中に入ると、年配の演者がマジックをやっていた。「大山十五世名人が…」とかやっている。将棋寄席では、ネタの中に将棋を盛り込むことが必須になっているのだ。
ところで将棋寄席といえばあっち亭こっち氏(長田衛)が一番手と決まっている。氏の軽快な落語を聞きもらしたのは痛かった。
年配の演者はアタチ稔氏(後藤稔)。いただいたプログラムには「Mr.マリックの素人弟子です」と書かれていたが、その芸風はマギー司郎の弟子といった趣であった。
私は小さくなって、最後方右の席に座った。右の塀際のベンチには、M幹事がいた。そして私のナナメ前には窪田義行六段が座った。いつになく服装が地味だが、米長邦雄永世棋聖の告別式に参列してきたのだろうか。
今回私は手ぶらで来たのだが、筆記用具を忘れてきた。ブログ用にいろいろメモをしたかったのだが、こうなったら、要所は脳裏に刻むしかない。しかしこの「忘れ物」が、後に大きな後悔になるとは思わなかった。いや、嫌な予感はあったのだ…。
ところでプログラムを見ると、将棋ペンクラブ会長・木村家べんご志氏(木村晋介)とバトルロイヤル風間氏の名前がない。ともに将棋寄席以上の予定があったのだろうが、二枚看板の欠場に、寂しさは否めない。
3番手は、第6回から参加の桂扇生。落語は「幇間腹」。ペンクラブ会員の落語もうまいが、真打ちの落語を聞くと、さすがにプロは違うと唸らされる。
続いては神谷広志七段の「辛口トーク」。聞き手は湯川恵子さん。恵子さんはピンで落語がしゃべれる実力者だけに、贅沢な配役である。神谷七段は、米長永世棋聖、加藤一二三九段らの大御所を肴に、爆笑トークを繰り広げる。それでいて泣けるパートもあり、短時間ながら中身の濃いトークであった。
仲入りでは、入場券の半券で棋書などが当たる抽選会があった。私は今年もダメ。どうも将棋寄席ではヒキが悪い。
ここで2次会の参加が募られる。私はどちらでもよかったのだが、まだ空きがあるとのことだったので、申し込んだ。参加費3,500円也。
仲入り後は、お囃子担当の鶴田やよいさん。ふだんは裏方だが、どうしてどうして彼女の演芸が絶品だった。三味線の合間のおしゃべりが、キレがあって楽しい。顔よし声よしスタイルよし。お囃子にはもったいない、いいオンナであった。
トリは、我が仏家シャベル氏(湯川博士)の「藪入り」。シャベル氏の落語を聞くのは2年ぶりだが、シャベリに格段の磨きがかかっていたのに驚いた。シャベル氏は人情話をやらせたら天下一品だ。
最後は演者が勢ぞろいし、将棋寄席恒例の3本〆で幕となった。
2次会は、歩いて5分のところにある居酒屋で行った。神谷七段夫妻、窪田六段も参加。将棋ペンクラブを応援してくださる棋士はいっぱいいるが、イベントがあるたびに参加してくれる窪田六段の精神は尊いものがある。
私は奥の方に座ったのだが、湯川幹事が来てくれた。
「おお大沢君、きょうはありがとう」
「はあ、どうも」
「そうだ大沢君、きょうのレポート書いてくれよ」
うわっ。来ましたか…。私は3年前にも「将棋ペン倶楽部」に将棋寄席のレポートを書いたことがあるが、それはどうなのだろう。だから「もういいんじゃないか?」などとは言えない。あの顔で頼まれると、断れないのだ。「2頁でいいよ。あとは彼女(写真家の岡松三三さん)の写真で何とかするから」
「……」
「3頁でもいいよ。好きなだけ。じゃあよろしく頼むよ」
「はあ」
いやー、しまった。ここにきて、筆記用具を忘れた弊害が出た。レポートをしようにも、重要な事柄はほとんど喪失してしまった。〆切りは1月末日。どうしようか…。
乾杯のあと、幹事の長田氏が、参加各者にきょうの感想を聞く。神谷七段夫妻は浜松に帰るべく席を辞していた。それでも私は、あっち亭こっち氏の落語を聞けなかったことと、神谷七段のトークが面白かったことを話した。
説明が前後するが、私のナナメ前は「近代将棋」元編集長の中野隆義氏。正面の女性は誰かと思いきや、中野氏の奥さんだった。私の左はOs氏。関東交流会などでよくお見かけするが、対局はもちろん、しゃべったこともない。名前もうろ覚えだった。
しかし鍋を囲めば何とかなるもので、2つ3つ話をした。みんな酒も入って、にぎやかな会となった。
散会は10時半。やや色気はなかったが、将棋ペンクラブならではの、楽しいクリスマスイブであった。
ところで将棋寄席といえばあっち亭こっち氏(長田衛)が一番手と決まっている。氏の軽快な落語を聞きもらしたのは痛かった。
年配の演者はアタチ稔氏(後藤稔)。いただいたプログラムには「Mr.マリックの素人弟子です」と書かれていたが、その芸風はマギー司郎の弟子といった趣であった。
私は小さくなって、最後方右の席に座った。右の塀際のベンチには、M幹事がいた。そして私のナナメ前には窪田義行六段が座った。いつになく服装が地味だが、米長邦雄永世棋聖の告別式に参列してきたのだろうか。
今回私は手ぶらで来たのだが、筆記用具を忘れてきた。ブログ用にいろいろメモをしたかったのだが、こうなったら、要所は脳裏に刻むしかない。しかしこの「忘れ物」が、後に大きな後悔になるとは思わなかった。いや、嫌な予感はあったのだ…。
ところでプログラムを見ると、将棋ペンクラブ会長・木村家べんご志氏(木村晋介)とバトルロイヤル風間氏の名前がない。ともに将棋寄席以上の予定があったのだろうが、二枚看板の欠場に、寂しさは否めない。
3番手は、第6回から参加の桂扇生。落語は「幇間腹」。ペンクラブ会員の落語もうまいが、真打ちの落語を聞くと、さすがにプロは違うと唸らされる。
続いては神谷広志七段の「辛口トーク」。聞き手は湯川恵子さん。恵子さんはピンで落語がしゃべれる実力者だけに、贅沢な配役である。神谷七段は、米長永世棋聖、加藤一二三九段らの大御所を肴に、爆笑トークを繰り広げる。それでいて泣けるパートもあり、短時間ながら中身の濃いトークであった。
仲入りでは、入場券の半券で棋書などが当たる抽選会があった。私は今年もダメ。どうも将棋寄席ではヒキが悪い。
ここで2次会の参加が募られる。私はどちらでもよかったのだが、まだ空きがあるとのことだったので、申し込んだ。参加費3,500円也。
仲入り後は、お囃子担当の鶴田やよいさん。ふだんは裏方だが、どうしてどうして彼女の演芸が絶品だった。三味線の合間のおしゃべりが、キレがあって楽しい。顔よし声よしスタイルよし。お囃子にはもったいない、いいオンナであった。
トリは、我が仏家シャベル氏(湯川博士)の「藪入り」。シャベル氏の落語を聞くのは2年ぶりだが、シャベリに格段の磨きがかかっていたのに驚いた。シャベル氏は人情話をやらせたら天下一品だ。
最後は演者が勢ぞろいし、将棋寄席恒例の3本〆で幕となった。
2次会は、歩いて5分のところにある居酒屋で行った。神谷七段夫妻、窪田六段も参加。将棋ペンクラブを応援してくださる棋士はいっぱいいるが、イベントがあるたびに参加してくれる窪田六段の精神は尊いものがある。
私は奥の方に座ったのだが、湯川幹事が来てくれた。
「おお大沢君、きょうはありがとう」
「はあ、どうも」
「そうだ大沢君、きょうのレポート書いてくれよ」
うわっ。来ましたか…。私は3年前にも「将棋ペン倶楽部」に将棋寄席のレポートを書いたことがあるが、それはどうなのだろう。だから「もういいんじゃないか?」などとは言えない。あの顔で頼まれると、断れないのだ。「2頁でいいよ。あとは彼女(写真家の岡松三三さん)の写真で何とかするから」
「……」
「3頁でもいいよ。好きなだけ。じゃあよろしく頼むよ」
「はあ」
いやー、しまった。ここにきて、筆記用具を忘れた弊害が出た。レポートをしようにも、重要な事柄はほとんど喪失してしまった。〆切りは1月末日。どうしようか…。
乾杯のあと、幹事の長田氏が、参加各者にきょうの感想を聞く。神谷七段夫妻は浜松に帰るべく席を辞していた。それでも私は、あっち亭こっち氏の落語を聞けなかったことと、神谷七段のトークが面白かったことを話した。
説明が前後するが、私のナナメ前は「近代将棋」元編集長の中野隆義氏。正面の女性は誰かと思いきや、中野氏の奥さんだった。私の左はOs氏。関東交流会などでよくお見かけするが、対局はもちろん、しゃべったこともない。名前もうろ覚えだった。
しかし鍋を囲めば何とかなるもので、2つ3つ話をした。みんな酒も入って、にぎやかな会となった。
散会は10時半。やや色気はなかったが、将棋ペンクラブならではの、楽しいクリスマスイブであった。