きのうは大山康晴十五世名人の受けの妙技を紹介した。が、名人も人の子。ときにはヘンテコな将棋も指してしまうわけである。きょうは、大山十五世名人がちょっとしくじった将棋を紹介する。
昭和51年11月17日
第3回名将戦・決勝三番勝負第1局
先手:棋聖 大山康晴
後手:八段 有吉道夫
▲7六歩△8四歩▲7八銀△3四歩▲6六歩△6二銀▲6八飛△4二玉▲4八玉△3二玉▲3八玉△1四歩▲1六歩△5四歩▲2八玉△5三銀▲6七銀△4二銀上▲3八銀△3五歩
▲4六歩△3三銀▲5八金左△5二金右▲2六歩△3四銀▲2七銀△4四歩▲5六銀△8五歩▲7七角△7四歩▲4七金△7五歩▲同歩△7二飛▲6五歩△7五飛▲3六歩△同歩
▲3八飛△8六歩▲同歩△5五歩▲7六歩△同飛▲6七銀△7四飛▲3六銀△4三銀▲7六歩△3四歩▲5六歩△同歩▲同金△7三桂▲6六金△8四飛▲5六銀△4二金上
▲5八飛△5五歩▲7五金△5六歩▲8四金△6五桂▲6六角△5七銀▲同角△同歩成▲3八飛△5六角▲3七飛△8九角成▲8一飛△5六と▲3九飛△4六と▲2七銀△4五馬
▲3六歩△5七桂成▲2五歩△5一歩▲2六銀打△4七と▲1七玉△4六馬▲3五歩△4五歩
まで、90手で有吉八段の勝ち。
名将戦は、かつて週刊文春に掲載されていた、全棋士参加の公式戦。本局はその決勝戦だから、けっこうな勝負であった。
その第1局、大山は四間飛車に振る。有吉は玉を固めて猛烈に攻める棋風。本局は玉頭位取りに舵を取った。
大山は▲3八飛と袖飛車に振り直す。大山の袖飛車は、対棒銀の急戦などにも用いられたが、ほかに指す棋士はおらず、大山独特の作戦だった。
大山55手目に▲5六同金と取り金銀バラバラだが、大山はときどきこんな形を平気で指していた。
さて62手目の△5五歩が本局のハイライト。ここで大山は▲7五金と出たが、これが一局を棒に振った大悪手。有吉に黙って△5六歩と銀を取られ、大山は予定どおり飛車を取ったが、この取引は、大事な金がそっぽに行ったうえに後手を引き、おもしろくなかった。
有吉、勇躍△6五桂と角取りに跳ね、私だったらバカバカしくて、この時点で投了しているところ。
もっとも大山だって以下は指してみたにすぎず、90手目、△4五歩と角道を開けられたところで投了した。
続く第2局も有吉が勝ち、同棋戦初優勝となった。
強者と対戦するときは、その人の敗戦譜を並べると自信がつく、は私の持論である。
昭和51年11月17日
第3回名将戦・決勝三番勝負第1局
先手:棋聖 大山康晴
後手:八段 有吉道夫
▲7六歩△8四歩▲7八銀△3四歩▲6六歩△6二銀▲6八飛△4二玉▲4八玉△3二玉▲3八玉△1四歩▲1六歩△5四歩▲2八玉△5三銀▲6七銀△4二銀上▲3八銀△3五歩
▲4六歩△3三銀▲5八金左△5二金右▲2六歩△3四銀▲2七銀△4四歩▲5六銀△8五歩▲7七角△7四歩▲4七金△7五歩▲同歩△7二飛▲6五歩△7五飛▲3六歩△同歩
▲3八飛△8六歩▲同歩△5五歩▲7六歩△同飛▲6七銀△7四飛▲3六銀△4三銀▲7六歩△3四歩▲5六歩△同歩▲同金△7三桂▲6六金△8四飛▲5六銀△4二金上
▲5八飛△5五歩▲7五金△5六歩▲8四金△6五桂▲6六角△5七銀▲同角△同歩成▲3八飛△5六角▲3七飛△8九角成▲8一飛△5六と▲3九飛△4六と▲2七銀△4五馬
▲3六歩△5七桂成▲2五歩△5一歩▲2六銀打△4七と▲1七玉△4六馬▲3五歩△4五歩
まで、90手で有吉八段の勝ち。
名将戦は、かつて週刊文春に掲載されていた、全棋士参加の公式戦。本局はその決勝戦だから、けっこうな勝負であった。
その第1局、大山は四間飛車に振る。有吉は玉を固めて猛烈に攻める棋風。本局は玉頭位取りに舵を取った。
大山は▲3八飛と袖飛車に振り直す。大山の袖飛車は、対棒銀の急戦などにも用いられたが、ほかに指す棋士はおらず、大山独特の作戦だった。
大山55手目に▲5六同金と取り金銀バラバラだが、大山はときどきこんな形を平気で指していた。
さて62手目の△5五歩が本局のハイライト。ここで大山は▲7五金と出たが、これが一局を棒に振った大悪手。有吉に黙って△5六歩と銀を取られ、大山は予定どおり飛車を取ったが、この取引は、大事な金がそっぽに行ったうえに後手を引き、おもしろくなかった。
有吉、勇躍△6五桂と角取りに跳ね、私だったらバカバカしくて、この時点で投了しているところ。
もっとも大山だって以下は指してみたにすぎず、90手目、△4五歩と角道を開けられたところで投了した。
続く第2局も有吉が勝ち、同棋戦初優勝となった。
強者と対戦するときは、その人の敗戦譜を並べると自信がつく、は私の持論である。