第7図以下の指し手。▲5八玉△4六桂▲6八玉△4九飛成▲3六歩△同玉▲2八桂△3七玉▲2六銀△同玉▲3六金(投了図)
まで、94手で一公の勝ち。
第7図で▲7九金で勝ちだと思ったが、△7八金の王手が気になった。そこで▲5八玉を考えた。以下△6九銀▲4八玉△3六桂▲3八玉△3七歩▲同玉△2六金▲3八玉△3七歩▲2九玉(参考図)でギリギリ残していると思った。
それで▲5八玉と上がったのだが、△4六桂と打たれて飛び上がった。
これを▲同歩は△4七銀でかなりあぶない。自玉もそうだが、△4七銀が3六に利き、玉も4六に逃げる変化が生じる。ここに至って▲5八玉の罪に気付いたが、そもそも参考図が好んで飛び込む変化ではない。ふつうに▲7九金(▲7九桂でも▲7九金打でもよい)と引く方がよほど安全で、▲5八玉は魔が差したとしか思えない。
▲7九金と指したら将棋が終わる。だから別の手を指してもう少しこの将棋を楽しみたい…という気持ちが潜在的にあった、といったら中座真七段に不遜といえようか。
私は読み直して▲6八玉。これに△5八金の追撃もイヤだったが、中座七段はふつうに△4九飛成とした。私は▲3六歩と打つ。そうして読んでいるうち、上手玉に即詰みがあることがわかった。
「負けました」
と中座七段が投了した。「最後は▲7六玉と逃げる変化があったから残していたのかな」
と中座七段。
「▲5八玉が失敗しました」
「そうですね。そこは▲7九桂でも▲7九金打でも投了でした」
私は恐縮するばかりである。そして中座七段は意外なことをいった。
「△3四角が悪手だった」
「そうなんですか」
「うん。▲3三桂成で終わってしまった。でもうまく咎められたことをホメるべきなんでしょうね」
「はあ、これで何とかいけそうかなと」
「…でもねえ、おもしろい戦法でしたねえ。桂をポンポン跳ねてねえ」
中座七段は私をまっすぐ見ていう。
「はあ、▲2五飛を指させていただきました」
最後はお互いの話が噛み合っていなかったが、これで感想戦は終了した。
とりあえずは、▲2五飛戦法の快勝譜だったといえよう。
いよいよけやきカップの決勝戦である。対局者は中倉宏美女流二段と渡部愛女流初段。渡部女流初段は連覇を、宏美女流二段は悲願の初優勝を狙う。解説は蛸島彰子女流五段と堀彩乃女流2級。
午後4時少し前に対局開始となった。戦型は先番渡部女流初段の四間飛車。むかしは振り飛車党だった彼女、いまは裏芸である。
渡部女流初段は角交換を誘い、▲8八飛と振り直す。宏美女流二段は片銀冠を構築した。戦いはまだまだこれからだ。
と、ホールにガチャガチャという騒音が響いた。
島井咲緒里女流二段とともに登場したのは「フーリオ」くん。将棋カードゲーム「ネコSHOGIバトル」のマスコットキャラクターらしい。
神聖な対局場所に現れたからまさに「乱入」だが、そこは愛嬌というところ。いいPRになったようだ。
将棋は中盤にさしかかった。私は詰将棋の解答確認である。スタッフ嬢に聞くと、岡本眞一郎氏は帰ったとのこと。ただ昨年に続いて解答プリントが用意されていたので、確認した。
第1問は9手詰だった。しかも2問目や3問目と比べるとはるかに易しい。
この問題を間違えたとは…。私は二重のショックだったが、これも私らしい。
解説は上川香織女流二段と島井女流二段に交代した。将棋は完全に持久戦で、金銀四枚が自陣に固まっている。
数手進んで、宏美女流二段は馬を自陣に引き付けた。
解説は上川女流二段から、中座七段にバトンタッチ。指導対局が終わったのだ。
中座七段「馬は金銀3枚といいますが、これで7枚になりますね」
さらに宏美女流二段は、△7八角を3四に成り返った。
中座七段「……。これで金銀10枚分になりましたね」
いや固い固い。まるで鉄筋の要塞のようだ。これは宏美女流二段、駒損ながら有利に見える。だが渡部女流初段の二枚飛車も強力だ。
ここで場内に大きな拍手が起こる。聞き手が島井女流二段から中倉彰子女流初段(当時)に代わったのだ。いよいよ真打の登場である。
彰子女流初段、きょうも袴姿で美しい。将棋ファンのはなしの中で、「美人女流棋士」というテーマで必ず名前が挙がるのが彰子女流初段である。3人のお子さんがいるのに、みずみずしさが損なわれてないのが素晴らしい。
そんな彰子女流初段の聞き手は、中倉姉妹のうらばなしが披露されたりして、おもしろい。
盤上は壮絶な攻め合いになっていた。宏美玉は△2二玉・△2三馬・△3三馬という、見たこともない「馬囲い」。渡部女流初段も▲5八竜・▲5九飛で、これも珍形の部類に入るだろう。
しかし渡部女流初段の攻めが鋭く、宏美女流二段の要塞は徐々に崩されていく。最後は▲3三金まで、宏美女流二段が投了。渡部女流初段の優勝となった。
宏美女流二段と彰子女流初段が嘆きながら抱き合う姿が印象的。そこに悲壮感はないが、残念無念の思いが伝わってきた。
渡部女流初段はうれしい連覇だが、アウェーの立場を考えると、複雑な心境、というテイだった。
さらに表彰式、お楽しみ抽選会が行われた。抽選会は、アンケートに答えた人から選ぶものだ。
せっかく当たっても帰ってしまった人もいて、けっこうチャンスはある。私は最後の最後に当たった。Sak氏も当たっていて、彼も毎回何かしらもらっていくが、私もけっこう引きがいい。しかしこんなところに運を使っているからいけないのだ。
宏美女流二段「LPSAはこの5月で設立10年を迎えます。その時はLPSAファンをお招きして、盛大なイベントを考えています」
5月になったその時、自分がどんな環境にいるのか想像もできないが、とにかくLPSAの発展を心より祈りたい。今日はありがとうございました。とても楽しかったです。