17日(土)の朝は二度寝してしまったため、朝起きたのが遅かった。大急ぎで支度をして、9時10分に家を出た。迷ったが、一眼レフカメラは携行しなかった。
9時45分、東京・竹橋のパレスサイドビルに着く。対局は10時開始だから、その前にマイナビルームに入らなければならない。9階のマイナビルームフロントに入ると、石橋幸緒LPSA代表理事に遭遇した。
「懸賞金を懸けるならお先に(手続きを)どうぞ」
「いえいえ対局開始を見届けたいので」
「いえいえ受付をお先に」
「いえいえ」
「いえいえ」
「はあ、では」
という問答になり、押し切られた形で、懸賞金スポンサーの受付を先に済ませることになった。ところで懸賞金の対戦カードは書かないつもりだったが、マイナビサイトへのアップを承諾したので、ここにも書いてしまおう。
まずは午前の1回戦。
以前も書いたが、女流棋士会とLPSAの、30代アイドル顔対決・本田小百合女流二段-島井咲緒里女流初段戦は外せない。ここに1口。続いてこれも以前書いたが、5月の将棋ペンクラブ関東交流会でお世話になった、脱力系・安食総子女流初段にも懸ける。すなわち、安食-新藤仁奈アマ戦。
日レスインビテーションカップに招待された女流棋士3名には、このブログで「もし3人が出場を快諾したら、マイナビ女子オープンの際、3人に懸賞金を懸ける」と書いた。結果は3名とも「NO」だったが、私は「出場の意思はあった」とみなす。よって、鈴木環那女流初段に懸ける。鈴木-室田伊緒女流初段戦。
チャレンジカップを勝ち上がった渡部愛アマは、ご褒美で1口。対局相手は、かつて女流棋士スーパーサロンで指導対局をいただいたこともある、藤田綾女流初段。これは好都合である。
ここまでで都合4口。壱万円札はピン札の通し番号を用意したので、数え間違えることはない。ただ、ここで時間を食ったので、選手の入場を対局場で迎えることはできなかった。
数分後、入場制限が解除され、入室する。見ると、LPSA勢は今年もそろいのブレザー着用である。残念だ。
まずは船戸陽子女流二段がナナメから見える位置に立つ。相手は清水市代女流王将。強敵である。予算の関係で船戸女流二段に懸賞金は懸けなかったが、私が最も応援しているのは言うまでもない。
まずは毎日コミュニケーションズ担当氏の挨拶。続いて日本将棋連盟常務理事・青野照市九段の挨拶、LPSA代表理事・石橋幸緒女流四段の挨拶と続いた。
10時01分、対局開始。
将棋は、居飛車党の船戸女流二段が中飛車に構えた。ここ何回かのLPSA金曜サロン・指導対局で、船戸女流二段は中飛車一辺倒だった。十年一剣を磨く、と言ったらオーバーだが、それはこの日のためだったか。
数手が進んだので、私はタイトル戦で立会を務める棋士のように、とりあえずその場を離れる。島井-本田戦は、島井女流初段が早くもブレザーを脱いでいる。その下はブルー系の涼しげな服だ。昨年と同じ「島井システム」である。
記録机を見ると、チェスクロックは記録係の担当だった。しまった、と思う。先日私は、チェスクロックは女流棋士自身が押すものと決めつけて、ブログを書き進めてしまった。どうも、LPSA・1dayトーナメントを見過ぎたようだ。観客はこの時点で150人くらいだったか。思ったより少ない。
室谷由紀女流3級のお姉さんである、室谷早紀アマが入口左の下座(つまり手前側)で指している。なかなかチャーミングだが、午前中はこれ以上懸賞金を懸ける予算はない。相手の高群佐知子女流三段は、以前私を振った女性に似ていて、いまでも隠れファンである。
10時06分、スタッフ氏が懸賞金スポンサーの札を、記録机の前に立て始める。清水-船戸戦には2本が立った。
藤田-渡部戦は、藤田女流初段の立石流四間飛車。渡部アマが対振り飛車の経験不足と踏み、そこを衝いているようだ。女子大生と女子高生の戦いだから、もっとギャラリーがいてもいいはずだが、すいている。しかし懸賞金は3本立った。
金曜サロン会員氏に声を掛けられる。鈴木-室田戦は、8本も懸賞金が懸かったという。そのうちの1本は私なので驚くのもナンだが、それでもこの数字はすごい。1局あたりの新記録だ。今年の対局料は公表されていないが、もし昨年と同じなら、それだけで1回戦の対局料を上回ってしまう。やはり持つべきものはファンである。
10時18分。実力者中村真梨花女流二段-山口真子アマ戦は、山口アマが長い脚を伸ばして考えている。なかなか美人だ。あのチャレンジカップを勝ち抜いたのだから実力はあるに違いないが、どうもピンとこない。
マッカラン松尾香織女流初段-小川詩織アマは、珍しい相矢倉。振り飛車党の松尾女流初段は裏芸で矢倉を指す。これがなかなか巧妙で、私はまったく歯が立たない。むかし米長邦雄永世棋聖が、「矢倉は将棋の純文学」と言ったが、けだし名言だと思う。
かまいたち井道千尋女流初段-浅野法子アマは、ベテラン浅野アマが予選を勝ち抜き、話題となった。しかしその手つきはたどたどしい。
24名の選手が対局しているから、ひとつところに落ち着くのはもったいない。反対側の部屋、マイナビルームLでは解説会も開かれるが、公開対局なので、そちらへお邪魔するつもりはない。女流棋士の表情を鑑賞していたほうがよい。
それにしても穴熊の将棋が多い。本田-島井戦の相穴熊をはじめとして、2局に1局は穴熊の将棋になっているのではないか。振り飛車側の囲いはともかく、居飛車側にはさまざまな囲いがある。居飛車穴熊に固執するのは、将棋の楽しみを自ら狭めていると思う。
10時44分。渡部アマは口に手を当てるいつものポーズで考えている。しかしきょうは、その間にハンカチを挟んでいる。ハッシと☗1七桂と跳ねた。一目、スジが悪い。本来、桂は3七に跳ねるもの。渡部アマ、こんな手を指しているようでは、この将棋は勝てないと思った。
11時00分ごろ、一番手の秒読みが始まった。井道-浅野戦で、読まれる側は意外にも井道女流初段。しかし局面は、井道女流初段が優勢のようである。
清水-船戸戦は、ガチガチの穴熊に囲った船戸女流二段が何とか暴れようとするが、清水女流王将は自然に厚みを築き、優勢。船戸女流二段の☗2五飛に、清水女流王将が2四の角をスッ、と☖3三角と引いたのが好手だった。☗2四飛から暴れる手を消されて、船戸女流二段に指す手がない。
いたたまれなくなって、その場を離れる。懸賞金の本数を、端から数えて回る。26本もあった。皆さんなけなしのおカネをはたいてるんだろうなー、と思う。むろん私もそうだ。
11時11分。安食-新藤戦は、安食女流初段が手堅い指し回しで優勢。
11時15分。山田朱未女流二段-相川春香アマ戦は、まず山田女流二段が勝ち名乗り。髪をたくし上げ、天を見た。
ほかの将棋は中盤から終盤の難しい局面だ。対局場の静寂を打ち消すように、秒読みの声があちこちで響いている。
(つづく)
9時45分、東京・竹橋のパレスサイドビルに着く。対局は10時開始だから、その前にマイナビルームに入らなければならない。9階のマイナビルームフロントに入ると、石橋幸緒LPSA代表理事に遭遇した。
「懸賞金を懸けるならお先に(手続きを)どうぞ」
「いえいえ対局開始を見届けたいので」
「いえいえ受付をお先に」
「いえいえ」
「いえいえ」
「はあ、では」
という問答になり、押し切られた形で、懸賞金スポンサーの受付を先に済ませることになった。ところで懸賞金の対戦カードは書かないつもりだったが、マイナビサイトへのアップを承諾したので、ここにも書いてしまおう。
まずは午前の1回戦。
以前も書いたが、女流棋士会とLPSAの、30代アイドル顔対決・本田小百合女流二段-島井咲緒里女流初段戦は外せない。ここに1口。続いてこれも以前書いたが、5月の将棋ペンクラブ関東交流会でお世話になった、脱力系・安食総子女流初段にも懸ける。すなわち、安食-新藤仁奈アマ戦。
日レスインビテーションカップに招待された女流棋士3名には、このブログで「もし3人が出場を快諾したら、マイナビ女子オープンの際、3人に懸賞金を懸ける」と書いた。結果は3名とも「NO」だったが、私は「出場の意思はあった」とみなす。よって、鈴木環那女流初段に懸ける。鈴木-室田伊緒女流初段戦。
チャレンジカップを勝ち上がった渡部愛アマは、ご褒美で1口。対局相手は、かつて女流棋士スーパーサロンで指導対局をいただいたこともある、藤田綾女流初段。これは好都合である。
ここまでで都合4口。壱万円札はピン札の通し番号を用意したので、数え間違えることはない。ただ、ここで時間を食ったので、選手の入場を対局場で迎えることはできなかった。
数分後、入場制限が解除され、入室する。見ると、LPSA勢は今年もそろいのブレザー着用である。残念だ。
まずは船戸陽子女流二段がナナメから見える位置に立つ。相手は清水市代女流王将。強敵である。予算の関係で船戸女流二段に懸賞金は懸けなかったが、私が最も応援しているのは言うまでもない。
まずは毎日コミュニケーションズ担当氏の挨拶。続いて日本将棋連盟常務理事・青野照市九段の挨拶、LPSA代表理事・石橋幸緒女流四段の挨拶と続いた。
10時01分、対局開始。
将棋は、居飛車党の船戸女流二段が中飛車に構えた。ここ何回かのLPSA金曜サロン・指導対局で、船戸女流二段は中飛車一辺倒だった。十年一剣を磨く、と言ったらオーバーだが、それはこの日のためだったか。
数手が進んだので、私はタイトル戦で立会を務める棋士のように、とりあえずその場を離れる。島井-本田戦は、島井女流初段が早くもブレザーを脱いでいる。その下はブルー系の涼しげな服だ。昨年と同じ「島井システム」である。
記録机を見ると、チェスクロックは記録係の担当だった。しまった、と思う。先日私は、チェスクロックは女流棋士自身が押すものと決めつけて、ブログを書き進めてしまった。どうも、LPSA・1dayトーナメントを見過ぎたようだ。観客はこの時点で150人くらいだったか。思ったより少ない。
室谷由紀女流3級のお姉さんである、室谷早紀アマが入口左の下座(つまり手前側)で指している。なかなかチャーミングだが、午前中はこれ以上懸賞金を懸ける予算はない。相手の高群佐知子女流三段は、以前私を振った女性に似ていて、いまでも隠れファンである。
10時06分、スタッフ氏が懸賞金スポンサーの札を、記録机の前に立て始める。清水-船戸戦には2本が立った。
藤田-渡部戦は、藤田女流初段の立石流四間飛車。渡部アマが対振り飛車の経験不足と踏み、そこを衝いているようだ。女子大生と女子高生の戦いだから、もっとギャラリーがいてもいいはずだが、すいている。しかし懸賞金は3本立った。
金曜サロン会員氏に声を掛けられる。鈴木-室田戦は、8本も懸賞金が懸かったという。そのうちの1本は私なので驚くのもナンだが、それでもこの数字はすごい。1局あたりの新記録だ。今年の対局料は公表されていないが、もし昨年と同じなら、それだけで1回戦の対局料を上回ってしまう。やはり持つべきものはファンである。
10時18分。実力者中村真梨花女流二段-山口真子アマ戦は、山口アマが長い脚を伸ばして考えている。なかなか美人だ。あのチャレンジカップを勝ち抜いたのだから実力はあるに違いないが、どうもピンとこない。
マッカラン松尾香織女流初段-小川詩織アマは、珍しい相矢倉。振り飛車党の松尾女流初段は裏芸で矢倉を指す。これがなかなか巧妙で、私はまったく歯が立たない。むかし米長邦雄永世棋聖が、「矢倉は将棋の純文学」と言ったが、けだし名言だと思う。
かまいたち井道千尋女流初段-浅野法子アマは、ベテラン浅野アマが予選を勝ち抜き、話題となった。しかしその手つきはたどたどしい。
24名の選手が対局しているから、ひとつところに落ち着くのはもったいない。反対側の部屋、マイナビルームLでは解説会も開かれるが、公開対局なので、そちらへお邪魔するつもりはない。女流棋士の表情を鑑賞していたほうがよい。
それにしても穴熊の将棋が多い。本田-島井戦の相穴熊をはじめとして、2局に1局は穴熊の将棋になっているのではないか。振り飛車側の囲いはともかく、居飛車側にはさまざまな囲いがある。居飛車穴熊に固執するのは、将棋の楽しみを自ら狭めていると思う。
10時44分。渡部アマは口に手を当てるいつものポーズで考えている。しかしきょうは、その間にハンカチを挟んでいる。ハッシと☗1七桂と跳ねた。一目、スジが悪い。本来、桂は3七に跳ねるもの。渡部アマ、こんな手を指しているようでは、この将棋は勝てないと思った。
11時00分ごろ、一番手の秒読みが始まった。井道-浅野戦で、読まれる側は意外にも井道女流初段。しかし局面は、井道女流初段が優勢のようである。
清水-船戸戦は、ガチガチの穴熊に囲った船戸女流二段が何とか暴れようとするが、清水女流王将は自然に厚みを築き、優勢。船戸女流二段の☗2五飛に、清水女流王将が2四の角をスッ、と☖3三角と引いたのが好手だった。☗2四飛から暴れる手を消されて、船戸女流二段に指す手がない。
いたたまれなくなって、その場を離れる。懸賞金の本数を、端から数えて回る。26本もあった。皆さんなけなしのおカネをはたいてるんだろうなー、と思う。むろん私もそうだ。
11時11分。安食-新藤戦は、安食女流初段が手堅い指し回しで優勢。
11時15分。山田朱未女流二段-相川春香アマ戦は、まず山田女流二段が勝ち名乗り。髪をたくし上げ、天を見た。
ほかの将棋は中盤から終盤の難しい局面だ。対局場の静寂を打ち消すように、秒読みの声があちこちで響いている。
(つづく)