きょう1月26日は、中倉宏美女流二段のお誕生日。おめでとうございます。
中倉女流二段は女流棋界で一、二を争う笑いのセンスの持ち主です。LPSAイベントの司会では、ふつうに話しているだけなのに、どこか可笑しい。これはたいへんな才能といえましょう。
これからも軽妙なトークで、私たちを明るい気持ちにさせてください。応援しています。
というわけできょうは、中倉女流二段との初指導対局の模様を書いてみる。
中倉女流二段との初対局は、2008年7月11日だった(当時は女流初段)。舞台はもちろん、LPSA金曜サロンである。このころの中倉女流二段は昼の担当が多く、この日もそうだった。私も仕事があったのだが、このときはオヤジに無理を言って、金曜サロンに赴いたのだった。当時中倉女流二段はNHK杯将棋トーナメントの司会を務めており、私には芸能人のような存在だった。そんな中倉女流二段に、何としても指導を受けたかったのである。
まだ陽も暮れてないうちから、金曜サロンのドアを開ける。そこでは中倉女流二段が、私の眼前でふつうに指導対局をしていた。金曜サロンは何て素晴らしいところだろう、と思った。
当時は船戸陽子女流二段がLPSAに移籍したばかり。山口恵梨子女流初段はデビュー3ヶ月、室谷由紀女流1級は当然アマチュアで、もしこの時「女流棋士ファンランキング」をつけていたら、島井咲緒里女流初段とトップを争っていたのではなかろうか。
手合いは角落ちにしてもらった。このころの私は、女流棋士とはどの手合いがベストか分からず、1局目はどの女流棋士にも、角落ちで指していた。
将棋は私の三間飛車に、中倉女流二段の棒金となった。中盤の入口で私が角金交換から飛車をぶつける大捌きに出て、駒落ちの手合いそのままに、私が優位に立った。
中倉女流二段も反撃に出るが、私も自身で、ホホー、と感心するような妙手順を連発して、上手王を追いつめてゆく。竜取りに構わず金銀をベタベタ打ち、必勝態勢を築いたのが以下の局面である。
上手・中倉女流二段(角落ち):1一香、1二王、1四歩、2一桂、2三歩、3三歩、4二銀、4四歩、5四歩、7四歩、7五角、7九竜、9一香、9四歩 持駒:飛、桂、歩2
下手・一公:1六歩、1九香、2二銀、2七歩、2八玉、2九桂、3二金、3六歩、3八銀、4三銀、4六歩、4七金、4九金、5六歩、6六歩、8六歩、8九桂、9六歩、9九香 持駒:金、歩
☗2二銀まで。上手はほとんど受けなしで、投了してもおかしくない。しかし中倉女流二段は少考後、☖8一飛と自陣飛車で受けた。
(女流)棋士は例外なく負けず嫌いだが、この一着には驚いた。中倉女流二段は外見に似合わず、そのケが強い、と思った。そしてその気迫に押されてか、私はグズグズの指し手を連発してしまう。参考までに、終局までの棋譜を記す。
(☖8一飛以下)☗1一銀成☖1三王☗1二金☖2四王☗4二銀不成☖3四王☗5二銀☖6六角☗5三銀成☖4五歩☗4三銀不成☖2四王☗4五歩☖1三桂☗2六香☖2五桂打☗同香☖同桂☗2六歩☖4八歩☗2五歩☖同王☗3七桂☖2四王☗2六歩 まで、一公の勝ち。
☗1一銀成が次善手。ここは☗2一金で必至だった。王手王手で上手王を上部に逃がし、☗4二銀不成がまた疑問手。ここは「成」、もしくは☗2六香なら、下手が簡単に勝っていた。本譜は☖3四王と綱渡りに逃げられ、☗5二銀と重たい銀を打つようでは、明らかに流れがおかしい。
それでも形勢が大きく開いていたので逆転には至らず、最後も鈍重な攻めで、やっと上手を投了に追い込んだのだった。
一手必至のところを、緩みに緩んで、25手もかかってしまった。これが平手の複雑な局面だったら、恐らく逆転負けを喫していただろう。
「投了は最大の悪手」と言ったのは誰だったか。私は中倉女流二段に、「どんな局面でも諦めてはいけません」と教わった気がして、その日はすこぶる満足だった。
中倉女流二段は女流棋界で一、二を争う笑いのセンスの持ち主です。LPSAイベントの司会では、ふつうに話しているだけなのに、どこか可笑しい。これはたいへんな才能といえましょう。
これからも軽妙なトークで、私たちを明るい気持ちにさせてください。応援しています。
というわけできょうは、中倉女流二段との初指導対局の模様を書いてみる。
中倉女流二段との初対局は、2008年7月11日だった(当時は女流初段)。舞台はもちろん、LPSA金曜サロンである。このころの中倉女流二段は昼の担当が多く、この日もそうだった。私も仕事があったのだが、このときはオヤジに無理を言って、金曜サロンに赴いたのだった。当時中倉女流二段はNHK杯将棋トーナメントの司会を務めており、私には芸能人のような存在だった。そんな中倉女流二段に、何としても指導を受けたかったのである。
まだ陽も暮れてないうちから、金曜サロンのドアを開ける。そこでは中倉女流二段が、私の眼前でふつうに指導対局をしていた。金曜サロンは何て素晴らしいところだろう、と思った。
当時は船戸陽子女流二段がLPSAに移籍したばかり。山口恵梨子女流初段はデビュー3ヶ月、室谷由紀女流1級は当然アマチュアで、もしこの時「女流棋士ファンランキング」をつけていたら、島井咲緒里女流初段とトップを争っていたのではなかろうか。
手合いは角落ちにしてもらった。このころの私は、女流棋士とはどの手合いがベストか分からず、1局目はどの女流棋士にも、角落ちで指していた。
将棋は私の三間飛車に、中倉女流二段の棒金となった。中盤の入口で私が角金交換から飛車をぶつける大捌きに出て、駒落ちの手合いそのままに、私が優位に立った。
中倉女流二段も反撃に出るが、私も自身で、ホホー、と感心するような妙手順を連発して、上手王を追いつめてゆく。竜取りに構わず金銀をベタベタ打ち、必勝態勢を築いたのが以下の局面である。
上手・中倉女流二段(角落ち):1一香、1二王、1四歩、2一桂、2三歩、3三歩、4二銀、4四歩、5四歩、7四歩、7五角、7九竜、9一香、9四歩 持駒:飛、桂、歩2
下手・一公:1六歩、1九香、2二銀、2七歩、2八玉、2九桂、3二金、3六歩、3八銀、4三銀、4六歩、4七金、4九金、5六歩、6六歩、8六歩、8九桂、9六歩、9九香 持駒:金、歩
☗2二銀まで。上手はほとんど受けなしで、投了してもおかしくない。しかし中倉女流二段は少考後、☖8一飛と自陣飛車で受けた。
(女流)棋士は例外なく負けず嫌いだが、この一着には驚いた。中倉女流二段は外見に似合わず、そのケが強い、と思った。そしてその気迫に押されてか、私はグズグズの指し手を連発してしまう。参考までに、終局までの棋譜を記す。
(☖8一飛以下)☗1一銀成☖1三王☗1二金☖2四王☗4二銀不成☖3四王☗5二銀☖6六角☗5三銀成☖4五歩☗4三銀不成☖2四王☗4五歩☖1三桂☗2六香☖2五桂打☗同香☖同桂☗2六歩☖4八歩☗2五歩☖同王☗3七桂☖2四王☗2六歩 まで、一公の勝ち。
☗1一銀成が次善手。ここは☗2一金で必至だった。王手王手で上手王を上部に逃がし、☗4二銀不成がまた疑問手。ここは「成」、もしくは☗2六香なら、下手が簡単に勝っていた。本譜は☖3四王と綱渡りに逃げられ、☗5二銀と重たい銀を打つようでは、明らかに流れがおかしい。
それでも形勢が大きく開いていたので逆転には至らず、最後も鈍重な攻めで、やっと上手を投了に追い込んだのだった。
一手必至のところを、緩みに緩んで、25手もかかってしまった。これが平手の複雑な局面だったら、恐らく逆転負けを喫していただろう。
「投了は最大の悪手」と言ったのは誰だったか。私は中倉女流二段に、「どんな局面でも諦めてはいけません」と教わった気がして、その日はすこぶる満足だった。