
第5図以下の指し手。▲8六角△6五桂▲5一飛△6四桂▲同角△同歩▲5四桂△4一金(投了図)
まで、77手で大野七段の勝ち。
近場で観戦していた佐藤氏が、「よく見つけたね……」とつぶやく。私が何かいい手を指したかと困惑したが、右のShin氏がいい手を指したのだろう。
やがてバタバタを手が進み、Shin氏が勝った。Shin氏、大野八一雄七段に平手で勝つとは大したものである。そして佐藤氏が感心した手は、やはりShin氏の「▲7五香」だった。
2人が平手で勝って、これでは私も勝たねばならないが、旗色は悪い。第5図で▲3三角成と行っちゃいたかったが、角桂交換はさすがに抵抗がある。それで△4二金に狙いをつけて▲8六角と上がった。が、切るなら切れと△6五桂と跳ばれると、やはり苦しい。
私は角切りを含みに残して▲5一飛と下ろしたが、そこで△6四桂が攻防で、これで下手は何の楽しみもなくなってしまった。私は▲同角と暴発し、▲5四桂に△4一金まで投了した。

感想戦は、第3図の周辺を軽くやった。大野七段は桂得をした時点で、やれる、と確信したという。
私が帰宅してから後悔したのは第5図での▲8六角で、ここはやはり▲3三角成といっちゃうべきだった。これに△同金なら▲7二飛。上手の応手如何で▲5四桂か▲7三飛成かを決める。▲4五桂もあるかもしれない。また△3三同玉なら▲7一飛がある。対局中はこの手が見えず、指せなかった。
下手は▲7三飛成とした時△5五角があるが、桂を2枚持てば、まだ勝負所があったと思う。
感想戦を終えると、Shin氏が「じゃあ(私と)やりましょう」と言う。もちろん私も望むところだが、時刻は午後10時10分。お互い将棋バカではある。
和室で指すことになったが、室内が暗い。私の未来も暗いが、部屋も暗い。みんな暗い。
将棋は私の後手で、相矢倉になった。矢倉の後手番は急戦が定番だが、私はその指し方に疲れたので、Shin氏に大人しく追随した。
私は△6四角と覗く。これに▲4六角(第1図)とぶつけたのがShin氏の作戦だ。

これに△同角は▲同歩で4筋の歩を伸ばさせるのが面白くない。私は△5三銀と上がり、▲第2図と進行した。

ここがまた難しい局面で、△1四歩は▲6四角△同銀に▲2六銀で、次に▲1五歩がある。
そこで発作的に△7三桂、と跳ねたのだが、▲1五歩と伸ばされ苦戦。しかもよく見ると、先手には▲6四角△同歩(△同銀が正着)▲4一角の狙いが残っている。しかしこちらから角を換えたくないので、恥を忍んで△4二金寄とした(▲4一角の防ぎ)。
が、Shin氏は▲6八角と引く。次に▲6五歩△同桂▲6六銀で、桂取りが受からない。よって私は△6二銀と引いたが、こんな退廃的な手を連発しては、大作戦負けである。
こっちは△8五歩を突いていたのに右桂を跳ねたから、攻める筋がない。仕方ないから△9五歩▲同歩△9七歩▲同香に△同角成と切って捨て、▲同桂に△9五飛と走った。角香換わりの駒損だが、端を破って勝負、である。
その後私は桂、銀を取ったが、Shin氏も的確に反撃し、どうも私のほうが悪くなった。

局面は進んで第3図。以下、▲4五香△4四歩▲9一飛△3一歩▲2四歩△同歩▲4四香△同金▲2三歩と進み、ここで私は投了した。

手順中、▲9一飛には△4一桂が固かったが、戦力が減るので指し切れなかった。
感想戦。第1図でShin氏は△1四歩を予想していたという。そこで▲6四角△同銀▲2六銀がShin氏の予定。それがイヤだから私は△7三桂と跳ねたのだが、Shin氏はありがたいと感じたという。やはりこの手が敗着だったようだ。
終盤に進み、第2図の▲4五香がShin氏いわく手順前後で、▲9一飛△4一歩の交換をしてから▲4五香と打つべきだったという。まあ私は元から形勢が悪かったから、どっちでもいい。
本譜△3一歩で△4一桂なら、▲2四歩△同歩▲3五銀、とShin氏は言った。しかし以下△2三銀▲2四銀(▲4四香は△同銀▲同銀に△4六角の王手飛車で粘る)△同銀▲同飛△2三歩は、△4六角の王手もあるから後手も粘れる。
そこで大野八一雄七段の教えは▲3五銀に代えて▲3五銀打!(参考図)で、これなら4六に銀が頑張っているから△4六角がない。次は▲2四歩や▲4四香を狙って先手必勝である。

なるほど「▲3五銀打」は手厚い手で、こういう手が私たちは指せないのだ。今日はこの手を教えていただいただけで、教室に来た甲斐があった。
もう午後11時近くになり、これでお開きである。私は3戦全敗でまったくいい所がなかった。
私「来るんじゃなかったですよオ」
大野七段「またそんなことを言う」
Shin氏が大野七段に、詰将棋のプリントを所望した。Shin氏は明日からTaga氏、Ok氏と3人で、地方に将棋合宿に行くという。2人が指していると1人が余るから、ひとりのときに詰将棋を解くという。
3人で将棋合宿に行くのもアレだが、空き時間も将棋の勉強に充てるとは、何たる将棋バカか。私も誘われたが、私は見たいテレビ番組があるので、丁重にお断りした。
さて、食事である。メンバーは大野七段、W氏、Shin氏、私の4人である。駅前の中華料理屋は満席だったが、ちょいと先の日高屋は空いていた。そしてここが肝心だが、4人が同じテーブルに座れた。このご時世なので、1テーブルに2人しか座らせない店舗もあるのだ。
私は昼も日高屋のタンメンだったので、ここでは炒飯と餃子にした。W氏は3人前くらい頼み、その食欲に脱帽した。
店を出てShin氏と別れ、3人で駅まで行くとき、「そういえば、Shinさんは去年のいまごろ、将棋熱が冷めたと言って、教室に来なくなったんだよね」とW氏が言った。
そういえばそうで、Shin氏は将棋から距離を置いていたのだ。だが1年も経たずに現場復帰し、以前にも増して、将棋のトリコになってしまった。ここが将棋の恐ろしいところである。
私も将棋は好きだが、最近は他者との交流のアイテムのひとつに利用しているにすぎない。
帰宅後、大野七段との指導対局日を調べてみた。新宿将棋センターは1月6日だったが、私は8月2日に大野教室で指導対局を受けていた。