行きにいっしょだった、さっきの女性4人組がいた。慌てて駆け出したりして、なんだか私が彼女らをストーカーしているように見える。…考え過ぎか。
永平寺口には、定刻より2分早い15時43分に着いた。数分の待ち合わせで、15時50分の上り列車に乗る。ここにもアテンダントさんがいた。日中はすべての列車に乗車しているようで、改めてうれしいサービスである。
乗客のひとりが、アテンダントさんから切符を購入している。アテンダントさんが車内補充券にパンチしてくれるやつだ。記念用に持ち帰るつもりだろう。私はその真似はしなかった。
16時09分、本日2度目の福井口で下車。これで3人目のアテンダントさんともお別れである。アテンダントさん、ありがとう。皆さまの乗車は大いに癒しになりました。
5分の待ち合わせで三たび三国芦原線に乗り、2つ先の田原町で下車した。ここは福井鉄道の乗り換え駅なのである。大都市以外で私鉄電車同士の乗り換えがあるのは珍しいと思う。
福井鉄道は福武線だが、かつては鯖浦線、南越線という路線もあった。しかしモータリゼーションのあおりを受け、どちらも30年以上前に廃止になっている。
4分の待ち合わせの16時22分、福井鉄道に乗車。処女地を行くのは気分がいい。
ところで今回の乗り継ぎは、事前に調べていたとはいえ、いずれも数分の待ち合わせで済み、神懸かり的だった。しかも、どれも1分の遅れもないのが凄い。改めて私は、バスや鉄道のダイヤの正確さに舌を巻く。世界に誇れるこの「神業」が、日本の鉄道ミステリーを支えているのだ。
さて福井鉄道福武線は、田原町~越前武生間21.7kmを1時間余りで結んでいる。私の乗った列車は斬新なデザインで、たとえば車両の継ぎ目にあるドアの形が円くなっていた。さらにその上部には、テレビモニターまで設置されていた。福井鉄道だってほかの中小私鉄と同様赤字のはずだが、こうして新造車両を投入しているのは頼もしい。
鉄道から車窓を眺めるのは楽しいが、冬の陽が落ちるのは早い。まだ午後4時台だが、早くも黄昏時である。
列車は専用軌道から併用軌道に移る。ここでひとつ問題がある。福井鉄道の路線図を見ると、田原町から2つ先の市役所前から、線路は福井駅前駅にチョロッと分岐しているのだが、この列車は福井駅前を通るのかという問題である。そのまま真っ直ぐ行かれたら、全線乗車が叶わない。
と、列車は市役所前に着いたあと、軌道を変えて福井駅前に乗り入れ、今度はバックして元の軌道に戻った。ちょっと、福井駅前に顔を出しました、という感じだった。なかなかおもしろい動きで、これで全線乗車は時間の問題となった。
列車は大道路を走ったかと思うと、人家の塀すれすれを縫うように走ったりして、なかなか愉快だ。遊園地の豆汽車に乗っている趣もあり、これで400円は安いと思った。
定刻を1分遅れの17時29分、列車は越前武生に着いた。これで福井鉄道も全線完乗となった。
福井~越前武生間は、北陸鉄道が並行して走っている。次は北陸本線に乗り換え、今夜宿泊予定の大垣までJRを乗り継ぐ予定だ。
しかしその前に夕食である。JR武生駅前に食堂があったので、入る。
席に着くと、ポスターが目に入った。「武生に来たらボルガライス」のコピーとともに、幕末の志士を思わせるオールバックの男性が描かれていた。よく見ると、このタッチは漫画家の池上遼一である。なぜに池上遼一!? と思うが、氏が武生の出身なのだろうか。
メニューを見るが、ボルガライスとは、ライスの上にオムレツが乗り、その上にトンカツが乗り、その上にお店特製のソースがかかっているものを云うらしい。
まさに「秘密のケンミンショー」に取り上げられてもおかしくない名物だが、北陸最後の食事は、さすがに生魚を食べたいところ。さんざん迷ったが、私は中にぎり寿司(1,500円)と、サーモンの押し寿司(500円)を頼んだ。ボルガライスはまたの機会である。
にぎりは、鮑?、カニ、マグロ、サーモン、イクラ、甘えび、カンパチなど8貫。味は平均的というか、もちろん美味しかったのだが、特筆すべきはサーモンの押し寿司で、トロのようにとろけるようで、美味かった。6貫で500円は本当に安かった。
店を出て、私は武生駅で、大垣までの乗車券を買う。今回の旅行では「青春18きっぷ」を利用しているが、1日あたりの料金は2,300円である。ところがここから大垣までは1,890円にしかならない。まあ多少の損を承知で1日ぶんを使用しても構わないのだが、正月に佐野厄除け大師へ日帰り旅行をする手もあるし、ここは1日ぶんを温存することにしたのである。
18時36分の北陸本線に乗る。車内は適当に乗客がおり、乗り換えの敦賀までは30分余りだったので、私はそのまま立って行った。
敦賀着19時09分。次の長浜行きは43分の待ち合わせである。
ところでここまでの道中、いくつかの店で目に付いた名称があった。「水ようかん」である。あるメーカーが作っているもので、福井ではこれが有名らしい。私は改札口外のキオスクでそれを探すが、なかった。
こうなると意地でも欲しくなる。私は駅前の商店街で水ようかんを求めるが、扱ってないとか売り切れたとか、そんなのばかりだ。
半分諦めて駅に戻り、もう一度キオスクで探すと、あった。私はありがたく2折(600円×2)を求め、ついでに「あん入り羽二重餅」(12枚入り・890円)も買った。
ここからは大垣に一直線である。敦賀からは内陸部に入り、ついに帰路の雰囲気である。が、周りは漆黒の闇で、よく分からない。
終点長浜着は20時35分。長浜駅の近くには、日本最古の駅舎「旧長浜駅」があり、鉄道ファンなら一度は訪れたいところだが、今回は素通りせざるを得ない。
8分の待ち合わせで、米原行きに乗る。米原にはわずか10分で着いた。ここで東海道本線上りに乗り換える。これがきょうのラストランナーとなる。
21時02分米原発、21時34分大垣着。きょうの宿は「Best inn大垣」である。これも例のアンケート記入作業により、いくらか安い宿泊料金(3,800円)になっている。
408号室に入ると、けっこうオシャレな内装だった。最近は部屋に入ると、やることが決まっている。私はリュックの中を探す。…うん? ない。私は中の荷物をぶちまけた。
…あれ? …ない…。…ない!! やっぱり、ない!! どこかに、落としたか!?
(つづく)
永平寺口には、定刻より2分早い15時43分に着いた。数分の待ち合わせで、15時50分の上り列車に乗る。ここにもアテンダントさんがいた。日中はすべての列車に乗車しているようで、改めてうれしいサービスである。
乗客のひとりが、アテンダントさんから切符を購入している。アテンダントさんが車内補充券にパンチしてくれるやつだ。記念用に持ち帰るつもりだろう。私はその真似はしなかった。
16時09分、本日2度目の福井口で下車。これで3人目のアテンダントさんともお別れである。アテンダントさん、ありがとう。皆さまの乗車は大いに癒しになりました。
5分の待ち合わせで三たび三国芦原線に乗り、2つ先の田原町で下車した。ここは福井鉄道の乗り換え駅なのである。大都市以外で私鉄電車同士の乗り換えがあるのは珍しいと思う。
福井鉄道は福武線だが、かつては鯖浦線、南越線という路線もあった。しかしモータリゼーションのあおりを受け、どちらも30年以上前に廃止になっている。
4分の待ち合わせの16時22分、福井鉄道に乗車。処女地を行くのは気分がいい。
ところで今回の乗り継ぎは、事前に調べていたとはいえ、いずれも数分の待ち合わせで済み、神懸かり的だった。しかも、どれも1分の遅れもないのが凄い。改めて私は、バスや鉄道のダイヤの正確さに舌を巻く。世界に誇れるこの「神業」が、日本の鉄道ミステリーを支えているのだ。
さて福井鉄道福武線は、田原町~越前武生間21.7kmを1時間余りで結んでいる。私の乗った列車は斬新なデザインで、たとえば車両の継ぎ目にあるドアの形が円くなっていた。さらにその上部には、テレビモニターまで設置されていた。福井鉄道だってほかの中小私鉄と同様赤字のはずだが、こうして新造車両を投入しているのは頼もしい。
鉄道から車窓を眺めるのは楽しいが、冬の陽が落ちるのは早い。まだ午後4時台だが、早くも黄昏時である。
列車は専用軌道から併用軌道に移る。ここでひとつ問題がある。福井鉄道の路線図を見ると、田原町から2つ先の市役所前から、線路は福井駅前駅にチョロッと分岐しているのだが、この列車は福井駅前を通るのかという問題である。そのまま真っ直ぐ行かれたら、全線乗車が叶わない。
と、列車は市役所前に着いたあと、軌道を変えて福井駅前に乗り入れ、今度はバックして元の軌道に戻った。ちょっと、福井駅前に顔を出しました、という感じだった。なかなかおもしろい動きで、これで全線乗車は時間の問題となった。
列車は大道路を走ったかと思うと、人家の塀すれすれを縫うように走ったりして、なかなか愉快だ。遊園地の豆汽車に乗っている趣もあり、これで400円は安いと思った。
定刻を1分遅れの17時29分、列車は越前武生に着いた。これで福井鉄道も全線完乗となった。
福井~越前武生間は、北陸鉄道が並行して走っている。次は北陸本線に乗り換え、今夜宿泊予定の大垣までJRを乗り継ぐ予定だ。
しかしその前に夕食である。JR武生駅前に食堂があったので、入る。
席に着くと、ポスターが目に入った。「武生に来たらボルガライス」のコピーとともに、幕末の志士を思わせるオールバックの男性が描かれていた。よく見ると、このタッチは漫画家の池上遼一である。なぜに池上遼一!? と思うが、氏が武生の出身なのだろうか。
メニューを見るが、ボルガライスとは、ライスの上にオムレツが乗り、その上にトンカツが乗り、その上にお店特製のソースがかかっているものを云うらしい。
まさに「秘密のケンミンショー」に取り上げられてもおかしくない名物だが、北陸最後の食事は、さすがに生魚を食べたいところ。さんざん迷ったが、私は中にぎり寿司(1,500円)と、サーモンの押し寿司(500円)を頼んだ。ボルガライスはまたの機会である。
にぎりは、鮑?、カニ、マグロ、サーモン、イクラ、甘えび、カンパチなど8貫。味は平均的というか、もちろん美味しかったのだが、特筆すべきはサーモンの押し寿司で、トロのようにとろけるようで、美味かった。6貫で500円は本当に安かった。
店を出て、私は武生駅で、大垣までの乗車券を買う。今回の旅行では「青春18きっぷ」を利用しているが、1日あたりの料金は2,300円である。ところがここから大垣までは1,890円にしかならない。まあ多少の損を承知で1日ぶんを使用しても構わないのだが、正月に佐野厄除け大師へ日帰り旅行をする手もあるし、ここは1日ぶんを温存することにしたのである。
18時36分の北陸本線に乗る。車内は適当に乗客がおり、乗り換えの敦賀までは30分余りだったので、私はそのまま立って行った。
敦賀着19時09分。次の長浜行きは43分の待ち合わせである。
ところでここまでの道中、いくつかの店で目に付いた名称があった。「水ようかん」である。あるメーカーが作っているもので、福井ではこれが有名らしい。私は改札口外のキオスクでそれを探すが、なかった。
こうなると意地でも欲しくなる。私は駅前の商店街で水ようかんを求めるが、扱ってないとか売り切れたとか、そんなのばかりだ。
半分諦めて駅に戻り、もう一度キオスクで探すと、あった。私はありがたく2折(600円×2)を求め、ついでに「あん入り羽二重餅」(12枚入り・890円)も買った。
ここからは大垣に一直線である。敦賀からは内陸部に入り、ついに帰路の雰囲気である。が、周りは漆黒の闇で、よく分からない。
終点長浜着は20時35分。長浜駅の近くには、日本最古の駅舎「旧長浜駅」があり、鉄道ファンなら一度は訪れたいところだが、今回は素通りせざるを得ない。
8分の待ち合わせで、米原行きに乗る。米原にはわずか10分で着いた。ここで東海道本線上りに乗り換える。これがきょうのラストランナーとなる。
21時02分米原発、21時34分大垣着。きょうの宿は「Best inn大垣」である。これも例のアンケート記入作業により、いくらか安い宿泊料金(3,800円)になっている。
408号室に入ると、けっこうオシャレな内装だった。最近は部屋に入ると、やることが決まっている。私はリュックの中を探す。…うん? ない。私は中の荷物をぶちまけた。
…あれ? …ない…。…ない!! やっぱり、ない!! どこかに、落としたか!?
(つづく)