一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

あんでるせん・ファーストコンタクト(1)

2020-02-19 00:09:35 | 旅行記・九州編
営業先の会社の社長から、妙な喫茶店のことを聞いたのは2年くらい前だ。
ある著書に記されていたのだが、その喫茶店は長崎県の川棚という田舎町にあり、そこのマスターが余興にマジックをやるらしい。これが超能力と見紛うばかりの出来だというのだ。
それはお客の名前をピタリと当てたり、紙幣に開けた穴が元に戻ったり、念写をやったりと、マジックの域を出た凄まじいものらしい。
ところがそれだけ凄いマジックを披露しながら、余興なのでお代は喫茶代だけだという。
私もその類の話は好きなので、その程度の出費で済むのなら行ってみたい。ただ店は全席予約で、場合によっては満席で断られる時もあるという。
そもそも長崎は遠く、よく考えたら旅費がかかる。さすがの私もしばし放置していたが、このたびJALのマイルが15,000たまった。それを使って長崎に行こうと思った。
有給休暇を1日取り、行きは12月18日(土)、帰りは20日(月)とし、往復の便を取った。ただし福岡空港往復である。年末の忙しない最中だが、驚異の体験をしそうな予感がした。

18日朝、自宅最寄り駅で青春18きっぷ(11,500円)を購入し、その1日目を使って、京浜東北線に乗った。浜松町からモノレールで羽田空港駅まで行き、09時35分発の357便・福岡空港行きに搭乗した。席は「44A」だったが、外を見る余裕はなかった。
福岡空港11時20分着。ここから福岡市営地下鉄空港線に乗り、博多下車。すぐさまJRに乗り換え、12時01分の下り鹿児島本線に滑り込んだ。
タイム51分で、鳥栖着。6分の待ち合わせで長崎本線に乗り換えた。タイム39分で肥前山口着。今回の目的地は大村線の川棚という駅だが、到着までなかなかに手間がかかる。ただし鉄道料金はもう払ってあるので、その点は心配いらない。
13分の待ち合わせで佐世保線に乗り換えた。車内はなかなかの乗車率で、私は立っていく。途中の三間坂で座ったが、高橋あたりで座るべきだったかもしれない。
早岐着14時42分。16分の待ち合わせで大村線に乗った。これが最終ランナーである。等級は普通列車だが、車両は特急電車のごとく豪華だ。JR6社の中では、JR九州が最も車両に力を入れていると思う。
右手に大村湾を見やり、15時23分、川棚着。ついにこの駅に着いた。ただし駅舎は平屋で、これといった特徴はなかった。
目指す店は駅前とのことだったが、屋号は何といったか。私は駅近くにある軽食喫茶「ペチカ」に入った。
店のオーナーはママさんだったが、ペチカか。もっと長い名前だった気がする。
私はとりあえず焼きうどん(500円)を頼む。遅い昼食である。食べながら店内を見渡すが、どうも違う気がする。
何となく食事を終え、会計にする。「この近くに超能力の喫茶店は……」と聞くと、ママさんは「ああ、あんでるせんでしょ? それなら」と、西肥バスセンターの向こうにあるお菓子屋の2階だと教えてくれた。そうだそうだ、あんでるせんという名前だった。あっちの方角だったか!
「あんでるせん」のたもとに着いた。ここが噂に聞く名店である。2階への入口には「フルーツパーラー」と白抜きされた庇があった。
そうそう、この1階のお菓子屋で整理券を受け取るのだった。私は引き戸を開ける。
「あのう……あんでるせんさんでマジックを拝見したいんですが」
対応してくれたのは実年男性で、マスターのご尊父に思われた。
「ああそうですか、でも3時の回がいま満席になっちゃったんですよ」
「えっ!?」
しまった……。ペチカで焼きうどんを食べたのがマズかった。すぐにあんでるせんの在処を聞けばよかった。
「男性1名だけなんですが、もうダメでしょうか」
「ちょっと、無理ですね」
「あの、私東京から来てるんですが、今日のイベントはこれでもう終わりでしょうか」
「あとは7時からありますよ」
「7時!?」
いまは午後4時にならんとしている。ここから3時間もあるのか……。
それでもいいと、整理券をもらった。「3」だった。私で3人目ということだろうか。
さてこれからどうするか。青春18きっぷがあるので、意味なく列車に乗っていれば時間を潰せる。だが僻地に行って何かあり、帰って来られなかったら面倒だ。
駅前は大村線に沿って県道が走っており、私は早岐方面に意味なく歩いた。
といってもこれといった施設はない。大きな本屋があったので入ったが、潰せる時間は高が知れている。
洒落た喫茶店があったので入ってみる。エビピラフ(500円)とコーヒー(250円)を頼んだ。これからあんでるせんにも行くし、はるばる長崎まで来て喫茶店三昧だ。
エビピラフはもちろん美味かった。会計の時、セットメニューが適用されたか、700円だったのに感激した。
川棚駅に戻り、今度はその先に行ってみる。長浜ラーメンの店があったので、入ってみる。ラーメンはトッピングも豊富で、美味かった(500円)。
そろそろ、あんでるせんの前に行ってみる。時刻は6時半を過ぎ、あたりは暗くなっていた。2階を見上げると、窓ガラスから灯りが漏れる。いまあの中では何が行われているのか。
しばらくすると、2階からゾロゾロと人が下りてきた。イベントが終わったようだ。だが皆さん快活というわけではなく、どこか放心状態に見えた。皆さん一体、何を見たのだろう。
もう私が入店してもいい時間だが、それにしては同好の士が見当たらない。
2階に上がり入店すると、果たして客は私しかいなかった。
(つづく)
コメント
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