11月19日午後、そろそろ職安に行こうと思いスマホを見たら、Tod氏からメールが入っていた。本日のLPSA麹町サロン・上川香織女流二段の回のお誘いである。当日ながら空きがあるらしい。職安も大事だがそこはそれ、上川女流二段にはだいぶご無沙汰しているので、久しぶりに教えてもらうことにした。
今日は小諸そばに寄るのは時間的に無理。四ッ谷駅から直接サロンに向かい、入室したのは14時55分だった。先客はTod氏と、この前の男性氏だ。ということは、島井咲緒里女流二段のときと同じメンバーになる。
私があまりにも早く着いたので、Tod氏が戸惑っている。あれからTod氏からもう1回メールが来たが、そのとき私はもう、山手線に乗っていたのだ。
上川女流二段はにこやかに迎えてくれた。「あらあ……今日は2人だけなので、のんびり指そうかと思ってたら……お元気でした?」
「いえいえどーも、元気じゃないですよ。就職は決まらないし、髪の毛は薄くなってくるし」
「就職……。髪の量はそんなに変わってないですよ。でも白髪が増えたかな」
「……」
「もう1年以上になりますか? けやきカップでお見掛けしたような……」
「昨年のですか?」
最近は将棋イベントにもご無沙汰なので、ケヤキかっぷもいつのことだか、とっさに思い出せない。
「大野教室には行ってるんですか?」
上川女流二段の質問攻勢は続く。
「半年に1回くらいですね。あれ? 先生は最近対局がありませんでした?」
「昨日ですよ。負けちゃいましたよ、長沢さんに」
「おおゥ、たしか清麗戦でしたか? でも白玲戦があるから。27日でしょ。初戦はどなたですか?」
「よく(日程を)ご存じですね。初戦は甲斐さんです。やんなっちゃう、もう」
「でも初戦だからいいじゃないですか。終盤で当たるとキツイけど」
上川女流二段とお話するのは久し振りだが、お互いブランクを感じない。三者と駒を並べ、対局開始となった。
初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△3二飛▲6八玉△4二銀▲7八玉△3五歩▲2五歩△3四飛▲4六歩△4三銀▲4七銀(第1図)
上川女流二段は島井女流二段のときと比べ、椅子が90度右に向いている。私は前回から90度反時計回りの席に座ったので、上川女流二段の左顔を鑑賞する形だ。Tod氏は向かい側、男性氏は私の左手に座っている。
上川女流二段は、詰将棋が2題載った対局カードをくれた。この辺のアイテムは各女流棋士が自由に作っているらしい。
「振り駒ですか?」のジョークを無視して、私が先手で指した。居飛車明示に、振り飛車党の上川女流二段は三間飛車に振った。こうなったら石田流に組んでもらい、それを崩したい。▲2五歩を決めずに、▲6八玉~▲7八玉とする。上川女流二段はついに△3五歩と突いた。
第1図以下の指し手。△1四歩▲6八銀△6二玉▲6六歩△5四銀▲9六歩△9四歩▲6七銀△7二銀▲5六銀左△6四歩▲6八金△7一玉▲1六歩△5二金左(第2図)
上川女流二段の容姿はむかしと変わらない。ひょっとしたら、むかしからフケ顔だったのかもしれない。
△1四歩は必要な手で、後の△1三角を見ている。
私の▲6六歩は狙いの手で、△6四歩と受ければ▲5六銀左から▲6五歩とし、1歩交換をしつつ角道を通す。△6四歩としなければ▲6五歩とし、美濃囲いの発展を防ぐとともに、角道を通すつもりだ。ところが上川女流二段に△5四銀と上がられ、作戦に齟齬をきたした。
私の▲9六歩に△9四歩と突き返し、「(今日は)暑いですね」と上川女流二段。確かに11月中旬としては異例の温かさだ。だけど私の心は寒い。
私の▲5六銀左は△4五歩の開戦を警戒すると同時に、再びの▲6五歩を見ている。そこで上川女流二段は△6四歩。またも私の狙いを未然に防がれた。
△5二金左に、次の手は早まったかもしれない。
第2図以下の指し手。▲6五歩△同歩▲4五銀△同銀▲同歩△3三角▲2四歩△4五歩▲3三角成△同桂▲2三歩成(第3図)
Tod氏はまたも平手で、飛車を振り、穴熊に囲っていた。男性氏は角落ちだが、堂々の布陣だ。
私は▲6五歩と突いたが、やや焦った。しかしこちらも待つ手があまりない。上川女流二段は「激しいですね」とつぶやきつつ△同歩。1歩得して6五の位を張り、大きな手だ。
そこで▲4五銀と出る。下手は▲4七銀・▲3八金と守っているから右辺は固いが、6筋が薄いのが懸念事項だ。上川女流二段は△4五同銀のあと、△3三角と上がった。
私の▲2四歩は手筋で、△同角も△同飛も▲2五銀がある。また捨て置けば▲2三歩成である。上川女流二段は「こうでしょうねえ、振り飛車党としては」と△4五歩。これが振り飛車らしい手で、上手ペースになってしまった。
ここで▲2三歩成は△8八角成▲同玉△3六歩くらいで、下手陣はバラバラで戦えない。よって▲3三角成から▲2三歩成としたが、一手遅れている感じだ。
果たして次の手にシビレた。
(つづく)
今日は小諸そばに寄るのは時間的に無理。四ッ谷駅から直接サロンに向かい、入室したのは14時55分だった。先客はTod氏と、この前の男性氏だ。ということは、島井咲緒里女流二段のときと同じメンバーになる。
私があまりにも早く着いたので、Tod氏が戸惑っている。あれからTod氏からもう1回メールが来たが、そのとき私はもう、山手線に乗っていたのだ。
上川女流二段はにこやかに迎えてくれた。「あらあ……今日は2人だけなので、のんびり指そうかと思ってたら……お元気でした?」
「いえいえどーも、元気じゃないですよ。就職は決まらないし、髪の毛は薄くなってくるし」
「就職……。髪の量はそんなに変わってないですよ。でも白髪が増えたかな」
「……」
「もう1年以上になりますか? けやきカップでお見掛けしたような……」
「昨年のですか?」
最近は将棋イベントにもご無沙汰なので、ケヤキかっぷもいつのことだか、とっさに思い出せない。
「大野教室には行ってるんですか?」
上川女流二段の質問攻勢は続く。
「半年に1回くらいですね。あれ? 先生は最近対局がありませんでした?」
「昨日ですよ。負けちゃいましたよ、長沢さんに」
「おおゥ、たしか清麗戦でしたか? でも白玲戦があるから。27日でしょ。初戦はどなたですか?」
「よく(日程を)ご存じですね。初戦は甲斐さんです。やんなっちゃう、もう」
「でも初戦だからいいじゃないですか。終盤で当たるとキツイけど」
上川女流二段とお話するのは久し振りだが、お互いブランクを感じない。三者と駒を並べ、対局開始となった。
初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△3二飛▲6八玉△4二銀▲7八玉△3五歩▲2五歩△3四飛▲4六歩△4三銀▲4七銀(第1図)
上川女流二段は島井女流二段のときと比べ、椅子が90度右に向いている。私は前回から90度反時計回りの席に座ったので、上川女流二段の左顔を鑑賞する形だ。Tod氏は向かい側、男性氏は私の左手に座っている。
上川女流二段は、詰将棋が2題載った対局カードをくれた。この辺のアイテムは各女流棋士が自由に作っているらしい。
「振り駒ですか?」のジョークを無視して、私が先手で指した。居飛車明示に、振り飛車党の上川女流二段は三間飛車に振った。こうなったら石田流に組んでもらい、それを崩したい。▲2五歩を決めずに、▲6八玉~▲7八玉とする。上川女流二段はついに△3五歩と突いた。
第1図以下の指し手。△1四歩▲6八銀△6二玉▲6六歩△5四銀▲9六歩△9四歩▲6七銀△7二銀▲5六銀左△6四歩▲6八金△7一玉▲1六歩△5二金左(第2図)
上川女流二段の容姿はむかしと変わらない。ひょっとしたら、むかしからフケ顔だったのかもしれない。
△1四歩は必要な手で、後の△1三角を見ている。
私の▲6六歩は狙いの手で、△6四歩と受ければ▲5六銀左から▲6五歩とし、1歩交換をしつつ角道を通す。△6四歩としなければ▲6五歩とし、美濃囲いの発展を防ぐとともに、角道を通すつもりだ。ところが上川女流二段に△5四銀と上がられ、作戦に齟齬をきたした。
私の▲9六歩に△9四歩と突き返し、「(今日は)暑いですね」と上川女流二段。確かに11月中旬としては異例の温かさだ。だけど私の心は寒い。
私の▲5六銀左は△4五歩の開戦を警戒すると同時に、再びの▲6五歩を見ている。そこで上川女流二段は△6四歩。またも私の狙いを未然に防がれた。
△5二金左に、次の手は早まったかもしれない。
第2図以下の指し手。▲6五歩△同歩▲4五銀△同銀▲同歩△3三角▲2四歩△4五歩▲3三角成△同桂▲2三歩成(第3図)
Tod氏はまたも平手で、飛車を振り、穴熊に囲っていた。男性氏は角落ちだが、堂々の布陣だ。
私は▲6五歩と突いたが、やや焦った。しかしこちらも待つ手があまりない。上川女流二段は「激しいですね」とつぶやきつつ△同歩。1歩得して6五の位を張り、大きな手だ。
そこで▲4五銀と出る。下手は▲4七銀・▲3八金と守っているから右辺は固いが、6筋が薄いのが懸念事項だ。上川女流二段は△4五同銀のあと、△3三角と上がった。
私の▲2四歩は手筋で、△同角も△同飛も▲2五銀がある。また捨て置けば▲2三歩成である。上川女流二段は「こうでしょうねえ、振り飛車党としては」と△4五歩。これが振り飛車らしい手で、上手ペースになってしまった。
ここで▲2三歩成は△8八角成▲同玉△3六歩くらいで、下手陣はバラバラで戦えない。よって▲3三角成から▲2三歩成としたが、一手遅れている感じだ。
果たして次の手にシビレた。
(つづく)