一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

LPSA新春将棋大会(中編)・完敗

2011-01-06 00:25:58 | LPSAイベント
5四の地点で銀交換になったが、☗2四歩と突きだす狙いがあるので、私は☖2三歩と謝る。序盤で☖2四歩と突っかけた手が無駄になったわけで、屈辱的な一手だ。
数手後、私は手持ちの銀を3六に打つ。これも顔をしかめたくなるようなイモ手。奨励会員だったら破門だろう。☖3七銀不成と桂得したものの、この銀が遊び駒になっては、逆に損をした。
船戸陽子女流二段、数手後に☗6五歩。☗6六角のノゾキを見たもので、こうなると1一への角成が受けにくい。
だから☖4四桂と先着したのだが、これも空間に駒を埋めただけの手で、破門手の第2弾だった。
私は早くも秒読みになった。開始直後の無駄な長考が、ここにきて響いてきた。対して船戸女流二段は12分も残っている。これは大きい。
私の片美濃はすでに崩れているが、何とか堪える。しかし緩やかに終局に向かっていることは覚悟していた。
船戸女流二段が「ウウン…」と洩らす。その声が妙に色っぽい。と、対局中にそんなことを考えるようでは、もうダメである。そういえばこの日は船戸女流二段から香水の香りがしなかった。これも勝負に徹する表れだったか。
船戸女流二段、得した桂で☗6五桂と飛車取りに打つ。すでに大勢は決しており投了の時機だが、私はもう一手☖5二飛と指し、☗6一銀の割り打ちを待って投了した。一部局面がはっきりしないが、記念すべき一局なので、投了時の駒の配置を、以下に記しておこう。

先手・一公:1一香、1三歩、1九馬、2四歩、3三金、3五歩、3八成銀、4四桂、4五歩、5二飛、5四歩、6二歩、7二金、7三歩、8一桂、8二玉、8三歩、9一香、9五歩 持駒:銀、香、歩
後手・船戸女流二段:1六歩、5六歩、6一銀、6四歩、6五桂、6六飛、7五歩、7七金、7九金、8七歩、8八銀、8九桂、9七歩、9八香、9九王 持駒:角、歩2

終了時刻は午後1時40分台。2回戦の開始が2時10分予定だったから、かなり早い終了になった。30分余の、夢の時間だった。
感想戦はほかの選手やLPSAスタッフ氏も交え、序盤を中心に行われた。
船戸女流二段が真っ先に指摘したのがやはり☖4五歩で、ここは☗2五歩を目標に、☖1四歩~☖1三桂などして動くのがよかったようだ。
それにしても船戸女流二段は強かった。私の作戦に一貫性がなく、力を出し切れなかったキライはあるが、私は船戸女流二段の色香に惑わされることもなく、いつも以上に盤面に集中し、精一杯戦った。
しかしそれでも、まったく敵わなかった。私は船戸女流二段の迫力を肌で感じたことに満足し、この機会を与えてくれたLPSAに改めて感謝した。同時に、「2011年・私の将棋10大ニュース」の第1位が早くも確定したのだが、これがその翌日、第2位に落ちるとは夢にも思わなかった。
感想戦も終わり一礼すると、船戸女流二段はいつもの朗らかな姿に戻り、「セカンドトーナメントには出ますよね」と手続きをしてくれた。

セカンドトーナメントは8人参加だから、3連勝で優勝である。
1回戦は、私の先手。☗7六歩☖3四歩☗2六歩☖4四歩から、後手氏は三間飛車できた。これには居飛車穴熊を目指すのが現代の定跡なのだろうが、私は☗5七銀左から急戦を目指す。居飛車の玉が薄いため、仕掛けが成功しても苦労するのだが、それが私の棋風なのだからしょうがない。
☗4五歩~☗4六銀に後手は☖5六歩と突きださず、☖5四銀と立った。
以下5五で銀交換になったが、このあと私が☗4四歩と取りこんだのが悪手。☖4四同金☗8八角に☖4五歩とフタをされ、一遍に不利になった。そうだ、「羽生の頭脳」では黙って☗8八角と引き、☖4五歩に☗5五銀と打っていた。
本譜☖4五歩に私は☗5六銀と据えたが、☖5二飛に☗5七歩と打たされては、泣きたくなった。
ここで☖3五歩とでも突かれていたら、以下数手で私は投げていたと思うが、後手氏は☖5四銀と手厚く打つ。私は☗2四歩~☗2五歩。後手氏☖5五歩。これに強く☗2四歩と取りこんで、勝負になったと思った。もし☖5六歩と銀を取るなら☗2三歩成とし、☖5一角なら4四金が取れる。
以下もむずかしい将棋が続いたのだが、最後は後手氏があっさり投げてくれ、私の辛勝となった。
感想戦は☗5五同角以下の順を調べた。後手氏は定跡通と推量したが案の定で、後手氏は☗8八角以下の定跡をひととおり述べたあと、自身が考案した秘手まで教えてくれた。
いったいこの男性は何者なのか。私がお手洗いから戻ってくると、2回戦の対局を終えていた船戸女流二段が、
「大沢さん、悪いんだー(悪い人ね)」
と言う。聞けば、先ほどの男性は大庭美夏女流1級のご亭主だったという。道理で将棋が強いわけだ。奥さまより定跡に詳しいのではないだろうか。
そばに小学生の娘さんもいたが、娘さんとは以前六枚落ちで対局したことがあり、負かしてしまったことがある。
娘さんからすれば、「あのオジサン、ワタシもパパもママも負かして、コワイ!!」というところだろう。
なんだかこちらが負けた気分になって、2回戦(準決勝)に臨んだ。対戦相手は最近マンデーレッスンSに通い始めたS氏と。白皙のS氏は、芝浦サロンでは目にしたことはないが、LPSAのイベントには毎回顔を出す、ちょっとした有名人である。
とくに目立った行動はしないが、いつも静かに解説を聞き、イベントが終われば黙って会場を後にする。
地方在住のファンや、こうして地道にイベントに訪れるファンがLPSAを支えているのだな、と思う。
そんなS氏との将棋は、S氏の先手石田流。こちらはふつうに対抗すると相手の思うツボになるので、☖4四歩から二枚銀で対抗した。
中盤、☖6三金☖7二飛☖7三歩の形から、☖7四歩☗同歩☖7五歩と決戦に行ったのだが、S氏も歩の連打で対抗し、飛車交換になった。先手は歩切れになったものの、こうなっては玉の堅いS氏が指しやすい感じだ。どうも私の決戦が無理筋だったようだが、ほかに指す手もなかった。
ただしS氏も秒読みに追われ、乱れる。私が手順に金得し、ここで形勢逆転、やや指しやすくなったと思った。
最後もS氏の猛攻をかわし、私は先手玉を即詰みに討ち取る。戦前は勝つ自信がまったくなかったが、薄氷の勝利となった。
感想戦に入る。飛車を取り合って一段落したところでは、S氏の玉は固いが私の駒も目一杯働いており、先手に決め手がありそうだが、何となく後手有利、の結論だった。しかしどうもおかしい。
そこにスタッフ氏が加わり、
「☗5四歩は?」
と言った。…あっ!!
将棋には、一目好手という手がある。その後の数手を進めなくても、決め手と分かる手だ。
☗5四歩はまさにそれで、この手が入っていれば後の展開がまるで違い、私が負けていただろう。改めて、僥倖の勝利だった。
隣では、Y氏が反則勝ちでセカンドトーナメント決勝に進出していた。「セカンド」が付くとはいえ、これで芝浦サロン会員同士の決勝戦である。私ははやる心を抑えて、盤に向かった。
(つづく)
コメント (2)
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