第7図以下の指し手。△2七同香成▲2五金(途中3図)
△2四馬▲5三銀△3三玉▲4二銀不成△4四玉▲3二竜△3九飛▲4九金(投了図)
まで、100手で一公の勝ち。
第7図で大野八一雄七段は3一の竜を取りかけたが、△2七同香成と、こちらの飛車を取った。下手陣に成駒を作り、これも迫力がある。
が、これは地獄行きの一手だった。私の▲2五金が、ひそかに狙っていた手。▲3五銀と▲5三銀の詰めろで、この2つが妙に受けにくい。
大野七段は、「そうか…」とつぶやき最後の読みに入る。さしあたって△3九飛が恐いが、▲4八玉で逃れている。△3三馬が△4四玉の陰になっているのも大きい。
私は△1五馬(参考1図)を恐れていた。王手なので▲1五同金と取る一手。これは▲5三角以下の詰めろになるが、△3一金でそれも解ける。以下▲5三角△3四玉▲3五銀△3三玉▲3一角成(参考2図)で私の勝ちと思うが、上手にもうまい受けがありそうである。
大野七段は駒音高く△2四馬と上がった。
これに▲2四同金なら△同歩で詰めろが解け、竜当たりが残る。
ただ△2四馬なら、上手玉が寄ると思った。私は▲5三銀△3三玉▲4二銀不成△4四玉としてから、▲3二竜と金を取った。銀を3三の地点に利かし、そこで金を取るのがミソである。
△3二同銀なら▲5四金まで。大野七段は△3九飛と打ったが、私は▲4九金。ここ▲4八玉は△3八成香でトン死だが、金を使っても、上手の詰めろは解けないのだ。ここで大野七段の投了となった。
勝った私は、さっきまで負けを覚悟していたので、キツネにつままれたよう。「勝ちに不思議の勝ちあり」とはよくいったものだ。
「寄せはなかった…?」
と、大野七段が聞く。
「3一の竜を取られていたらダメでした」
第7図で△3一金なら、下手は指しようがなかった。
大野七段に1日2勝させていただいたのは久しぶり。私の実力ではあり得ないことで、私の職が決まらないので、大野七段が元気をくれたのだろう。
なお気が付けば、本局も居玉での勝利だった。
時刻は午後5時50分ごろ。後は中年氏の将棋が残っていたが、もう終了時間を過ぎているので、感想戦はせず、私は席を立った。
飯野愛女流初段の指導対局も、まだ続いていた。私は緊張から解放されて、やっと飯野女流初段を「鑑賞」する余裕が生まれた。