きのう５日に放送されたテレビ朝日系「相棒」は、サブタイトルが「棋風」で、将棋の世界が舞台だった。推理ドラマに将棋が絡むと突っこみどころ満載なのだが、今回も然り。それについてはいつか改めて述べるとして、今回はひとつだけ。
「電脳戦」で使われていた駒が安っぽい！ あれじゃあ500円の駒やぞ。もう少しいい駒を調達できなかったものか。
２日（日）は埼玉県川口市にある「大野教室」に行った。
午後１時35分ごろドアをノックすると、大野八一雄七段が迎えに出てくれた。これは珍しいことがあるものだと中に入ると、客がひとりもいない。
「Ｗさんは？」
「重役出勤です」
12月は師走というが、みんな忙しいのだろうか。
奥の部屋を覗くと、何と上野裕和五段が三面指しを行っていた。きょうのゲストらしい。大野教室は３度目の登板だ。
「はじめまして」
「あ、どうも」
上野五段には第３期マイナビ女子オープン挑戦者決定戦解説会や将棋会館道場、将棋ペンクラブ大賞贈呈式などでお見かけしているが、お話をするのは意外にも初めてであった。
上野五段は先日めでたく入籍を果たしたが、そのお祝いを述べるのも忘れ、さっそく指導対局をお願いした。
上手（角落ち）・上野裕和五段
下手・一公
△８四歩▲７六歩△８五歩▲７七角△６二銀▲８八飛△６四歩▲４八玉△６三銀▲３八玉△７二金▲６六歩△７四歩▲６八銀△９四歩▲９六歩△７三金▲６七銀△５四歩▲２八玉△４二銀▲３八銀△５三銀▲５六歩△８四金▲５九角△７三桂▲３六歩△５二玉
上野五段はいきなり△８五歩を決めてきた。大野・植山悦行両七段なら絶対に指さない手で、櫛田流といえる。
△６二銀に相当迷った。ふつうに居飛車で指せばいいのだが、▲７七角を決めているのが気に入らぬ。そこで向かい飛車に振った。しかし▲８六歩を指し切れず、ふつうの振り飛車になってしまった。
上野五段は棒金でくる。△５二玉に、私の次の一手は。
▲５八飛△４二金▲５五歩△同歩▲同飛△５四歩▲５八飛△８一飛▲２六角△４四歩▲４六歩△４三金▲３七桂△２四歩▲４五歩△２五歩▲４四角△同銀▲同歩△同金▲４八飛
私は▲５八飛と転戦した。△８四金を相手にしない手で、この金を遊び駒にできれば自然と作戦勝ちになる。
私は一歩を交換し、▲２六角から▲３七桂と突っぱる。△２四歩には▲１六歩も考えたが、私は元気よく▲４五歩と突っかけた。
先の３面指しはすべて対局を終了し、いまは１対１の対局となっている。Minamiちゃん、Kun氏と続けて来席し、少しずつメンツが揃ってきた。
当然の△２五歩に、▲４四角と切り込んだ。角銀交換の駒損だが、こちらでケンカになれば、△８四金がボケるという読みである。
△４三歩▲４五桂△６二角▲５三歩△４二玉▲３七銀△３四金▲５二銀△同銀▲同歩成△同玉▲５三歩△６三玉▲５二銀△７二玉▲４三銀成
▲４五桂と跳んで、次の▲５三銀が受けにくい。上野五段は泣きの△６二角。私は▲５三歩を利かして▲３七銀と玉のコビンを塞いだ。
▲５二銀で相手の銀を剥がし、再度の▲５三歩から▲５二銀。そして▲４三銀成としたところでは、早くも勝った気分だった。しかしここは、不成が優った。
△６五桂▲同歩△同歩▲５二歩成△７三角▲５三成銀△４七歩▲同飛△４六歩▲６二と△８三玉▲４六銀△４五金▲３七銀△３六金
まで、81手で上野五段の勝ち。
上野五段は△６五桂の非常手段できた。捨ておけば△５七桂成があるから私は▲６五同歩だが、上野五段は黙って△同歩。▲５二歩成に△７三角とのぞく。受け一方に打った角が下手陣の急所に働いてきた。
この利きがいやらしい。しかし成り駒を働かさなければしょうがないから、▲５三成銀。しかし上野五段に△４七歩～△４六歩と叩かれ、想像以上に難しい形勢なのに愕然とした。
とりあえず▲６二とを利かすが、△８三玉に指す手がない。▲４八飛では△４五金で下手負けなので▲４六銀だが、それでも△４五金と出られ困ってしまった。
▲６三成銀は△４六角▲同飛△同金で下手負け。さりとて▲５五歩と打つ気力もなく、私は▲３七銀。しかし△３六金とグイッと出られ、受けなしになってしまった。これにて投了。
な、なんだかキツネにつままれた敗戦となった。すぐに感想戦に入るが、「△６五桂が毒まんじゅう」で、取らずに別の手を指したほうがよかったらしい。そうはいっても取らねば桂成があるし、私が思ったほど形勢はよくなかったのかもしれない。
上野五段は棋士特有のギラギラしたところがなく、私も気持ちよく対局できたのだが、△６五桂の一発でひっくり返された。プロの至芸を見た思いだった。
（つづく）
「電脳戦」で使われていた駒が安っぽい！ あれじゃあ500円の駒やぞ。もう少しいい駒を調達できなかったものか。
２日（日）は埼玉県川口市にある「大野教室」に行った。
午後１時35分ごろドアをノックすると、大野八一雄七段が迎えに出てくれた。これは珍しいことがあるものだと中に入ると、客がひとりもいない。
「Ｗさんは？」
「重役出勤です」
12月は師走というが、みんな忙しいのだろうか。
奥の部屋を覗くと、何と上野裕和五段が三面指しを行っていた。きょうのゲストらしい。大野教室は３度目の登板だ。
「はじめまして」
「あ、どうも」
上野五段には第３期マイナビ女子オープン挑戦者決定戦解説会や将棋会館道場、将棋ペンクラブ大賞贈呈式などでお見かけしているが、お話をするのは意外にも初めてであった。
上野五段は先日めでたく入籍を果たしたが、そのお祝いを述べるのも忘れ、さっそく指導対局をお願いした。
上手（角落ち）・上野裕和五段
下手・一公
△８四歩▲７六歩△８五歩▲７七角△６二銀▲８八飛△６四歩▲４八玉△６三銀▲３八玉△７二金▲６六歩△７四歩▲６八銀△９四歩▲９六歩△７三金▲６七銀△５四歩▲２八玉△４二銀▲３八銀△５三銀▲５六歩△８四金▲５九角△７三桂▲３六歩△５二玉
上野五段はいきなり△８五歩を決めてきた。大野・植山悦行両七段なら絶対に指さない手で、櫛田流といえる。
△６二銀に相当迷った。ふつうに居飛車で指せばいいのだが、▲７七角を決めているのが気に入らぬ。そこで向かい飛車に振った。しかし▲８六歩を指し切れず、ふつうの振り飛車になってしまった。
上野五段は棒金でくる。△５二玉に、私の次の一手は。
▲５八飛△４二金▲５五歩△同歩▲同飛△５四歩▲５八飛△８一飛▲２六角△４四歩▲４六歩△４三金▲３七桂△２四歩▲４五歩△２五歩▲４四角△同銀▲同歩△同金▲４八飛
私は▲５八飛と転戦した。△８四金を相手にしない手で、この金を遊び駒にできれば自然と作戦勝ちになる。
私は一歩を交換し、▲２六角から▲３七桂と突っぱる。△２四歩には▲１六歩も考えたが、私は元気よく▲４五歩と突っかけた。
先の３面指しはすべて対局を終了し、いまは１対１の対局となっている。Minamiちゃん、Kun氏と続けて来席し、少しずつメンツが揃ってきた。
当然の△２五歩に、▲４四角と切り込んだ。角銀交換の駒損だが、こちらでケンカになれば、△８四金がボケるという読みである。
△４三歩▲４五桂△６二角▲５三歩△４二玉▲３七銀△３四金▲５二銀△同銀▲同歩成△同玉▲５三歩△６三玉▲５二銀△７二玉▲４三銀成
▲４五桂と跳んで、次の▲５三銀が受けにくい。上野五段は泣きの△６二角。私は▲５三歩を利かして▲３七銀と玉のコビンを塞いだ。
▲５二銀で相手の銀を剥がし、再度の▲５三歩から▲５二銀。そして▲４三銀成としたところでは、早くも勝った気分だった。しかしここは、不成が優った。
△６五桂▲同歩△同歩▲５二歩成△７三角▲５三成銀△４七歩▲同飛△４六歩▲６二と△８三玉▲４六銀△４五金▲３七銀△３六金
まで、81手で上野五段の勝ち。
上野五段は△６五桂の非常手段できた。捨ておけば△５七桂成があるから私は▲６五同歩だが、上野五段は黙って△同歩。▲５二歩成に△７三角とのぞく。受け一方に打った角が下手陣の急所に働いてきた。
この利きがいやらしい。しかし成り駒を働かさなければしょうがないから、▲５三成銀。しかし上野五段に△４七歩～△４六歩と叩かれ、想像以上に難しい形勢なのに愕然とした。
とりあえず▲６二とを利かすが、△８三玉に指す手がない。▲４八飛では△４五金で下手負けなので▲４六銀だが、それでも△４五金と出られ困ってしまった。
▲６三成銀は△４六角▲同飛△同金で下手負け。さりとて▲５五歩と打つ気力もなく、私は▲３七銀。しかし△３六金とグイッと出られ、受けなしになってしまった。これにて投了。
な、なんだかキツネにつままれた敗戦となった。すぐに感想戦に入るが、「△６五桂が毒まんじゅう」で、取らずに別の手を指したほうがよかったらしい。そうはいっても取らねば桂成があるし、私が思ったほど形勢はよくなかったのかもしれない。
上野五段は棋士特有のギラギラしたところがなく、私も気持ちよく対局できたのだが、△６五桂の一発でひっくり返された。プロの至芸を見た思いだった。
（つづく）
