一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

植山の名局

2016-04-28 00:07:07 | 名局
24日の「99.9刑事専門弁護士」に出てきた居酒屋「酔の助」って、神保町の将棋ペンクラブ御用達「魚百」の、ナナメ向かいにある店ではないか??

27日の「ホンマでっか!?TV」で、澤口先生が「男子クラスで共学がよい」と語っていたが、この環境はけっこう辛いと思う。

   ◇

日付変わって今日4月28日は、植山悦行七段の59歳の誕生日。おめでとうございます。
その植山七段の名局を紹介したいと思うのだが、植山七段は大一番を指したことがあまりなく、実戦譜が棋書などに紹介されたこともあまりない。
超大物に勝った将棋といえば、棋聖戦の大山康晴十五世名人戦が思い浮かぶが、それはすでに紹介した。
そこで今日は、1994年4月5日に指された、第7期竜王戦ランキング戦、5組準決勝の将棋をお届けする。
竜王ランキング戦はどの対局も大きいのだが、準決勝は昇級が懸かっている。この期植山五段はよく勝ち、準決勝戦に臨んだ。相手は棋士3年目の真田圭一五段(現七段)だった。

1994年4月5日
第7竜王戦ランキング戦 5組準決勝
東京「将棋会館」
持ち時間・各5時間

▲五段 植山悦行
△五段 真田圭一

第1図までの指し手。▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩▲6六歩△6二銀▲5六歩△5四歩▲4八銀△4二銀▲5八金右△3二金▲6七金△4一玉▲7八金△5二金▲6九玉△7四歩▲7七銀△6四歩
▲2六歩△8五歩▲2五歩△7三桂▲7九角△5三銀左▲2四歩△同歩▲同角△2三歩▲4六角△4四銀▲3六歩△5五歩▲3七桂△6三銀▲5七銀△1四歩▲7九玉△6五歩(第1図)

植山五段の先手で、矢倉模様に進む。注目すべきは出だしの手順で、5手目は▲7七銀でなく▲6六歩である。現代では常識化されているが、22年前に▲6六歩が指されていたことが興味深い。
真田五段は米長流急戦矢倉で迎え撃つ。
△6五歩に植山五段の応手は。

第1図以下の指し手。▲6五同歩△同桂▲6六銀右△7七桂成▲同金寄△1三角▲3五歩△同銀▲6八角△8六歩▲同歩△6七歩▲同金寄△3六銀▲1三角成△同桂▲3三歩△2二金▲7三角△8六飛
▲8七歩△8一飛▲5五角成△3五角▲8八玉△6四銀打(第2図)

恐れず▲6五同歩と取ってしまうのがよいようだ。△同桂で両取りがかかるが、ひるんで6五に位を取られるよりよい、という大局観である。そういえばかつて渡部愛女流初段も、同様の局面で堂々と歩を取ったものだ。
本譜▲3五歩△同銀に▲5五角は△4四銀があるので、▲6八角と引く。
△8六歩▲同歩に△6七歩は▲同金寄と取られてもったいない気もするが、後の△8六飛に期待したものだろう。
△6四銀打に次の手は。

第2図以下の指し手。▲4五馬△同銀▲同桂△6五歩▲7七銀△4四歩▲3二銀△5一玉▲2三銀不成△2七歩▲同飛△4九角▲2八飛△2三金▲同飛成△6二玉▲3四竜△2六角▲5五桂△6七角成
▲同金△5九角成(第3図)

植山五段は▲4五馬と体当たりした。ふつうは▲4六馬だが、△同角▲同歩△3七銀不成でおもしろくないと見たものか。
もっとも▲4五馬にも△3七銀成はあったが、真田五段は△4五同銀。やはり駒得は大きい。
植山七段は▲3二銀と待望の打ち込み。このための角銀交換である。
真田五段は竜を作られたが、△6七角成と切り、△5九角成と肉薄する。かなりの迫力である。

第3図以下の指し手。▲9五角△7三銀打▲4四竜△6九馬▲6三桂成△同玉▲7八銀△4三金打(第4図)

▲9五角と打ち、駒を使わせる。
△6九馬の詰めろには▲6三桂成から▲7八銀がギリギリの受けで、これで一手勝っているという読みだ。
後手は△4三金打と竜をしかるが、ここでOk氏の好きな手がある。

第4図以下の指し手。▲7三角成△同銀▲6四歩△同銀▲同竜△同玉▲6九銀△4四金▲5五銀△同金▲同歩△6三銀▲5三銀△同金▲同桂成△同玉▲5四金△同銀▲同歩△6二玉
▲5三金△7一玉▲6二角△8二玉(第5図)

バッサリ▲7三角成といった。△同銀に▲6四歩と叩き、△同銀には▲同竜と、竜まで切ってしまう。
アタリになっていた駒を一掃し、▲6九銀と角を取る。これが▲5五角の先手で、優勢が見えてきたようだ。
本譜△4四金には▲5五銀、△6三銀には▲5三銀と打ち、守備駒をはがす。これが寄せのコツである。
△8二玉には格言通りの一手がある。

第5図以下の指し手。▲7二銀△8五飛▲7三金△9二玉▲8一銀不成△同飛▲7二飛(投了図)
まで、127手で植山五段の勝ち。

「玉の腹から銀を打て」の▲7二銀が好手。△同玉には▲7三金△6一玉▲7一角成△5一玉▲8一馬で先手勝ち。
真田五段は△8五飛と頑張ったが、植山五段は▲7三金から自然に追って、▲7二飛まで真田五段の投了となった。以下は△8二歩に▲7一角成で後手玉は受けなし。

本局、植山五段の緩急自在の指し回しが冴え、持ち味が十分に出た名局だったと思う。
これで植山五段の4組昇級が決まり、結果的にこれが、棋士人生唯一度の昇級となった。
一方の真田五段も、昇級者決定戦で勝ち、4組に昇級した。そして3年後の第10期竜王戦で、挑戦者になるのである。
なおこの将棋は、他の重要対局に押し出され、観戦記に載らなかった。
コメント
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