第33期竜王戦第4局は11月26日・27日に、鹿児島県指宿市で行われた。対局場の「指宿白水館」は、3年前に羽生善治九段が永世七冠を達成したところ。羽生九段にとっては縁起がいいが、今回の七番勝負は豊島将之竜王相手に、1勝2敗と劣勢に陥っている。
しかも前局は羽生九段の体調不良につき、延期(休止)となっていた。通常の予選対局なら不戦敗になっているところで、並の棋士だったら豊島竜王への負い目で、第4局は相当に戦いづらいところだ。
そんな2人はこの6日前に王将戦リーグ最終戦を戦ったが、豊島竜王が115手で競い勝ち、プレーオフに進出した。2人の対局はここまで後手番が10連勝だったが、とりあえずピリオドを打った。
さらに豊島竜王は4日前にJT杯日本シリーズで優勝し、ますます意気高し。いっぽう50歳になった羽生九段は白髪が目立ち、弱々しささえ感じられる。大山康晴十五世名人が50歳になってもギラギラで、「五十歳の新人」を宣言したのとは対照的で、どこからどう見ても、羽生九段の旗色が悪かった。
なお本局もABEMAで中継があったが、私はあまり見る気がしなかった。よって、本局の手順のほとんどは、対局後に確認したものである。
将棋は先番豊島竜王の横歩取りになった。シリーズ初の戦型である。最近は青野流が猛威をふるい横歩取りも減少傾向にあるというが、羽生九段は横歩取りの後手も勝率がよく、望むところだっただろう。なお本局は18手目まで、先の王将戦リーグと同じ進行だった。横歩取りは後手が誘導できるから、羽生九段に修正手があったのかもしれない。
羽生九段、32手目△6二玉。2手前に△5二玉だったから明らかな手損だが、横歩取りは陣形が低いほうが戦いやすく、この辺の手損は関係ないのだろう。むろんこのあたりも定跡があるのだろうが私にはチンプンカンプンで、とうてい指す手が分からない。そこを正確な指針を持ち、破綻なく進める棋士に畏敬の念を抱くのである。こういう将棋こそ解説をしっかり聞き、一手一手の意味をしっかり理解すれば、相当棋力が向上すると思う。私にはその時間があったが聞く資格がないので、そこまではしなかったが。
将棋は互角のまま2日目に入ったが、気のせいか羽生九段が劣勢に見えた。最終的には豊島竜王が勝つに違いないというこの感じ、25日に終了したプロ野球の日本シリーズ・ソフトバンクと巨人の関係によく似ていた。
ABEMA解説の2日目は行方尚史九段と佐々木慎七段だった。女流棋士がいないが、この日は女流順位戦が15局あり、女流棋士の多くが東西の将棋会館に出張っていた。「女流棋士不在につき男性棋士のみでの解説」というケースは今後も起こるだろう。
その行方九段と佐々木七段の語りがポソポソしていて、よく聞き取れない。絵的にも地味で、なんだか男子校の雰囲気である。やはり聞き手に女流棋士は不可欠だと痛感した。
将棋は豊島竜王が香得になっていた。▲3八角が敵陣に直射しているのが気持ちいい。玉形も豊島竜王のほうが懐が深いと思った。すなわち寄せ合いになったとき、豊島玉のほうが可動域が広い。羽生九段の片美濃囲いは天井(△8三歩)がなく、スース―している。
というところで豊島竜王▲9二香(図)。香の頭に香を打つというあまり見ない筋で、私が本局で最も驚いた手である。AIなら躊躇なく打つが、こんな手がプロの実戦でも出てくるようになったのかと思う。豊島竜王の思考は柔軟である。

もはや豊島竜王優勢で、この将棋は逃さないと思った。食後にABEMAを見ると、盤上に▲9三角が置かれていた。後手はほとんど受けなしに見えるが、果たしてここで、羽生九段が投了した。
う~む、私が危惧していた結果になってしまった。豊島竜王は盤石の体勢で防衛に王手。羽生九段はいよいよ後がなくなってしまった。専門誌だったら「七番勝負は終わるまで分からない」となるのだろうが、いやいやどうも……というところである。
しかも前局は羽生九段の体調不良につき、延期(休止)となっていた。通常の予選対局なら不戦敗になっているところで、並の棋士だったら豊島竜王への負い目で、第4局は相当に戦いづらいところだ。
そんな2人はこの6日前に王将戦リーグ最終戦を戦ったが、豊島竜王が115手で競い勝ち、プレーオフに進出した。2人の対局はここまで後手番が10連勝だったが、とりあえずピリオドを打った。
さらに豊島竜王は4日前にJT杯日本シリーズで優勝し、ますます意気高し。いっぽう50歳になった羽生九段は白髪が目立ち、弱々しささえ感じられる。大山康晴十五世名人が50歳になってもギラギラで、「五十歳の新人」を宣言したのとは対照的で、どこからどう見ても、羽生九段の旗色が悪かった。
なお本局もABEMAで中継があったが、私はあまり見る気がしなかった。よって、本局の手順のほとんどは、対局後に確認したものである。
将棋は先番豊島竜王の横歩取りになった。シリーズ初の戦型である。最近は青野流が猛威をふるい横歩取りも減少傾向にあるというが、羽生九段は横歩取りの後手も勝率がよく、望むところだっただろう。なお本局は18手目まで、先の王将戦リーグと同じ進行だった。横歩取りは後手が誘導できるから、羽生九段に修正手があったのかもしれない。
羽生九段、32手目△6二玉。2手前に△5二玉だったから明らかな手損だが、横歩取りは陣形が低いほうが戦いやすく、この辺の手損は関係ないのだろう。むろんこのあたりも定跡があるのだろうが私にはチンプンカンプンで、とうてい指す手が分からない。そこを正確な指針を持ち、破綻なく進める棋士に畏敬の念を抱くのである。こういう将棋こそ解説をしっかり聞き、一手一手の意味をしっかり理解すれば、相当棋力が向上すると思う。私にはその時間があったが聞く資格がないので、そこまではしなかったが。
将棋は互角のまま2日目に入ったが、気のせいか羽生九段が劣勢に見えた。最終的には豊島竜王が勝つに違いないというこの感じ、25日に終了したプロ野球の日本シリーズ・ソフトバンクと巨人の関係によく似ていた。
ABEMA解説の2日目は行方尚史九段と佐々木慎七段だった。女流棋士がいないが、この日は女流順位戦が15局あり、女流棋士の多くが東西の将棋会館に出張っていた。「女流棋士不在につき男性棋士のみでの解説」というケースは今後も起こるだろう。
その行方九段と佐々木七段の語りがポソポソしていて、よく聞き取れない。絵的にも地味で、なんだか男子校の雰囲気である。やはり聞き手に女流棋士は不可欠だと痛感した。
将棋は豊島竜王が香得になっていた。▲3八角が敵陣に直射しているのが気持ちいい。玉形も豊島竜王のほうが懐が深いと思った。すなわち寄せ合いになったとき、豊島玉のほうが可動域が広い。羽生九段の片美濃囲いは天井(△8三歩)がなく、スース―している。
というところで豊島竜王▲9二香(図)。香の頭に香を打つというあまり見ない筋で、私が本局で最も驚いた手である。AIなら躊躇なく打つが、こんな手がプロの実戦でも出てくるようになったのかと思う。豊島竜王の思考は柔軟である。

もはや豊島竜王優勢で、この将棋は逃さないと思った。食後にABEMAを見ると、盤上に▲9三角が置かれていた。後手はほとんど受けなしに見えるが、果たしてここで、羽生九段が投了した。
う~む、私が危惧していた結果になってしまった。豊島竜王は盤石の体勢で防衛に王手。羽生九段はいよいよ後がなくなってしまった。専門誌だったら「七番勝負は終わるまで分からない」となるのだろうが、いやいやどうも……というところである。