そうだ、長崎に行こう・０

毎年12月は恒例の長崎旅行である。目的はもちろん、大村線川棚駅前の喫茶店「あんでるせん」でマスターのマジックを楽しむことだ。
年頭に宣言したとおり、今年は中井広恵女流六段とごいっしょするつもりだった。これは夢物語でなく、植山悦行七段を連れてでも、川棚に行くつもりだった。
しかし結果は惨敗。可能性がまったくなかったわけではないが、結果的にそうなった。男は諦めが肝心である。来年のことはともかく、今年は私ひとりで楽しむしかなかった。
そうと決まれば「あんでるせん」に予約である。ここ数年は店内も満員状態だが、こちらは男ひとりだから、どうとでもなる。何より私は「あんでるせんで楽しむ」というイメージが出来上がっている。断られることなど露ほども考えていないのだ。
11月15日電話。奥さんが出て、今年もOKだった。翌16日、スカイマークエアラインズのネットから、行きのチケットを取る。割引料金で11,000円。あれ？　以前見たときは9,800円だった気がするが、気のせいだろうか。
その２日後、ソラシドエアで帰りのチケットも取る。11,670円。しかし会員サイトにログインしなかったので、ややめんどうなことになった。
それはともかく、これであとは長崎を楽しむのみである。…という12月９日午前０時45分、私のスマホが鳴った。私への電話は珍しいが、出るとあんでるせんのマスターからだったので、なお驚いた。こんな時間で非常識にも思えるが、私は眠っていないということを、マスターはお見通しなのだ。
何でも身内に不幸があったとかで、当日17：00からの回を、11：00の回に替えてくれ、とのことだった。長崎へは前日に入っているから、この変更は問題ない。いや本当ならお邪魔するのを遠慮すべきなのだろうが、こちらも簡単には引き下がれない事情がある。
とはいえ11時からの開催は痛い。夕方からなら昼の時間を観光に充てられるのだが、昼間にマジックショーを堪能すると、それで１日が終わってしまうからだ。しかしマスターも悲しみを堪えて営業してくれるのだ。こちらも贅沢はいえない。
この金曜日は仕事を早めに終え、羽田空港に向かった。17：55発だが、長崎空港到着は21：00である。ずいぶん時間がかかるが、神戸で乗り継ぎがあるのだ。
席は24B。右に座った女性がモデル風でドキドキしたが、それを気どられてはいけない。
スッチーは４人。鈴木環那女流二段と天童よしみを足して２で割ったような顔のスッチーや、遊井亮子似のスッチーがいた。
なかなか興味をそそられるが、スカイマークのスッチーは他社のそれとは違い、客に媚びない。制服は黒の半袖シャツでシンプルだし、髪も後ろで束ねて、そのままポニーテールにしている。他社だたらアップにしているところである。
それより何より、私は心身ともにくたびれていて、すぐ眠ってしまった。
神戸空港でいったん飛行機を降り、再搭乗する。私はさっきと同じ席だが、両隣のメンツは替わっていた。19時53分、神戸空港発。空は気流が乱れており、機内がやや揺れた。何だか気分が悪くなり、もどしそうになった。
長崎空港・21時10分着。あと５分遅れていたら、あぶないところだった。
長崎は雨だったが、それは予定のうちである。クソッ。しかも傘は置いてきていた。
諫早駅前行きのバスに乗る。きょうの宿泊は諫早である。本当は長崎駅付近で泊まりたかったが、翌日は川棚に行くから、あまり離れないほうがいい。
22時22分、定刻どおり、諫早駅前バスターミナルに着いた。ちょっと小腹がすいたが、駅前にあるSEIYUが24時間営業である。食品売り場に行くと、弁当の類が大安売りだった。おかかのおにぎりが68円。おにぎりセットが198円で、そこからさらに10％引である。〆て239円は安すぎて涙が出た。
宿は「諫早第一ホテル」。素泊まりで3,800円だが、朝食はサービスである。家庭的な雰囲気で好感が持てた。有料ビデオの設備があったが、きょうは観る時間がない。
ごちゃごちゃやって、午前２時過ぎ、床に就く。しかしあまり眠れなかった。いまの私には悩みが多すぎるのだ。本当は寝るときしか平穏が訪れないのに…。
一応７時に「起床」し、７時半に食堂（レストラン）に入る。食堂にはセーラー服の女子中学生６人と、引率と思しき女性教師がいた。
「おはようございまーす」
と女子中学生に挨拶され、動揺した私は、モゴモゴと生返事をするのみ。
しかし気分は最高である。朝食も美味しくいただいた。
部屋に戻って、現在12月15日・午前８時30分である。これから川棚に向かうとしよう。
（18日につづく）