一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第11回世田谷花みず木女流オープン戦(4)

2018-05-24 00:24:13 | 将棋イベント

第3図以下の指し手。▲4三歩△同飛▲4四歩△同飛▲6六角△5五歩▲同銀△3四飛▲3五歩△同飛▲2四飛△3八飛成▲3九歩△4九竜▲2二飛成△5八と▲7九金(第4図)

両者のきもの姿は艶やかだが、どちらもそれをまとっていることを忘れているだろう。
中盤の難しい局面。森下卓九段が「昔、悪夢の端攻めというのがありましたけど」と言う。
先手はどこかで▲9五歩をやらねばならないということか。まず渡部女流二段は▲4三歩と打った。「後手はどこかで△4六角と打ちたい」が中村修九段説。▲2四飛の飛び出しも防ぎ、味がいい。
△4三同飛に▲4四歩△同飛。ここで▲6六角△3四飛▲1一角成となれば、次に▲6三香を見て先手も指せる、と中村九段。
果たして渡部女流二段は▲6六角と放ったが、中村女流三段は手筋の△5五歩。こういう手が私には指せず、さすがに中村女流三段は振り飛車を指しなれていると感心する。
渡部女流二段は▲5五同銀と取ったが、これは銀が守りから離れて辛かった。
以下お互い飛車を成ったが、と金が残っている分、後手がよい。先手はどこでやり損なったのだろう。

第4図以下の指し手。△6八歩▲9五歩△6九歩成▲8九金△6八と引▲9四歩△7八と▲同金(第5図)

△6八歩。この垂れ歩が見習うべき手筋で、マムシのと金攻めだ。渡部女流二段は待望の▲9五歩。森下九段は「なるほど」と唸り、中村九段「ここで(行った)」とつぶやいた。
しかし△6九歩成が大きい。渡部女流二段は▲8九金と、涙の辛抱だ。△6八と引には▲9四歩と取り込み、銀損を甘受する。
第5図で私なら△9二歩だが…。

第5図以下の指し手。△9八歩▲8五桂△9九竜▲7七玉△5九角▲8七玉△8九竜▲8八金△7八銀▲9六玉△9四香▲9五歩(第6図)

中村女流三段は△9八歩と打った。森下九段「なるほど。これは端攻めを逆用したということですね」
中村九段「厳しいですね」
渡部女流二段は▲8五桂と跳ぶ。端に攻めを増強しつつ、7七への逃げ道を作ったものだが、いかんせん形勢が離れすぎている。まったく、最近の両者の調子からは考えられない展開だが、それが勝負事でもある。
▲7七玉で中村女流三段が秒読みに入ったが、もう時間は要らないだろう。△5九角から収束に入った。

第6図以下の指し手。△8八竜▲同角△9五香▲同玉△8四金(投了図」
まで、90手で中村女流三段の勝ち。

△8八竜が決め手。以下△8四金まで、渡部女流二段が駒を投じた。
会場からすかさず、大きな拍手が起こる。中村女流三段、うれしい「3度目」の優勝となった。中盤からの構想が冴え、会心の出来だったのではないか。
一方渡部女流二段は、意外な拙局だった。こんなに不出来な将棋を見たのは初めてである。
まだ時間もあるので、大盤で感想戦となった。

森下九段「(途中図から)▲2四飛△2三歩▲2七飛△5五歩▲6五歩でしたか。本譜は△4七のと金が大きかった」
中村九段「▲9五歩もタイミングが遅かったかな」
渡部女流二段も、そうですね、と頷いていた。しかし本譜の、中村女流三段の攻めも巧妙だった。
さて表彰式である。グランドチャンピオン戦を制した中村女流三段は、さすがにうれしそうだ。
ここで最後の撮影タイムとなり、私も何枚か撮らせていただく。今度はうまく撮れただろうか。



客席には渡部女流二段が移動していた。中村女流三段の雄姿を撮るためであろう。渡部女流二段は残念だったが、この悔しさは来たる女流王位戦で晴らせばいい。
締めは岡田・世田谷副区長の挨拶である。「将棋は世代を越えて楽しめる、日本文化と思います。今日は白熱した戦いに、皆様も楽しんでいただけたのではないでしょうか」
個人的には最終局がちょっと残念だったが、とても楽しめた。来年もこの棋戦は開催されるだろうが、私がどんな肩書でここに来られるかは、不明である。
ともあれ出場女流棋士の皆様、お疲れ様でした。
コメント
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