最近は部屋に入ると、まずスマホの充電を行う。この習慣が我ながらイヤだが、そのスマホの充電ケーブルが、なくなっていた。
どこで落としたのか…。今朝はもちろんあった。ホテルからの出発間際、ぎりぎりまで充電しようと、ケーブルを使ったのだから…。いま思えば、それがマズかった。こんなもん、早くリュックの底深くに沈めておけばよかったのだ。
私はきょうの行動を思い出す。朝の立ち寄り温泉、郵便局、食堂、駅の待合室、列車内、永平寺…。そのどこかで落としたに違いない。一刻も早くそちらに問い合わせしたいが、時刻は午後10時にならんとしている。もうきょうの「捜索」は無理である。
最後に重大な難題を抱え、北陸旅行最後の夜は終わった。
翌31日(火)。北陸旅行と2013年、最後の日である。
朝、昨晩コンビニで買った菓子パンで朝食とし、ホテルをチェックアウトする。
ここ大垣駅は、鉄道マニアには切っても切れない駅である。東京駅から出発した、古くは普通夜行列車345M、新しくは「快速ムーンライトながら」の終着駅が、大垣だったからだ。「青春18きっぷ」利用の旅人はさらに西を目指し、安い料金で旅行を楽しんだのだ。しかしその「ムーンライトながら」も、いまは季節列車になってしまった。
大垣からは樽見鉄道(旧国鉄樽見線)も出ていて、これは乗車したいが、きょうは「NHK紅白歌合戦」を観なければならず、とても足を伸ばす時間がない。どこかで観光はできたとしても、それは途中下車駅の周辺に限られるだろう。
改札で「青春18きっぷ」に今旅行3個目のスタンプを捺してもらい、08時09分発の豊橋行き・特別快速に乗った。豊橋までは快速がビュンビュン走っていて、爽快である。大晦日の午前だから乗客もあまりいない。豊橋の近くになったころは、ガラガラになっていた。09時36分、豊橋着。
豊橋からは浜松行きに乗る。浜松10時25分着。4分の待ち合わせで、興津行きに乗り換える。しかし、さっき客がいない、と考えたのは誤りで、こちらは多くの客が乗っていた。浜松と静岡を結んでいるのだから当然か。私は立つよりなかった。
静岡へは定刻1分遅れの11時43分に着いた。ここで熱海行きに乗り換える。興津まで乗っても、どっちみち後続の列車に乗らねばならぬから、静岡からの始発列車に乗ったほうが得策である。
熱海には、定刻を2分遅れの13時09分に着いた。ここで昼食を摂るために途中下車する。なお、郵便局は、大晦日は休みである。
昨晩は自分が訪れた場所を前もって調べておいたので、この時間を利用して、ほうぼうへ連絡をする。しかしどこも、充電ケーブルはない、とのことだった。
もっとも、仮に見つかったところで、それを東京まで着払いで送ってもらったら、結構な額になってしまう。もう、代わりを買うのが賢明なのだ。ただ、2年余り使った充電ケーブルと「突然のお別れ」になってしまったのがつらかった。
大晦日ながら、熱海はものすごい人出だった。もうおせち料理はできているだろうに、みなはこれ以上何を買うのだろう。生魚でも買って、おせち料理をより豪勢にするということだろうか。
それよりも食事である。が、お店はどこも満杯だ。私はアーケードの商店街を抜け、右手に降りる。規模の大きな回転寿司屋があったので入るが、店内は満員である。しかも私は裏手から入ったようで、従業員が私に気づかない。こりゃダメだと、私は店を出た。
道の反対側に出ると、和定食屋があった。ランチ天丼が1,200円はちょっとアレだが、思い切って入ってみた。
ところが、天丼は売り切れとのこと。虫の居所が悪いときなら、「ご縁がありませんでしたネ」と店を出るところだが、ちょっと腹が減りすぎている。
海鮮丼が同額であったのでこちらを頼む。きょうは生物を食べる気分ではないが、やむを得ない。
ただ、あまり期待はできなかった。何というかこう、カウンターに立つ大将の覇気がなかったからである。
出された海鮮丼は果たして、白身魚とマグロとしらすが乗っているだけという、貧相なものだった(失礼)。シャリも少なく、1,200円でこの内容は、期待外れと言わざるを得なかった。
どうにも消化不良だったので、近くの蕎麦屋に入って口直しである。しかし、せいろ700円および店の応対は、これも期待外れと言わざるを得なかった。
もうよい、ここからは家に帰るのみである。14時35分の東京行きに乗る。青春18きっぷでは、グリーン料金の額だけでグリーン車に乗れるが、昼食でつまらぬ出費をしたので、今回は控える。
小田原で特別快速の連絡があったので、こちらに乗り換えた。ところがこれは、横浜で左に岐れ、高崎まで行く列車だった。
私は横浜で降り、後続の列車(東京行き)を待つ。ところがこれが、さっき私が乗った14時35分熱海発の列車で、クサッタ。こんなことなら、最初から熱海でグリーン車に乗り、優雅な旅をやればよかったのだ。
それもこれも、スマホで列車検索をしている弊害である。複数の列車を比較できないからこうなる。やはり俯瞰的に見る時刻表が分かりやすいが、荷物になるので、どうしても携行をためらってしまう。
16時16分、新橋着。最終ランナーの京浜東北線に乗り換え、これで北陸旅行は終了である。顧みて、旅行前は漠然とした行程しか描いていなかったが、まあまあおもしろい旅だったと思う。
ああもうひとつ、充電ケーブルを買わなければならない。しかし大晦日に、ケータイショップが開いているだろうか。しかし我がスマホには電池もほとんど残ってないし、もし店が閉まっていたら、正月はスマホなしで過ごすことになってしまう。それはやや困る。
最寄駅を降り、私はショップに向かう。
…あ、あああっ!!
(おわり)
どこで落としたのか…。今朝はもちろんあった。ホテルからの出発間際、ぎりぎりまで充電しようと、ケーブルを使ったのだから…。いま思えば、それがマズかった。こんなもん、早くリュックの底深くに沈めておけばよかったのだ。
私はきょうの行動を思い出す。朝の立ち寄り温泉、郵便局、食堂、駅の待合室、列車内、永平寺…。そのどこかで落としたに違いない。一刻も早くそちらに問い合わせしたいが、時刻は午後10時にならんとしている。もうきょうの「捜索」は無理である。
最後に重大な難題を抱え、北陸旅行最後の夜は終わった。
翌31日(火)。北陸旅行と2013年、最後の日である。
朝、昨晩コンビニで買った菓子パンで朝食とし、ホテルをチェックアウトする。
ここ大垣駅は、鉄道マニアには切っても切れない駅である。東京駅から出発した、古くは普通夜行列車345M、新しくは「快速ムーンライトながら」の終着駅が、大垣だったからだ。「青春18きっぷ」利用の旅人はさらに西を目指し、安い料金で旅行を楽しんだのだ。しかしその「ムーンライトながら」も、いまは季節列車になってしまった。
大垣からは樽見鉄道(旧国鉄樽見線)も出ていて、これは乗車したいが、きょうは「NHK紅白歌合戦」を観なければならず、とても足を伸ばす時間がない。どこかで観光はできたとしても、それは途中下車駅の周辺に限られるだろう。
改札で「青春18きっぷ」に今旅行3個目のスタンプを捺してもらい、08時09分発の豊橋行き・特別快速に乗った。豊橋までは快速がビュンビュン走っていて、爽快である。大晦日の午前だから乗客もあまりいない。豊橋の近くになったころは、ガラガラになっていた。09時36分、豊橋着。
豊橋からは浜松行きに乗る。浜松10時25分着。4分の待ち合わせで、興津行きに乗り換える。しかし、さっき客がいない、と考えたのは誤りで、こちらは多くの客が乗っていた。浜松と静岡を結んでいるのだから当然か。私は立つよりなかった。
静岡へは定刻1分遅れの11時43分に着いた。ここで熱海行きに乗り換える。興津まで乗っても、どっちみち後続の列車に乗らねばならぬから、静岡からの始発列車に乗ったほうが得策である。
熱海には、定刻を2分遅れの13時09分に着いた。ここで昼食を摂るために途中下車する。なお、郵便局は、大晦日は休みである。
昨晩は自分が訪れた場所を前もって調べておいたので、この時間を利用して、ほうぼうへ連絡をする。しかしどこも、充電ケーブルはない、とのことだった。
もっとも、仮に見つかったところで、それを東京まで着払いで送ってもらったら、結構な額になってしまう。もう、代わりを買うのが賢明なのだ。ただ、2年余り使った充電ケーブルと「突然のお別れ」になってしまったのがつらかった。
大晦日ながら、熱海はものすごい人出だった。もうおせち料理はできているだろうに、みなはこれ以上何を買うのだろう。生魚でも買って、おせち料理をより豪勢にするということだろうか。
それよりも食事である。が、お店はどこも満杯だ。私はアーケードの商店街を抜け、右手に降りる。規模の大きな回転寿司屋があったので入るが、店内は満員である。しかも私は裏手から入ったようで、従業員が私に気づかない。こりゃダメだと、私は店を出た。
道の反対側に出ると、和定食屋があった。ランチ天丼が1,200円はちょっとアレだが、思い切って入ってみた。
ところが、天丼は売り切れとのこと。虫の居所が悪いときなら、「ご縁がありませんでしたネ」と店を出るところだが、ちょっと腹が減りすぎている。
海鮮丼が同額であったのでこちらを頼む。きょうは生物を食べる気分ではないが、やむを得ない。
ただ、あまり期待はできなかった。何というかこう、カウンターに立つ大将の覇気がなかったからである。
出された海鮮丼は果たして、白身魚とマグロとしらすが乗っているだけという、貧相なものだった(失礼)。シャリも少なく、1,200円でこの内容は、期待外れと言わざるを得なかった。
どうにも消化不良だったので、近くの蕎麦屋に入って口直しである。しかし、せいろ700円および店の応対は、これも期待外れと言わざるを得なかった。
もうよい、ここからは家に帰るのみである。14時35分の東京行きに乗る。青春18きっぷでは、グリーン料金の額だけでグリーン車に乗れるが、昼食でつまらぬ出費をしたので、今回は控える。
小田原で特別快速の連絡があったので、こちらに乗り換えた。ところがこれは、横浜で左に岐れ、高崎まで行く列車だった。
私は横浜で降り、後続の列車(東京行き)を待つ。ところがこれが、さっき私が乗った14時35分熱海発の列車で、クサッタ。こんなことなら、最初から熱海でグリーン車に乗り、優雅な旅をやればよかったのだ。
それもこれも、スマホで列車検索をしている弊害である。複数の列車を比較できないからこうなる。やはり俯瞰的に見る時刻表が分かりやすいが、荷物になるので、どうしても携行をためらってしまう。
16時16分、新橋着。最終ランナーの京浜東北線に乗り換え、これで北陸旅行は終了である。顧みて、旅行前は漠然とした行程しか描いていなかったが、まあまあおもしろい旅だったと思う。
ああもうひとつ、充電ケーブルを買わなければならない。しかし大晦日に、ケータイショップが開いているだろうか。しかし我がスマホには電池もほとんど残ってないし、もし店が閉まっていたら、正月はスマホなしで過ごすことになってしまう。それはやや困る。
最寄駅を降り、私はショップに向かう。
…あ、あああっ!!
(おわり)