかかっていたころ、私は懸賞金スポンサーの受付で、最後の手続きをしていた。すなわち松尾香織女流初段-熊倉紫野女流初段戦である。まあ、どちらが勝っても構わない。
15時45分、対局場に入り、選手の入場を待つ。15時50分、選手が入場し、所定の席の前で一礼したあと、着席した。さあ、この一番である。1回戦を勝っても、ここで負けては意味がない。勝てばみんなで記念写真。負けたらその場でサヨウナラ。まさに天国と地獄を分ける一戦だ。
記録係が振り駒を行う。先手か後手か。これも勝敗に微妙に影響する。上位者の駒を振るが、振ってその駒を戻すとき、盤上にパラッとまく記録係がいた。ここは1枚1枚、静かに盤上に置きたいところである。
15時59分、いよいよ予選決勝の対局開始となった。私は松尾女流初段-熊倉女流初段の前に立つ。先手は松尾女流初段。☗7六歩☖3四歩☗6六歩…。相振り飛車がほぼ確定したところで、ほかを見て回る。
16時07分。スタッフが懸賞札を立てに来た。松尾-熊倉戦はと見ると…えっ!? ご…ごほん!? 5本も立ったの!? な、なんだ、これなら私が懸賞金を懸けなくてもよかったんじゃないか。熊倉女流初段は現在「囲碁・将棋ジャーナル」の司会をしており、その影響も大きいと思われるが、それにしてもこの数は想定外だった。ともあれ松尾女流初段、この将棋に勝てば、懸賞金だけで最高級のマッカランが買える。頑張ってもらいたい。
鈴木環那女流初段-藤田綾女流初段戦は、7本も立っている。1回戦の鈴木-室田伊緒女流初段戦は8本立ったから、もう7本でも驚かないが、やはり鈴木女流初段の人気によるものが大きい。
その鈴木女流初段、盤から体を少し離し、左肘を肘掛けにつき、体をややこちら側に向けて考えている。つまり私たちは、鈴木女流初段の全身を余すことなく鑑賞できるわけだ。
これがもし、ファンの視線を承知の上での対局姿勢だったとしたら、鈴木女流初段、大したプロ根性と言わねばならない。
里見香奈女流名人・倉敷藤花-長沢千和子女流四段戦は、里見女流二冠の振り飛車に、長沢女流四段が居飛車で対抗していた。長沢女流四段は対抗形が好みだったのか。
竹部さゆり女流三段-長谷川優貴アマ戦は、長谷川アマが落ち着いて指しているが、相手は実力者の竹部女流三段である。どこまで迫れるか。
早水千紗女流二段-本田小百合女流二段戦、清水市代女流王将-井道千尋女流初段戦は、対局場所が部屋の隅にあたるので、見えづらい。本田女流二段は、さすがのかわいらしさ。井道女流初段も、なかなか魅力的である。
16時17分。懸賞金を数えつつ(現在は26本)、一通り見回ったが、やはり鈴木女流初段のもとへ戻ってしまう。その思考ポーズは先ほどからまったく変わっていない。コーディネートはオレンジを基調とした涼しげなもので、かわいらしいヒザ小僧が見えている。しかし表情は真剣そのもの。どことなく、ウチのオフクロの若いころに雰囲気が似ている。それはともかく、まさに絵になる感じで、まるで画家の前でポーズを取っているかのようだ。これは環那ファンでなくても、見入ってしまう。もしファンだったら、その場を離れることができないだろう。
松尾女流初段、マイナビマグカップにペットボトルのお茶を注ぎ、ハンカチを腿の上に置いた。鈴木女流初段のスカートはそこまで短くないので、ハンカチで隠すには及ばない。これも計算だとしたら、大したものだ。
将棋ペンクラブの幹事氏が、「週刊将棋」を手にしている。最新号の早刷りがもう上がったらしい。私がマイナビから1部いただいても、バチは当たらないと思うのだが。
中井広恵女流六段-北尾まどか女流初段戦。LPSAの前代表理事と、元LPSAの対戦である。将棋は、北尾女流初段得意のレグスペ(角交換四間飛車穴熊)に、中井女流六段が銀冠を目指している。☗6七金、と軽やかに指した。まだ勝負はこれからである。
16時21分。村田智穂女流初段-山口恵梨子女流初段戦に懸賞金が2本追加され、計4本になった。しかしそのうちの1本の懸賞札の、デザインが違う。どうも今回新調した懸賞札が「品切れ」になってしまったようだ。今期の懸賞金は、前期より多くなることは確実だった。ちょっと、マイナビスタッフの読みが甘かったようだ。
村田女流初段が席を外す。関係者が山口女流初段をあらゆる角度から撮り放題にできる、絶好のチャンスだ。カメラマンになりたいと思う。
その山口女流初段は2局連続、中飛車穴熊。涼やかな山口女流初段に穴熊は似合わない。美濃囲いで軽快に指してほしいと思う。
16時28分。高群佐知子女流三段-山田朱未女流二段戦。山田女流二段が力強い手つきで指す。加藤一二三九段のようだ。高群女流三段は右ひじをテーブルにつき、その手をコメカミに当てている。高群女流三段のお嬢さんは先のチャレンジカップに参加したが、惜しくも通過はならなかった。高群女流三段、ここは予選を通過して、母親の威厳を示したいところだろう。
16時31分。熊倉女流初段も穴熊に囲っている。しかし熊倉女流初段の穴熊は容認する。名前に「熊」が入っているから。
その左の対局の鈴木女流初段は、相変わらず、例のポーズで考慮中。むかし鈴木女流初段と上田初美女流二段が、将棋ペンクラブの関東交流会に顔を見せたことがあった。ふたりがいまも仲良しかどうかは知らぬが、上田女流二段は今期、シードである。ふたりの実績も開きつつあり、鈴木女流初段は早く上田女流二段に追い付きたいところであろう。
14時34分。中井-北尾戦。あまり局面が進んでいない。中井女流六段、厳しい顔だ。…あっ!! 私は15日の当ブログで、中井女流六段の子供のころのことを「イモ中学生」と書いた。昼にお会いしたときから厳しい顔だったが、まさか中井女流六段、あの文章をネに持っていたのだろうか。
ここにいてはあぶない。入口右手で指されている、夢の高校生対決を見に行く。そのひとり、小野ゆかりアマは十分高校生オーラを発しているのだが、今回は相手がわるい。AKB48で個人写真集でも出しそうな、パーフェクト室谷由紀女流2級が相手なのだ。
その室谷女流2級、今度は「京都福寿園 伊右衛門」のペットボトルを傍らに置いている。
16時39分。対局場(マイナビルーム)奥の、蛍光灯の一部が一斉に消えた。しかし対局者は盤面に集中している。きっと地震が起きても、みな微動だにしないのだろう。
蛍光灯が再点灯した。前より明るくなった気がする。中倉宏美女流二段-大庭美樹女流初段のLPSA対決はどうなっているだろう。LPSAの予選成績は毎年ひどいが、今期1回戦は4勝4敗であった。本局、LPSA同士の予選決勝は初めてではないか。
こちらは懸賞金が4本。うち2本は、「イレギュラー」のデザインである。
局面は、大庭女流初段が得意の右玉に構えているが、四段目に歩が一列並んでいる。「四段目の歩一列」といえば、第50期A級順位戦・大山康晴十五世名人-高橋道雄九段の一局を思い出す。この将棋、先手の大山十五世名人が☗8五桂ハネで1歩ドクしたあと、「四段目(六段目)の歩一列」を完成させた。
中倉-大庭戦は、中倉女流二段が☗4六歩と突けば、こちらも「四段目…」の完成となるが、そうはならないだろう。
室谷-小野戦に戻る。室谷女流2級は昨年10月仮デビューながら、本局は相手がアマのため、上座(入口から遠いほう)に座っている。そんな室谷女流2級の靴を見ると、ピカピカである。昨年、東京・将棋会館で行われた「LADIES HOLLY CUP」で、当時高校生だった山口女流初段の対局姿を拝見したが、そのとき彼女がはいていた学生靴を思い出した。将棋は小野アマの端攻めが決まり、大優勢である。
この位置から中倉-大庭戦を見る。両者とも黒のLPSAブレザーを着用しているので、ここからだと告別式の席に見える。
村田-山口戦。山口女流初段が前局同様、うつむいて考えている。彼女は背が高いから、座高もある。姿勢もいいから盤を上から見る形になり、うつむいてしまうのだ。
16時51分。今年3月にLPSAを退会した、藤田麻衣子さんの姿が見える。藤田さんが退会しなければ、いまこの対局席にすわっていたかもしれない。ご本人の胸中、いかばかりだろうか。
山口女流初段のペットボトルもお茶。「龍鳳」か「龍凰」か、よく見えない。その背中合わせに室谷女流2級がいる。もし山口女流初段が高校の夏服だったら、最高だったのにと思う。しかしもう彼女は「女子高生」ではない。なにか世代交代を見るようである。
16時54分。まず、北尾女流初段の秒読みが始まった。
(つづく)
コメント (3)
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