一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

勝又教授の講義と、上村四段による物真似

2018-05-31 01:16:36 | 将棋イベント
時刻は午後2時57分である。勝又清和教授は大盤で、角換わりの最新定跡を講義していた。観客はかなり多く、昨年の森内俊之九段のトークショーよりも多い気がする。
表題が「2018年将棋界の話題はこれだ!」だったので、注目棋士の人となりでも紹介するのかと思ったが、それはもう終わったのかもしれない。
聞き手はおなじみ、文壇将棋名人の下平憲治氏だった。スケジュールではあと3分で終わってしまうが、ロスタイムがあるようだ。
勝又教授は、▲6八玉型と▲4八金~▲2九飛型がなぜ主流になったかを講義していた。
「今は囲いよりも、バランスで勝負しているんですね。玉が6八にいて、飛車が一段目を守っていると、角を打つスペースがないんです。
玉飛接近すべからずの格言からは外れていますが、相手の飛車筋からは2つ外れている、という考えなんですね」
ここらで講義が終わり、観客から質問コーナーとなった。
叡王戦はどうなりますか、の質問が飛ぶ。「(指導対局のコーナーに)飯野さん(健二七段)がいるんで言いにくいんですが、最終戦まで盛り上がってほしいです」
現在七番勝負を激闘中の、高見泰地六段の師匠は石田和雄九段。つまり勝又教授と同じで、二人は兄弟弟子である。
そしてもう一人の対局者、金井恒太六段は飯野七段門下。それで上のコメントとなったわけだった。
藤井聡太六段は今後どうなりますか、の質問も飛ぶ。近く竜王戦5組の準決勝があり、それに藤井六段が勝てば「竜王戦の連続昇級」の規定で七段に昇段するわけだが、勝又教授がネットで目にしたところによると、藤井六段の持ち時間5時間以上の将棋は、4月30日現在、27勝1敗らしい。
ということはつまり、昨年7月の第30期竜王戦本戦トーナメントで、佐々木勇気五段(当時)に負けたのが唯一の敗戦だったことになる。なるほど、順位戦は全勝昇級だったし、言われてみればそうである。
「それよりも今、別の問題が生じてきましてね」と勝又教授。「今王座戦で、本戦トーナメントまで勝ち進んでますでしょう。王座挑戦もあり得るわけです。そうなったらマスコミが大挙押しかける。その時普通の旅館じゃキャパが足りないわけです。対局場もそれなりの広さが必要になるわけで、藤井六段対策に、関係者は頭を悩ませているらしいです」
たしかに藤井六段がタイトル戦に挑戦したら、これは大変な騒ぎになるだろう。
最後の質問は、「矢倉は終わったのか?」である。これも前日は森下卓九段が言及していたが、勝又教授の答えは、「今は角換わりの将棋を代表的に、戦いが早くなりました」とのことだった。
もっと勝又教授の講義を拝聴したかったが、これにて終了。私が「リアル真部一男」をやっちゃったんだからしょうがない。お次は3時30分から、上村亘四段の「スター棋士物真似ショー」である。
私はしもきたスクエア内を見て回る。指導対局のコーナーがあった。30分で1,000円という、クイックカットのような値段設定だが、迷ったすえ、申し込んだ。本音をいえば1時間は欲しいが、気軽にプロ棋士に挑戦してほしい、という主催者側の意向だからしょうがない。
対局は3時55分からなので、その間に遅い昼食を摂ることにする。目指すは、昨年も入った蕎麦屋である。
蕎麦屋はもちろんあった。ただ、ランチタイムは終わっており、半カレー200円のサービスは終わっていた。私は大もりを注文する。もっとも結果論だが、そば類は単体で食べたほうがよい。ほかの食事と混ざると、蕎麦本来の香りを味わえなくなるからだ。
外国人のカップルが入店した。よく見ると女性は日本人だが、流暢な英語である。彼女のほうが、その辺のサラリーマンよりよほど英語がうまい。やはり実践に敵うものはないのだろう。
大もりを美味しく食べて、しもきたスクエアに戻る。小ステージでは、上村四段の物真似ショーが始まっていた。進行は我らが中倉宏美女流二段。昨年に続いて、シャレた帽子をかぶっていた。宏美女流二段を拝見するのは先月のけやきカップ以来だが、相変わらず美しく、見とれる。
上村四段は、ここでしか聞けない棋士のこぼれ話を交え、棋士の物真似を披露する。加藤一二三九段の巻になった。題材は2007年に指されたNHK杯、羽生善治王座・王将VS中川大輔七段の一戦である。羽生二冠が大苦戦だった将棋を、終盤の▲9八角から敵玉をトン死させた将棋だ。
折しもこのときの司会者が宏美女流二段である。当事者が再現に参加してくれるなんて、何て贅沢なんだ!
上村四段が加藤九段に扮し、その場面を物真似する。
宏美女流二段「大変な局面ですね」
上村四段「あれ? あれっ!? お、おかしいですよ、これは!」
上村四段がトーンを上げる。「もしかしてトン死!? トン死なんじゃないですか!? いや待ってくだい、歩の数が…。こ、これ、詰んでますよ、ヒャー!」
観客は大爆笑である。「…え、NHK杯史上に残る、大逆転なんじゃないかな、ヒャーッ、ヒャーッ!!」
こんな感じだったと思います、と上村四段。でもこれ、と続ける。「NHK杯史上に残る、っていうほどの大逆転じゃないと思うんですよねー」
宏美女流二段も「私も、この数手前から、後手玉が詰みそうな感じがしていました」と返す。
二人の正直な述懐に、私たちはまた笑い転げてしまう。
上村四段といえば、藤井六段(現七段)に後手番で初めて勝った棋士として名を馳せたが、こんな特技があるとは知らなんだ。上村亘。憶えておこう。





さて、そろそろ指導対局の時間である。私は誰に当たっているか知らない。指定された席に着くと、意外な棋士が私の前にいた。
(つづく)
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