3月31日(土)は、埼玉県川口市の「大野教室」で、飯野愛女流初段の指導対局があった。
飯野女流初段は「私の女流棋士ファンランキング」の第2位ということもあり、私はこの日が来るのを楽しみにしていた。
私は午後2時からの対局である。駅から教室に向かうとTag氏とバッタリ会い、そのまま入室した。
現在昼休みで、飯野女流初段はKur氏とおしゃべりをしていた。私がナマ飯野女流初段を拝見するのは、昨年4月30日の「シモキタ名人戦」以来だが、指導対局はもちろん初めてだ。
と、スタッフのW氏に吹き込まれた?飯野女流初段が、私に「2位!2位!」とVサインを作ってくれた。私のランキングで上位に位置しても意味がない。飯野女流初段が2位の意味に気付いたら、複雑な気分になるのだろう。
そろそろ時間なので、みなは席につく。今日も6面指しで、各コマ満席である。
私は向かって右端に座り、「女流初段おめでとうございます」とお祝いを述べる。飯野女流初段は現在女流1級で、この10時間後(4月1日)、晴れて女流初段に昇段するのだ。
「手合いは何にしますか」
「平手でよろしいでしょうか。先生も飛車振りたいでしょ?」
フフフ、と飯野女流初段が笑って、平手戦となった。
初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△3二飛▲6八玉△3五歩▲2五歩△3四飛▲7八玉△6二玉▲6八銀△7二玉▲4六歩△5二金左▲4七銀△1四歩▲6六歩(第1図)
飯野女流初段は2005年、当時の女流育成会入会。2013年に女流棋士になった苦労人である。2014年に女流1級に昇級したがその後は停滞し、今回やっと女流初段に昇段したのだ。
目の前の飯野女流初段は華奢で、顔も小さい。もし飯野女流初段があと10cm背が高かったら、私は相当イレ込んでいただろう。
飯野女流初段は三間飛車に振った。飯野女流初段は振り飛車党だが、中でも三間飛車を得意にしている。
私は▲6八玉。飯野女流初段は△3五歩と突き、石田流とした。
以下駒組が続き、△1四歩にはお付き合いせず、▲6六歩。これが私流の第一歩である。
第1図以下の指し手。△9四歩▲6五歩△8二玉▲6七銀△7二銀▲6八金△3三桂▲9六歩△4二銀▲5六銀左△1三角(第2図)
ほかの対局者の手合いは、私より左から角落ち(Tag氏)、飛車落ち、平手(Tod氏)、平手、二枚落ち。
第1図の▲6六歩は、△6四歩なら銀を出て▲6五歩から1歩を手にする狙い。本譜の△9四歩にはお付き合いせず、▲6五歩と位を張った。これで美濃囲いの発展を阻んだ。
▲5六銀左では「右」にしたいのだが、その瞬間△3六歩と歩交換されるのを気にした。
第2図以下の指し手。▲6六角△4三銀▲1六歩△5四銀▲3八金△1二香▲7七桂△4三銀▲2七金△2四歩(第3図)
私は専守防衛の形なので、攻め形を作ることができない。▲6六角はこんなところだと思った。以下▲7七桂~▲8六歩とし、端攻めを狙いながら上手の攻めを待つ感じだ。
飯野女流初段は△5四銀。次に△4五歩▲同歩△同銀▲同銀△同桂のあと、△3七桂成~△3六歩の狙いがある。それを防いで私は▲3八金と上がったが、これでは▲6六角との整合性がなくなった気がした。
▲7七桂に△4三銀の撤退?はありがたい気がしたが、私が気付かぬ狙いを察知したのかもしれない。
▲2七金。自分で採った作戦とはいえ、いい手とは思えなかった。
飯野女流初段は△2四歩。ついに動いてきた。
第3図以下の指し手。▲1五歩△2五歩▲1四歩△3一角▲1六金△5四歩▲8六歩△5三角▲1五金(第4図)
ほかの将棋を見ると、Tod氏は居飛車穴熊。彼の棋風ではないと思うが、どういう風の吹き回しだろう(註:当人によると、中飛車左穴熊だった)。
飯野女流初段は軽口を飛ばすでもなく、淡々と指す。形は堂々としており、大野八一雄七段のそれと変わらない。御尊父の健二七段に、「上手の指し方」をしっかり教わったのだろう。
第3図で▲2四同歩は△同飛で、上手の思惑通り。私は▲1五歩と反発したが、後の読みに破綻があった。
すなわち▲1四歩に△2四角の一手と思い込み、それは▲2三歩で下手おもしろい、と考えていた。
だが実戦はもちろん△3一角で、私は二の矢がない。▲1六金と進出したが、金がソッポで全然自信はなかった。
飯野女流初段は△5四歩と角道を開けた。なるほど銀の繰り替えは、この端攻めを見ていたのだ。
捨て置けば△9五歩▲同歩△9八歩~△9七歩があるので、私は▲8六歩。もし△同角なら▲7五歩とし▲8七玉を見るが、▲7五歩の時図々しく△7四歩(参考1図)と突かれると、▲同歩は△7六歩で悪く、捨て置いても△7五角があり、これはこれでむずかしいと思っていた。
しかし飯野女流初段は穏やかに△5三角。私は▲1五金と、さえない進出である。
第4図以下の指し手。△5五歩▲同角△8六角▲2四歩△3二銀▲1三歩成△同香▲1四歩△同香▲同金△1三歩(第5図)
飯野女流初段は△5五歩。▲5六銀・▲6六角の形は、つねにこの歩突きがイヤだ。
これを▲同銀は△5四歩なので、▲同角は絶対。以下△5四金▲6六角△5五歩▲同銀△同金▲同角△5四歩▲6六角△5五銀の進行をイメージしたが、飯野女流初段は△8六角。
私は▲2四歩△3二銀を利かし、▲1三歩成から香得を果たしたが、金がソッポで全然いいとは思わない。
(つづく)
飯野女流初段は「私の女流棋士ファンランキング」の第2位ということもあり、私はこの日が来るのを楽しみにしていた。
私は午後2時からの対局である。駅から教室に向かうとTag氏とバッタリ会い、そのまま入室した。
現在昼休みで、飯野女流初段はKur氏とおしゃべりをしていた。私がナマ飯野女流初段を拝見するのは、昨年4月30日の「シモキタ名人戦」以来だが、指導対局はもちろん初めてだ。
と、スタッフのW氏に吹き込まれた?飯野女流初段が、私に「2位!2位!」とVサインを作ってくれた。私のランキングで上位に位置しても意味がない。飯野女流初段が2位の意味に気付いたら、複雑な気分になるのだろう。
そろそろ時間なので、みなは席につく。今日も6面指しで、各コマ満席である。
私は向かって右端に座り、「女流初段おめでとうございます」とお祝いを述べる。飯野女流初段は現在女流1級で、この10時間後(4月1日)、晴れて女流初段に昇段するのだ。
「手合いは何にしますか」
「平手でよろしいでしょうか。先生も飛車振りたいでしょ?」
フフフ、と飯野女流初段が笑って、平手戦となった。
初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△3二飛▲6八玉△3五歩▲2五歩△3四飛▲7八玉△6二玉▲6八銀△7二玉▲4六歩△5二金左▲4七銀△1四歩▲6六歩(第1図)
飯野女流初段は2005年、当時の女流育成会入会。2013年に女流棋士になった苦労人である。2014年に女流1級に昇級したがその後は停滞し、今回やっと女流初段に昇段したのだ。
目の前の飯野女流初段は華奢で、顔も小さい。もし飯野女流初段があと10cm背が高かったら、私は相当イレ込んでいただろう。
飯野女流初段は三間飛車に振った。飯野女流初段は振り飛車党だが、中でも三間飛車を得意にしている。
私は▲6八玉。飯野女流初段は△3五歩と突き、石田流とした。
以下駒組が続き、△1四歩にはお付き合いせず、▲6六歩。これが私流の第一歩である。
第1図以下の指し手。△9四歩▲6五歩△8二玉▲6七銀△7二銀▲6八金△3三桂▲9六歩△4二銀▲5六銀左△1三角(第2図)
ほかの対局者の手合いは、私より左から角落ち(Tag氏)、飛車落ち、平手(Tod氏)、平手、二枚落ち。
第1図の▲6六歩は、△6四歩なら銀を出て▲6五歩から1歩を手にする狙い。本譜の△9四歩にはお付き合いせず、▲6五歩と位を張った。これで美濃囲いの発展を阻んだ。
▲5六銀左では「右」にしたいのだが、その瞬間△3六歩と歩交換されるのを気にした。
第2図以下の指し手。▲6六角△4三銀▲1六歩△5四銀▲3八金△1二香▲7七桂△4三銀▲2七金△2四歩(第3図)
私は専守防衛の形なので、攻め形を作ることができない。▲6六角はこんなところだと思った。以下▲7七桂~▲8六歩とし、端攻めを狙いながら上手の攻めを待つ感じだ。
飯野女流初段は△5四銀。次に△4五歩▲同歩△同銀▲同銀△同桂のあと、△3七桂成~△3六歩の狙いがある。それを防いで私は▲3八金と上がったが、これでは▲6六角との整合性がなくなった気がした。
▲7七桂に△4三銀の撤退?はありがたい気がしたが、私が気付かぬ狙いを察知したのかもしれない。
▲2七金。自分で採った作戦とはいえ、いい手とは思えなかった。
飯野女流初段は△2四歩。ついに動いてきた。
第3図以下の指し手。▲1五歩△2五歩▲1四歩△3一角▲1六金△5四歩▲8六歩△5三角▲1五金(第4図)
ほかの将棋を見ると、Tod氏は居飛車穴熊。彼の棋風ではないと思うが、どういう風の吹き回しだろう(註:当人によると、中飛車左穴熊だった)。
飯野女流初段は軽口を飛ばすでもなく、淡々と指す。形は堂々としており、大野八一雄七段のそれと変わらない。御尊父の健二七段に、「上手の指し方」をしっかり教わったのだろう。
第3図で▲2四同歩は△同飛で、上手の思惑通り。私は▲1五歩と反発したが、後の読みに破綻があった。
すなわち▲1四歩に△2四角の一手と思い込み、それは▲2三歩で下手おもしろい、と考えていた。
だが実戦はもちろん△3一角で、私は二の矢がない。▲1六金と進出したが、金がソッポで全然自信はなかった。
飯野女流初段は△5四歩と角道を開けた。なるほど銀の繰り替えは、この端攻めを見ていたのだ。
捨て置けば△9五歩▲同歩△9八歩~△9七歩があるので、私は▲8六歩。もし△同角なら▲7五歩とし▲8七玉を見るが、▲7五歩の時図々しく△7四歩(参考1図)と突かれると、▲同歩は△7六歩で悪く、捨て置いても△7五角があり、これはこれでむずかしいと思っていた。
しかし飯野女流初段は穏やかに△5三角。私は▲1五金と、さえない進出である。
第4図以下の指し手。△5五歩▲同角△8六角▲2四歩△3二銀▲1三歩成△同香▲1四歩△同香▲同金△1三歩(第5図)
飯野女流初段は△5五歩。▲5六銀・▲6六角の形は、つねにこの歩突きがイヤだ。
これを▲同銀は△5四歩なので、▲同角は絶対。以下△5四金▲6六角△5五歩▲同銀△同金▲同角△5四歩▲6六角△5五銀の進行をイメージしたが、飯野女流初段は△8六角。
私は▲2四歩△3二銀を利かし、▲1三歩成から香得を果たしたが、金がソッポで全然いいとは思わない。
(つづく)