一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第9回武蔵の国・府中けやきカップ(3)

2016-04-07 00:18:56 | LPSAイベント

第1図から蛸島彰子女流五段は▲5七歩と打った。終盤の忙しい時に完全なお手伝いで、(たぶん)すかさず渡部愛女流初段は△3八角成と切り、逆転した。
以下▲3八同銀△4八金▲2九金△4七角▲4三とと進んだが、そこで△2九竜が綺麗な決め手で、蛸島女流五段が投了。ああ、蛸島女流五段はいい将棋を落としてしまった。
両者、右の大盤に移動して感想戦。中盤の蛸島女流五段の攻めが焦点となり、ここまではよかったが、やはり▲5七歩が悪手とされた。ここは▲4三とと寄る一手で、これに△3八角成▲同銀△3九角は▲3七玉で詰まず、先手勝ち。蛸島女流五段は△5六飛成の筋で自玉が詰むと勘違いしてしまったらしい。早指し戦ではよくあるケースだ。
「10秒将棋だったら逆に間違えなかったかもしれませんね」
と、中倉宏美女流二段が妙な慰め方をした。
いずれにしても渡部女流初段は薄氷の勝利。優勝者予想は彼女にしたから結果オーライだが、内容がよくない。渡部女流初段がだらしないのか、蛸島女流五段が強いのか。たぶん後者だろうが、これでは決勝戦が思いやられる。とはいえ蛸島女流五段の指し回しは若々しく、ホレボレした。
午後2時15分から、準決勝2、宏美女流二段と島井咲緒里女流二段の一戦である。
「けやきキッズ将棋団体戦」はだいぶ局数が進み、参加選手も絞られてきた。優勝まであと一息だ。
私は観客席に着座し、例によって詰将棋を解く。投函の締切は3時だから、タイムリミットは45分だ。しかし何となく詰み筋は見えている。
宏美女流二段は羽織袴、島井女流二段は洋装だった。かつてのゴールデンカードである。大盤解説は鹿野圭生女流二段と渡部女流初段だった。
将棋は、後手番宏美女流二段が△8五歩を早く決めたので、島井女流二段が向かい飛車に振った。宏美女流二段は角を換わって△2二玉と寄る。
島井女流二段は▲3八銀と締まりバランスがいいが、宏美女流二段はここから穴熊を明示した。やっぱりそうなってしまうのか…という感じだった。
鹿野女流二段の解説は弁舌滑らかでおもしろい。一般的に女流棋士の解説は手のそれより裏話的なものが主になるが、それもひとつのスタイルで、アリだと思う。
私は3問目の詰将棋がやっと解けた。これも収束が怪しかったが、例によってあぶりだしを類推して、正答を導いた。
なお、今回の詰み上がり図はカタカナ2文字。これが意味するものがよく分からないが、2文字とはまた、離れ業だ。どうしてこういう問題が創れるのか、ただただ感心するばかりだ。私はあまり天才という言葉を使わないが、岡本眞一郎氏は間違いなく天才だと思う。
解答を投函して、やっと将棋の観戦に専念できる。席上を見れば、記録係をKub君がやっていた。記譜読み上げ氏も、将棋ペンクラブの交流会などで拝見したことがある。LPSAは、こうしたコアなファンに支えられているのだ。
局面は中盤に入ったところ。

第1図以下の指し手。△3三角▲6六角△2二銀▲5四歩△4二銀▲4四歩(第2図)

第1図で△3三角はプロの指し方で、私だったらまず△5四歩と打ち、その先を考える。
▲6六角もさすがで、ここ▲5六歩などは打たないのだ。
宏美女流二段は△2二銀と、あくまでも△5四歩を打たずにがんばる。島井女流二段は▲5四歩。やっぱりここに打てるのは気分がいい。
△4二銀に、島井女流二段はピシッと▲4四歩。これが好手で、後手がシビれている。もっと書けば、これで将棋が終わってしまった。

だが、宏美女流二段もがんばる。ちょっとアヤも出てきて、鹿野女流二段がたまらず中座真七段の名前を呼ぶが、中座七段は蛸島女流五段とともに指導対局の最中だ。
宏美女流二段はと金の利きに角を打つなど粘るが、やはり中盤の失点が大きく、最後は島井女流二段が華麗に寄せた。
終わってみれば、島井女流二段の快勝だった。宏美女流二段は残念だったが、負けて切ない表情を見せる宏美女流二段が、マニアには堪らないのだ。

待ち時間に一休みしていると、かなたにいる上川香織女流二段と目が合った。今回は参加予定にはなかったが、陣中見舞いに来たのだろう。
指導対局はまだ続いていて、中座七段は5面指しだった。小学生低学年のコが平手で挑んでいたが、やや無謀だったか。でも微笑ましい。
その向こう側では、初心者用講習が始まったようだ。何回かに分かれて行っていて、お客がいつからでも参加できるのがよかった。
3時半になり、決勝戦の対局開始である。対局者は島井女流二段と渡部女流初段。新旧の1day女王の決戦である。解説は宏美女流二段と、ゲストとして上川女流二段が招ばれた。
上川女流二段、宏美女流二段をねぎらう。宏美女流二段は、優勝できなかったことに触れられ、「来年は10回なので…(来年こそ、優勝します)」と笑う。
全然めげていない。このPositiveな姿勢が宏美流である。
渡部女流初段の先手で、居飛車明示。島井女流二段は四間飛車に振り、穴熊に潜る。それに呼応するかのように、渡部女流初段も左の香を1つ上げた。
島井女流二段は△6一金~△6二金とタテに並べる。これが広瀬システムで、この形のまま戦いになっても可、がウリだ。島井女流二段も愛用している。
宏美女流二段、「最近定跡本を読むようになったんですけど、定跡本は勉強になりますよね」と、冗談とも本気ともつかぬことを言う。
局面。5筋で飛車交換になり、意外なところから戦いが起こった。
渡部女流初段は▲5三歩△同金直と味をつけ、馬で桂を取る。島井女流二段も同様に、飛車で桂を取った…。

(つづく)
コメント
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