新生LPSA芝浦サロンは昨年10月4日(月)に開席。金曜日(8日)の第1回目は、石橋幸緒天河の担当だった。
芝浦サロンの室内は白を基調としており、駒込サロンと雰囲気がよく似ている。広さだけが変わっただけ、という感じだ。
ここで芝浦サロンの基本的なシステムをおさらいしておこう。担当女流棋士は、原則的に1日1人体制。午後2時、3時30分、6時、7時30分の4回にわたり指導対局が行われ、私たちは任意の回に予約をしておく。金曜サロンでは入室した順番に指導対局の席についたから、金曜サロンのほうが自由度はあった。
JRの企画切符に例えると、今はなき「北海道ワイド周遊券」は、有効期間内ならいつ北海道に入ってもいいし、いつ北海道を出てもよかった。これが金曜サロン。ところが現在の「周遊きっぷ・北海道ゾーン」だと、きっぷ購入時に北海道に入る日と出る日を指定しなければならず、やや不便だ。こちらが芝浦サロンといえようか。
もっとも芝浦サロンは予約なしでも指導対局は可能だが、予約しておくに越したことはない。
もうひとつ芝浦サロンの大きな特徴は、女流棋士と「おかわり対局」(有料)ができることだ。たとえば2時の回で1局を終えた会員が、(指導対局に空きがあれば)3時30分、6時…と、追加対局が可能なのだ。その気になれば、1日4局指すことだって可能なのである。
ただし金曜サロンでは1日2女流棋士体制だったから、芝浦サロンで女流棋士と2回指導対局を行うと、割高になってしまう。月1万円という月極め料金も廃止になったし、旧金曜サロンを愛したものにとって、芝浦サロンのシステムは快く受け容れられるものではない。
私は3時30分の回を取っていたが、時間前に入室していたので、やや早めに指導対局を行った。
☗7六歩☖8四歩☗2六歩☖3四歩☗2五歩☖8五歩。棋は対話という。1手目(何はともあれ☗7六歩)。2手目(矢倉でも指しましょうか)。3手目(矢倉はあまり指す気がないんですよね)。4手目(じゃあ角換わり?)。5手目(横歩取りを指したい気分です)。6手目(受けて立ちましょう)。という按配だ。
というわけで、本局は横歩取りに進む。ふたりの対局では初めてだ。…☗2六飛☖2二銀☗8七歩。ここで定跡は☖4一王。いまなら☖5二王もある。しかし石橋天河は7一の銀を持ち、ちょっと逡巡しながら6二に置く。これはサービスボールがきた。
この局面、以前LPSAのスタッフ氏に教えていただいたことがある。☗3三角成から☗2一角と打って先手優勢、というものだ。これは定跡書にもよく載っている変化で、☖4二王☗3二角成☖同王☗4二金☖2一王☗2三歩、の進行は先手勝ち。
だから石橋天河は「マズかったですか」とつぶやき☖3一金と引いたが、☗4三角成と無条件に馬を作れては、早くも下手がポイントを稼いだ。
石橋天河は、夏より代表理事の座に就き、このころは多忙を極めていた。公式戦での成績もふるわず、不調をかこっていた。
将棋は2、3日勉強しなくても地力があれば勝てるのではないか、と思うのは間違いで、将棋以外の仕事で頭が満杯になると、とても将棋を考えるどころではなくなる。相対的にヨミが甘くなる。
本局、石橋天河がふらふらと☖6二銀と指してしまったのも、その弊害が出たと思う。まあ、このくらいのハンデをもらってちょうどいいのだが。
石橋天河は、私の前に来ると長考する。
「ここばかり相手にしているわけにいかないしなあ」
とつぶやきつつ、反撃の手を模索している。この辺が恐ろしい。
☗8七銀と飛車取りに立つ。ここで石橋天河は飛車を見捨て、☖3六銀と勝負に出た。こんな手があるのか! 1秒も考えなかった。これに私が飛車を取ったのが疑問だったかもしれない。☖3七銀成☗同桂☖3六歩と食いつかれて、ちょっといやな流れになってきた。
☗2一飛の王手に☖4一歩。きょうはこの局面を以下に記す。石橋天河におかれては不愉快な局面だと思うが、ご容赦いただきたい。
上手・石橋天河:1三歩、2五歩、3三桂、3六歩、4一歩、4三金、5一王、5二金、5三歩、6二銀、6三角、6四歩、7三桂、9一香、9三歩 持駒:角、歩
下手・一公:1七歩、1九香、2七銀、2八飛、3七桂、4七歩、4九金、5七歩、5九玉、6七歩、7五歩、7七桂、7八金、8六銀、9七歩、9九香 持駒:銀、香、歩3
ここで私は熟考のすえ☗3六銀と歩を払ったのだが、直後に石橋天河から☗3二銀☖4二金引☗4六香で受けなし、とご教示いただいた。これは次に☗4二香成ではなく、☗4一銀成の狙い。☗4六香に☖3二金は☗4一飛成で詰みだ。私はこの手順が見えず、☗4六香が打てなかった。☗4六香なら石橋天河は投了するつもりだったというが、実際は☖6一王と早逃げする手もあってむずかしい。
本譜は駒の損得がほとんどなくなり、悪い流れになった。しかしそこで石橋天河に短気な手が出て、いきなり私の勝勢になった。これは石橋天河、やはり絶不調だと思った。
石橋陣は金銀4枚で固めているが、「全然堅くない」(石橋天河)。これは私が、不敗の態勢になった。
「居玉同士ですねえ」
と石橋天河。
「大庭美夏先生と(私と)の将棋で、終局まで双方居玉というのがありましたよ」
と私。
97手目、☗4二金。
☖同金☗同桂成☖同王となれば、双方居玉の珍形が崩れる。
「このあたりで投げてくだされば、双方居玉の珍局面になりますよ」
と催促したら、投げてくれた。あれは中村真梨花女流二段だったか、どんなに優勢な局面でも、相手が投げてくれて初めて安堵する、という意味のことを語っていたが、まさにそうだと思った。
かくして芝浦移転第1局目は、代表理事相手に嬉しい勝利となった。
芝浦サロンの室内は白を基調としており、駒込サロンと雰囲気がよく似ている。広さだけが変わっただけ、という感じだ。
ここで芝浦サロンの基本的なシステムをおさらいしておこう。担当女流棋士は、原則的に1日1人体制。午後2時、3時30分、6時、7時30分の4回にわたり指導対局が行われ、私たちは任意の回に予約をしておく。金曜サロンでは入室した順番に指導対局の席についたから、金曜サロンのほうが自由度はあった。
JRの企画切符に例えると、今はなき「北海道ワイド周遊券」は、有効期間内ならいつ北海道に入ってもいいし、いつ北海道を出てもよかった。これが金曜サロン。ところが現在の「周遊きっぷ・北海道ゾーン」だと、きっぷ購入時に北海道に入る日と出る日を指定しなければならず、やや不便だ。こちらが芝浦サロンといえようか。
もっとも芝浦サロンは予約なしでも指導対局は可能だが、予約しておくに越したことはない。
もうひとつ芝浦サロンの大きな特徴は、女流棋士と「おかわり対局」(有料)ができることだ。たとえば2時の回で1局を終えた会員が、(指導対局に空きがあれば)3時30分、6時…と、追加対局が可能なのだ。その気になれば、1日4局指すことだって可能なのである。
ただし金曜サロンでは1日2女流棋士体制だったから、芝浦サロンで女流棋士と2回指導対局を行うと、割高になってしまう。月1万円という月極め料金も廃止になったし、旧金曜サロンを愛したものにとって、芝浦サロンのシステムは快く受け容れられるものではない。
私は3時30分の回を取っていたが、時間前に入室していたので、やや早めに指導対局を行った。
☗7六歩☖8四歩☗2六歩☖3四歩☗2五歩☖8五歩。棋は対話という。1手目(何はともあれ☗7六歩)。2手目(矢倉でも指しましょうか)。3手目(矢倉はあまり指す気がないんですよね)。4手目(じゃあ角換わり?)。5手目(横歩取りを指したい気分です)。6手目(受けて立ちましょう)。という按配だ。
というわけで、本局は横歩取りに進む。ふたりの対局では初めてだ。…☗2六飛☖2二銀☗8七歩。ここで定跡は☖4一王。いまなら☖5二王もある。しかし石橋天河は7一の銀を持ち、ちょっと逡巡しながら6二に置く。これはサービスボールがきた。
この局面、以前LPSAのスタッフ氏に教えていただいたことがある。☗3三角成から☗2一角と打って先手優勢、というものだ。これは定跡書にもよく載っている変化で、☖4二王☗3二角成☖同王☗4二金☖2一王☗2三歩、の進行は先手勝ち。
だから石橋天河は「マズかったですか」とつぶやき☖3一金と引いたが、☗4三角成と無条件に馬を作れては、早くも下手がポイントを稼いだ。
石橋天河は、夏より代表理事の座に就き、このころは多忙を極めていた。公式戦での成績もふるわず、不調をかこっていた。
将棋は2、3日勉強しなくても地力があれば勝てるのではないか、と思うのは間違いで、将棋以外の仕事で頭が満杯になると、とても将棋を考えるどころではなくなる。相対的にヨミが甘くなる。
本局、石橋天河がふらふらと☖6二銀と指してしまったのも、その弊害が出たと思う。まあ、このくらいのハンデをもらってちょうどいいのだが。
石橋天河は、私の前に来ると長考する。
「ここばかり相手にしているわけにいかないしなあ」
とつぶやきつつ、反撃の手を模索している。この辺が恐ろしい。
☗8七銀と飛車取りに立つ。ここで石橋天河は飛車を見捨て、☖3六銀と勝負に出た。こんな手があるのか! 1秒も考えなかった。これに私が飛車を取ったのが疑問だったかもしれない。☖3七銀成☗同桂☖3六歩と食いつかれて、ちょっといやな流れになってきた。
☗2一飛の王手に☖4一歩。きょうはこの局面を以下に記す。石橋天河におかれては不愉快な局面だと思うが、ご容赦いただきたい。
上手・石橋天河:1三歩、2五歩、3三桂、3六歩、4一歩、4三金、5一王、5二金、5三歩、6二銀、6三角、6四歩、7三桂、9一香、9三歩 持駒:角、歩
下手・一公:1七歩、1九香、2七銀、2八飛、3七桂、4七歩、4九金、5七歩、5九玉、6七歩、7五歩、7七桂、7八金、8六銀、9七歩、9九香 持駒:銀、香、歩3
ここで私は熟考のすえ☗3六銀と歩を払ったのだが、直後に石橋天河から☗3二銀☖4二金引☗4六香で受けなし、とご教示いただいた。これは次に☗4二香成ではなく、☗4一銀成の狙い。☗4六香に☖3二金は☗4一飛成で詰みだ。私はこの手順が見えず、☗4六香が打てなかった。☗4六香なら石橋天河は投了するつもりだったというが、実際は☖6一王と早逃げする手もあってむずかしい。
本譜は駒の損得がほとんどなくなり、悪い流れになった。しかしそこで石橋天河に短気な手が出て、いきなり私の勝勢になった。これは石橋天河、やはり絶不調だと思った。
石橋陣は金銀4枚で固めているが、「全然堅くない」(石橋天河)。これは私が、不敗の態勢になった。
「居玉同士ですねえ」
と石橋天河。
「大庭美夏先生と(私と)の将棋で、終局まで双方居玉というのがありましたよ」
と私。
97手目、☗4二金。
☖同金☗同桂成☖同王となれば、双方居玉の珍形が崩れる。
「このあたりで投げてくだされば、双方居玉の珍局面になりますよ」
と催促したら、投げてくれた。あれは中村真梨花女流二段だったか、どんなに優勢な局面でも、相手が投げてくれて初めて安堵する、という意味のことを語っていたが、まさにそうだと思った。
かくして芝浦移転第1局目は、代表理事相手に嬉しい勝利となった。