
第3図以下の指し手。△6六歩▲3三と△6四飛▲5六銀△6七銀▲同銀△同歩成▲同金△6六歩▲7七金△2七歩(第4図)
上川香織女流二段はじっと△6六歩。これにシビれた。先の▲6五歩△同歩を咎められた形だ。私はふらふらと▲3三とと桂を取ったがこれが大悪手で、手順に△6四飛と回られ、6七の地点に受けがなくなってしまった。戻って▲3三とでは、まだ▲5六銀だった。
本譜の▲5六銀は一手遅く、△6七銀から△6六歩が厳しい。ここの百叩きがイヤなのでこの△6六歩は▲同金と取りたいが、金のいけにえも大きい。それで▲7七金と寄った。
上川女流二段は「それはいい逃げ方ですね」とつぶやき△2七歩。

第4図以下の指し手。▲5六桂△6七歩成▲同金△同飛成▲同玉△2八歩成▲7八銀△5五銀▲6八玉△1九と(第5図)
△2七歩では△6七角もあった。▲同金は△同歩成、▲8八玉は△4九角成だ。△2七歩は、▲同飛の交換をしておけば、この△4九角成のとき、▲2七飛に当たるといいう仕掛けである。つまり▲7七金はいい手でもなんでもない。下手陣はすでに潰れているのだ。
私は▲5六桂と打った。△2八歩成なら▲6四桂が両取りの先手となる。しかし△2八歩成では△6七銀▲8八玉△5六銀成がある。▲5六桂は悪かったと反省していたら、上川女流二段は△6七歩成。以下▲同金△同飛成から△2八飛成とされ、金1枚を損してしまった。
ここへ来てのポカに、もうアホらしくなって投了を考えたが、まだ60手にも達していない。歯を食いしばって▲7八銀と入れた。

第5図以下の指し手。▲3一飛△2八飛▲4八歩△2九飛成▲3八銀△5六銀▲2九銀△4六角(途中図)

▲7七玉△5七銀不成▲5六歩△6八銀不成▲8六玉△7四桂(投了図)
まで、74手で上川女流二段の勝ち。
もう下手敗勢だが、▲3一飛もマズかった。当初は▲2一飛と打つつもりが、△5四角を気にした。気にしすぎである。
これには△2八飛が当然の王手。私は▲4八歩だが、△2九飛成に▲3八銀と1枚使わされたのが痛い。
上川女流二段は△5六銀。これは意外で、ふつうに竜を逃げとくだけでも勝勢だったのではないか。私があまりにもヘボなので、上川女流二段も緩んだのかもしれない。
私は▲2九銀と竜を取ったが、▲5六同歩は今度こそ竜を逃げられ、勝負所を逸すると思った。
そこで△4六角がふわっとした手で、下手に指す手がないのに驚いた。▲5六歩もおかしな手だが、ほかに指す手が分からなかった。
以下、△7四桂に、もう堪えられず投了した。「相変わらず見切りが早いですね」と上川女流二段。でもここは、攻防ともに見込みがない。

感想戦では、第3図からの▲3三とを悔やんだ。ここは▲3三とを楽しみに▲5六銀とすべきで、△6四飛には▲5八金右(参考図)と徹底的に受けるべき、という結論になった。

もっとも参考図以下、△6七銀▲同銀△同歩成▲同金直△6六歩▲6八金引△6七銀▲同金右△同歩成▲同金△6六歩で、下手陣は壊滅である。ということは遡って、▲6五歩の開戦が敗着ということだ。指導対局の貴重な機会だったのに、つまらぬ将棋を指してしまった。
しかしまだ15時40分くらいなので、時間はたっぷり残っている。すぐに2局目となった。
初手からの指し手。▲2六歩△3四歩▲7六歩△5四歩▲4八銀△5五歩▲6八玉△5二飛▲7八玉△6二玉▲5八金右△7二玉▲6八銀△6二銀(第1図)
2局目は上川女流二段がゴキゲン中飛車を採用した。これが上川女流二段の最も得意な戦法ではなかろうか。私は作戦を決めかねているまま▲6八銀。上川女流二段もつられるように△6二銀だが、これは珍しい気がした。

第1図以下の指し手。▲6六歩△6四歩▲7五歩△6三銀▲6七銀△4二銀▲7六銀△5三銀(第2図)
私は▲6六歩と突いた。上川女流二段は△6四歩と突き、「それなら△6二銀は失敗だったな」とつぶやいた。
私は▲7五歩。前局は急戦で失敗したので、本局は位取りでじっくり指すことにした。上川女流二段は「柔軟(な考え)ですね」とつぶやいて△6三銀。私は上川女流二段の指し手に呼応して指したわけではないので、バツが悪かった。

第2図以下の指し手。▲6五歩△5四銀直▲6四歩△同銀▲6七金△5一飛▲5六歩△3三角▲5五歩△同銀右▲5六歩△6四銀▲5七銀△8二玉▲6八金上△7二金▲8六歩△4四歩▲8五歩(第3図)
私は▲6五歩と1歩を手にしようとしたが、上川女流二段は「ここから戦うの好きですね」と△5四銀直と立ち、それすら許さなかった。
私の▲6七金に上川女流二段は△5一飛と引いたが、ここはじっと△6五歩と打たれるのがイヤだった。私は▲5六歩と突き、以下△5五の位を解消することに成功した。▲5七銀と右銀も活用し、▲6八金上と立って、前局のような惨敗にはならないと思った。

第3図以下の指し手。△6五歩▲9六歩△9四歩▲2五歩△3二金▲7七角△6三銀▲3六歩△7四歩▲同歩△7五歩▲8七銀△7四銀(第4図)
上川女流二段はじっと△6五歩。こういう手がいちばんイヤだ。私は▲2五歩と伸ばす。次に▲2四歩△同歩▲2二歩△同角▲2四飛の狙いで、上川女流二段は△3二金と備えた。
なんだか私の将棋ばかり進んでいるが、ほかの2局はどうなっているのだろう。
上川女流二段は△7四歩と突き、私は7筋の位を奪回されてしまった。これでは作戦の失敗を認めざるを得ない。上川女流二段は△7四銀と出て、「昭和の将棋みたい。最近、大山―中原戦とか並べてるんですよ」と言った。温故知新で、こういうごちゃごちゃした将棋が面白いのだ。
「組んずほぐれつですね」と私は返したが、上川女流二段は反応しなかった。
第4図、私はそろそろ攻めなければならない。

(つづく)