4月29日(日・祝)は、二子玉川花みず木フェスティバル「第11回世田谷花みず木女流オープン戦」があった。
3月31日に大野教室で飯野愛女流初段に指導対局を受けた際、今年の花みず木は「グランドチャンピオン戦」と聞いた。すなわち、過去に2回優勝して「卒業」した女流棋士が還ってくるらしい。それはうれしいものの、飯野女流初段は聞き手に回るとのことで、複雑な心境である。私は、聞き手の飯野女流初段はどうでもいい。対局者の飯野女流初段を見たいのである。
私はここ数ヶ月テンションが下がっているので29日も起床が遅く、家を出るのも遅れた。しかも最寄り駅への所要時間を勘違いしていて、途中で開演時刻の10時30分に間に合わないことが判明した。でも仕方ない。
玉川高島屋S・Cの6階に着いたのは10時43分。準決勝第1局の中村真梨花女流三段と谷口由紀女流二段は、すでに対局席に着いていた。2人は2度の優勝をしている。
解説は中村修九段、聞き手は山口恵梨子女流二段、司会進行はおなじみ、中村雅子アナである。
ちなみに第2局の対局者は鈴木環那女流二段と渡部愛女流二段。飯野女流初段が聞き手を務める予定だ。開演時、これら6人の女流棋士が勢ぞろいして「撮影タイム」があったはずで、それを撮り逃したのは不覚というほかない。
観客席の定員は50。しかしここ何年間ではやや活気がなく、よく見ると空席もあった。
ただ私は、後方で立ち見とする。運動不足の解消と、この方が大盤の下部分まで見えるからである。
対局開始。中村女流三段の先手で、相振り飛車になった。両者ともワンピースの軽やかな装いだ。
中村九段の解説は相変わらずポソポソ。対して山口女流二段はハキハキしていて、対照的だ。
中村女流三段は△6二玉~△7二銀。▲8五歩に△7一玉と下がった。
中村九段「早く玉を引いとかないと、8筋の歩を切られた時、▲8二歩があります」
山口女流二段「そうですよね! 忘れもしない、私が初めて参加したマイナビ女子オープン(2008年)で、それをやってしまいました」
以下、粛々と駒組が進む。
谷口女流二段は▲2八銀と上がったが▲3八銀もあり、中村九段は「相振り飛車は難しいです」とつぶやく。
その点山口女流二段は指しなれているからか、ニコニコしている。いろいろな変化を披露して、積極的だ。
谷口女流二段は▲1七銀と上がった。相振り飛車の将棋ではなくはないが、珍しい。
さらに▲2六銀と覗く。中村女流三段は△6四歩(第1図)。突き出た歩を咎めにきた。しかしここは自陣のキズにもなり、微妙なところ。
この棋戦で2人は、2015年に顔を合わせている。それは参考2図から中村女流三段が△3六歩▲同銀△同飛▲同歩△1九角成と強攻し快勝、連覇を果たした。しかし本局はさすがに、そんな展開にはなるまい。
谷口女流二段の右銀は2八まで戻り、やや作戦失敗。
攻めのマリカは、△3六歩(第2図)と突いた。おお! と中村九段が驚く。
客席の後方には、お揃いの服を着た小さな姉妹がちょこんと座り、戦況を見守っている。お母さんは背後の店で、買物の最中だ。
第2図以下▲3六同歩△2六歩▲同歩△2七歩▲同玉△5五角▲6六銀△2六飛の変化を中村九段が示す。
何ということだろう、3年前と同じく、またもや飛車切りの筋が出てきてしまった。
しかも指し手を見守ると、その手順がしっかりトレースされていく。ついに△2六飛(第3図)が実現し、▲同玉△2八角成と、先手玉は一人旅に出てしまった。
これ、アマチュア同士なら、ほとんど後手が勝つ。しかしプロ同士ならどうか。
中村九段は「△4二銀・△5二金の形なら△4二銀が安定するが、△6三金なので…」と述べる。正確に指せば後手がいいが、指し手が難しいという。
しかし中村女流三段は、▲3五玉に△5四金▲2一飛△1九馬▲8四歩△4四金と、屋根伝いに金を活用して、先手玉を追い詰める。
▲2四玉に、次はとりあえず△8四歩と誰もが思ったが…。
△1二銀!(第4図)が強い手だ。▲8三歩成△同銀に▲6一飛成なら、△2二香で詰む、と中村九段。
そこで谷口女流二段は△8三同銀に▲5六角と攻防に放ったが、△2三歩▲同飛成△同銀▲同玉に△2一香が痛打。以下▲2二歩△2七飛▲2四銀△同飛成▲同玉△2二香で、先手玉が詰んでしまった(投了図)。
谷口女流二段が投了し、会場から拍手。そのまま大盤で感想戦となった。
中村九段のニュアンスでは、中村女流三段の攻めは無理気味、の雰囲気だった。最後は▲5六角が疑問手らしかったが、短時間の勝負では正確に受け切るのも難しかったようである。
最近中村女流三段は不調だったが、さすがの決勝進出となった。
(つづく)
3月31日に大野教室で飯野愛女流初段に指導対局を受けた際、今年の花みず木は「グランドチャンピオン戦」と聞いた。すなわち、過去に2回優勝して「卒業」した女流棋士が還ってくるらしい。それはうれしいものの、飯野女流初段は聞き手に回るとのことで、複雑な心境である。私は、聞き手の飯野女流初段はどうでもいい。対局者の飯野女流初段を見たいのである。
私はここ数ヶ月テンションが下がっているので29日も起床が遅く、家を出るのも遅れた。しかも最寄り駅への所要時間を勘違いしていて、途中で開演時刻の10時30分に間に合わないことが判明した。でも仕方ない。
玉川高島屋S・Cの6階に着いたのは10時43分。準決勝第1局の中村真梨花女流三段と谷口由紀女流二段は、すでに対局席に着いていた。2人は2度の優勝をしている。
解説は中村修九段、聞き手は山口恵梨子女流二段、司会進行はおなじみ、中村雅子アナである。
ちなみに第2局の対局者は鈴木環那女流二段と渡部愛女流二段。飯野女流初段が聞き手を務める予定だ。開演時、これら6人の女流棋士が勢ぞろいして「撮影タイム」があったはずで、それを撮り逃したのは不覚というほかない。
観客席の定員は50。しかしここ何年間ではやや活気がなく、よく見ると空席もあった。
ただ私は、後方で立ち見とする。運動不足の解消と、この方が大盤の下部分まで見えるからである。
対局開始。中村女流三段の先手で、相振り飛車になった。両者ともワンピースの軽やかな装いだ。
中村九段の解説は相変わらずポソポソ。対して山口女流二段はハキハキしていて、対照的だ。
中村女流三段は△6二玉~△7二銀。▲8五歩に△7一玉と下がった。
中村九段「早く玉を引いとかないと、8筋の歩を切られた時、▲8二歩があります」
山口女流二段「そうですよね! 忘れもしない、私が初めて参加したマイナビ女子オープン(2008年)で、それをやってしまいました」
以下、粛々と駒組が進む。
谷口女流二段は▲2八銀と上がったが▲3八銀もあり、中村九段は「相振り飛車は難しいです」とつぶやく。
その点山口女流二段は指しなれているからか、ニコニコしている。いろいろな変化を披露して、積極的だ。
谷口女流二段は▲1七銀と上がった。相振り飛車の将棋ではなくはないが、珍しい。
さらに▲2六銀と覗く。中村女流三段は△6四歩(第1図)。突き出た歩を咎めにきた。しかしここは自陣のキズにもなり、微妙なところ。
この棋戦で2人は、2015年に顔を合わせている。それは参考2図から中村女流三段が△3六歩▲同銀△同飛▲同歩△1九角成と強攻し快勝、連覇を果たした。しかし本局はさすがに、そんな展開にはなるまい。
谷口女流二段の右銀は2八まで戻り、やや作戦失敗。
攻めのマリカは、△3六歩(第2図)と突いた。おお! と中村九段が驚く。
客席の後方には、お揃いの服を着た小さな姉妹がちょこんと座り、戦況を見守っている。お母さんは背後の店で、買物の最中だ。
第2図以下▲3六同歩△2六歩▲同歩△2七歩▲同玉△5五角▲6六銀△2六飛の変化を中村九段が示す。
何ということだろう、3年前と同じく、またもや飛車切りの筋が出てきてしまった。
しかも指し手を見守ると、その手順がしっかりトレースされていく。ついに△2六飛(第3図)が実現し、▲同玉△2八角成と、先手玉は一人旅に出てしまった。
これ、アマチュア同士なら、ほとんど後手が勝つ。しかしプロ同士ならどうか。
中村九段は「△4二銀・△5二金の形なら△4二銀が安定するが、△6三金なので…」と述べる。正確に指せば後手がいいが、指し手が難しいという。
しかし中村女流三段は、▲3五玉に△5四金▲2一飛△1九馬▲8四歩△4四金と、屋根伝いに金を活用して、先手玉を追い詰める。
▲2四玉に、次はとりあえず△8四歩と誰もが思ったが…。
△1二銀!(第4図)が強い手だ。▲8三歩成△同銀に▲6一飛成なら、△2二香で詰む、と中村九段。
そこで谷口女流二段は△8三同銀に▲5六角と攻防に放ったが、△2三歩▲同飛成△同銀▲同玉に△2一香が痛打。以下▲2二歩△2七飛▲2四銀△同飛成▲同玉△2二香で、先手玉が詰んでしまった(投了図)。
谷口女流二段が投了し、会場から拍手。そのまま大盤で感想戦となった。
中村九段のニュアンスでは、中村女流三段の攻めは無理気味、の雰囲気だった。最後は▲5六角が疑問手らしかったが、短時間の勝負では正確に受け切るのも難しかったようである。
最近中村女流三段は不調だったが、さすがの決勝進出となった。
(つづく)