3月20日(日)、東京府中の「第9回武蔵の国・府中けやきカップ・女流棋士1dayトーナメント」に出かけた。
会場はおなじみの「ルミエール府中」。開場は午前10時、開会式は10時30分。新宿から準特急に乗れば10時11分に府中に着く。けやきカップの観戦は5年ぶりだが、府中からはすぐ着いた記憶があるので、迷うことはあるまい。対局前の渡部愛女流初段に激励でもできればラッキーと思った。
ところが車中でスマホを繰ると、会場は東府中から徒歩7分とのこと。私は怪訝に思ったが、従ってみる。調布で準特急を降り、各駅停車に乗り換えた。
現地に着くと、そこは「府中の森芸術劇場」で、全く別の建物だった。私がどこかで、別の案内を見てしまったらしい。私は時々、こういうポカをやる。
ここからならルミエール府中まで歩いていったほうがいい。しかし盛大な遅れで、10時30分の入場は難しくなった。
その後も道に迷って、入場したのは10時44分。そういえばこの数分前、とある道で多くのオッサンとすれ違ったが、彼らはここを目指していたのだ。
1階の入口を通ると、多くの小学生が将棋を指していた。「けやきキッズ将棋団体戦」だ。
東京の外れ(失礼)の府中でこれだけの人数が集まるとは、すごい。
そして奥のステージ上では、鹿野圭生女流二段と渡部女流初段の対局が始まっていた。解説は中座真七段、聞き手は蛸島彰子女流五段。席は多く用意され、五分くらいの着席率だった。
入場料は無料。世知辛い世の中で、この値段設定は涙が出るほどありがたい。今回も指導対局が用意されているが(これは有料)、これを受けて売り上げに貢献したいと思う。
私は受付に出向き、パンフレットをいただく。
優勝者予想クイズの投票用紙が入っており、締切が11時だったので、渡部女流初段に○を付けて投票した。中倉宏美女流二段の筋もあるが、ここはまあ、この一手であろう。
他には、同イベント名物・懸賞詰将棋があった。問題は全部で3つ。地元在住の岡本眞一郎氏の労作で、詰め上がりがあぶりだしになるのだ。
それで思い出すのが5年前だ。この時も私は解答したが、1問だけどうしても分からず、途中までの手順を書いて投函した。ところが最後の抽選で、私が全問正解者として当たってしまった。
賞品は岡本氏と中倉姉妹の揮毫が入った詰将棋本だったが、私は事情を話し、返納を申し出た。
だが岡本氏は「(全題正解でなくても)解いてくれたんだから、それでいいです」と優しいお言葉。だが私はそれでも返納した。当時の私は、バカ正直だったのである。
今回こそ全問正解して、岡本氏の「挑戦」に応えたい。私は眼前の対局観戦もそこそこに、解答にチカラを入れる。
(氏に了承は得ていないのだが、その作品をここに掲げる。あまりにも名作なので、1人でも多くの読者に鑑賞してもらいたい。正解手順は書きません)
鹿野―渡部戦は、大方の予想通り、鹿野女流二段の四間飛車に、渡部女流初段の居飛車穴熊になっていた。
中盤までは鹿野女流二段も十分の形勢に見えたが、相手は穴熊だからまだまだだ。
私は詰将棋の第1問を解いた。上で「あぶりだし」と書いたが、岡本眞一郎氏といえば「ナラズの岡本、岡本のナラズ」で、これも解図のヒントになる。なお詰め上がり図は、ある数字になった。
第1図で鹿野女流二段は▲7三歩成。中座七段は「堂々とした手です」と解説するが、渡部女流初段は手順に△8六飛と飛び出し、悪くないはずだ。
以下、渡部女流初段が爽快に収束した。
感想戦。第1図では▲4四歩がよかったらしい。以下△同歩▲4三歩△同金左▲同成銀△同飛▲5四角で勝負だった。
ともあれ渡部女流初段、まずは1勝である。
ここで昼休憩。1回目の指導対局は午後1時からで、受付は12時から。もっとも今は詰将棋で頭がいっぱいで指導対局どころではないのだが、一応申し込んでおいた。
駅前に出て食事処を探すが、これといったところがない。詰将棋の解答の締切は午後3時である。正直、食事をする時間すら惜しい。
私はとある複合施設に入り、ベンチに座って詰将棋を解く。もう、昼食は見送りだ。
帰路、自販機で缶コーヒーを買い、そこでちびちびやりながら、やはり詰将棋を解く。我ながら奇怪な行動ではある。
会場に戻る。懐かしい人の姿があったが、名前を失念したので、聞く。
「Kubです」
「おおKub君。久しぶりだねえ」
しばらくおしゃべりしたが、Kub君が販売コーナーの向こう側に入っていく。どうもKub君は、スタッフとして動いているようだった。
指導対局の席には、大庭美樹女流初段の名前があった。
島井咲緒里女流二段に声を掛けられた。実は鹿野―渡部戦と同時間帯に別所で島井―大庭戦があった。この状況から考えるに、島井女流二段が勝ったのだろう。
「今日は仕事の帰りでツか」
相変わらずかわいらしい。
「いえいえ、昨日女流棋士会のイベントに行ったんですけど、ちょっと消化不良がありまして…。今日はこのためだけに来ましたよ」
「あっ、そうなんでツか。スーツ姿だから…」
「こういう場だから正装で来なけりゃと思って」
「ああ…気軽に着てくだツァイよー」
咲緒里スマイルに触れられて、今日ここに来てよかったと思った。
席上対局は、準決勝1、蛸島女流五段―渡部女流初段だ。
指導対局は、鹿野女流二段と大庭女流初段の3面指し。私は大庭女流初段に教えていただくことになった。
(つづく)
会場はおなじみの「ルミエール府中」。開場は午前10時、開会式は10時30分。新宿から準特急に乗れば10時11分に府中に着く。けやきカップの観戦は5年ぶりだが、府中からはすぐ着いた記憶があるので、迷うことはあるまい。対局前の渡部愛女流初段に激励でもできればラッキーと思った。
ところが車中でスマホを繰ると、会場は東府中から徒歩7分とのこと。私は怪訝に思ったが、従ってみる。調布で準特急を降り、各駅停車に乗り換えた。
現地に着くと、そこは「府中の森芸術劇場」で、全く別の建物だった。私がどこかで、別の案内を見てしまったらしい。私は時々、こういうポカをやる。
ここからならルミエール府中まで歩いていったほうがいい。しかし盛大な遅れで、10時30分の入場は難しくなった。
その後も道に迷って、入場したのは10時44分。そういえばこの数分前、とある道で多くのオッサンとすれ違ったが、彼らはここを目指していたのだ。
1階の入口を通ると、多くの小学生が将棋を指していた。「けやきキッズ将棋団体戦」だ。
東京の外れ(失礼)の府中でこれだけの人数が集まるとは、すごい。
そして奥のステージ上では、鹿野圭生女流二段と渡部女流初段の対局が始まっていた。解説は中座真七段、聞き手は蛸島彰子女流五段。席は多く用意され、五分くらいの着席率だった。
入場料は無料。世知辛い世の中で、この値段設定は涙が出るほどありがたい。今回も指導対局が用意されているが(これは有料)、これを受けて売り上げに貢献したいと思う。
私は受付に出向き、パンフレットをいただく。
優勝者予想クイズの投票用紙が入っており、締切が11時だったので、渡部女流初段に○を付けて投票した。中倉宏美女流二段の筋もあるが、ここはまあ、この一手であろう。
他には、同イベント名物・懸賞詰将棋があった。問題は全部で3つ。地元在住の岡本眞一郎氏の労作で、詰め上がりがあぶりだしになるのだ。
それで思い出すのが5年前だ。この時も私は解答したが、1問だけどうしても分からず、途中までの手順を書いて投函した。ところが最後の抽選で、私が全問正解者として当たってしまった。
賞品は岡本氏と中倉姉妹の揮毫が入った詰将棋本だったが、私は事情を話し、返納を申し出た。
だが岡本氏は「(全題正解でなくても)解いてくれたんだから、それでいいです」と優しいお言葉。だが私はそれでも返納した。当時の私は、バカ正直だったのである。
今回こそ全問正解して、岡本氏の「挑戦」に応えたい。私は眼前の対局観戦もそこそこに、解答にチカラを入れる。
(氏に了承は得ていないのだが、その作品をここに掲げる。あまりにも名作なので、1人でも多くの読者に鑑賞してもらいたい。正解手順は書きません)
鹿野―渡部戦は、大方の予想通り、鹿野女流二段の四間飛車に、渡部女流初段の居飛車穴熊になっていた。
中盤までは鹿野女流二段も十分の形勢に見えたが、相手は穴熊だからまだまだだ。
私は詰将棋の第1問を解いた。上で「あぶりだし」と書いたが、岡本眞一郎氏といえば「ナラズの岡本、岡本のナラズ」で、これも解図のヒントになる。なお詰め上がり図は、ある数字になった。
第1図で鹿野女流二段は▲7三歩成。中座七段は「堂々とした手です」と解説するが、渡部女流初段は手順に△8六飛と飛び出し、悪くないはずだ。
以下、渡部女流初段が爽快に収束した。
感想戦。第1図では▲4四歩がよかったらしい。以下△同歩▲4三歩△同金左▲同成銀△同飛▲5四角で勝負だった。
ともあれ渡部女流初段、まずは1勝である。
ここで昼休憩。1回目の指導対局は午後1時からで、受付は12時から。もっとも今は詰将棋で頭がいっぱいで指導対局どころではないのだが、一応申し込んでおいた。
駅前に出て食事処を探すが、これといったところがない。詰将棋の解答の締切は午後3時である。正直、食事をする時間すら惜しい。
私はとある複合施設に入り、ベンチに座って詰将棋を解く。もう、昼食は見送りだ。
帰路、自販機で缶コーヒーを買い、そこでちびちびやりながら、やはり詰将棋を解く。我ながら奇怪な行動ではある。
会場に戻る。懐かしい人の姿があったが、名前を失念したので、聞く。
「Kubです」
「おおKub君。久しぶりだねえ」
しばらくおしゃべりしたが、Kub君が販売コーナーの向こう側に入っていく。どうもKub君は、スタッフとして動いているようだった。
指導対局の席には、大庭美樹女流初段の名前があった。
島井咲緒里女流二段に声を掛けられた。実は鹿野―渡部戦と同時間帯に別所で島井―大庭戦があった。この状況から考えるに、島井女流二段が勝ったのだろう。
「今日は仕事の帰りでツか」
相変わらずかわいらしい。
「いえいえ、昨日女流棋士会のイベントに行ったんですけど、ちょっと消化不良がありまして…。今日はこのためだけに来ましたよ」
「あっ、そうなんでツか。スーツ姿だから…」
「こういう場だから正装で来なけりゃと思って」
「ああ…気軽に着てくだツァイよー」
咲緒里スマイルに触れられて、今日ここに来てよかったと思った。
席上対局は、準決勝1、蛸島女流五段―渡部女流初段だ。
指導対局は、鹿野女流二段と大庭女流初段の3面指し。私は大庭女流初段に教えていただくことになった。
(つづく)