ちょっと前の話である。
その日、オヤジは歯医者で、小雨が降っていたこともあり、私がクルマで歯医者まで送っていった。ま、いつものことである。
そのあと私は治療が終わるまで時間を潰すのだが、私はクルマをほとんど運転しないので、ちょっと走ったのちにエンジンを切ると、そのままバッテリーが上がって、エンジンがかからなくなることがある。それで近所のガソリンスタンド等のお世話になったことが、2回あった。
それに懲りて、家に着くまではエンジンを切らないことにしている。しかし路上駐車でアイドリングはできないので、現在では、しばしアテもなくクルマを走らせている。
とりあえず大学病院まで足を伸ばし、戻ってきたのち、墓地の中を走る。しかし今回は墓地の中を、いつもは通らない道を行った。
道はゆるゆるとカーブを描きながら、下ってゆく。そのままどこかの道に出るだろうと思ったら、JRの線路に阻まれ、唐突に道が終わっていた。この先にトンネルはなく、文字通りのふん詰まりである。
エエッ!?!?
私は心底驚いた。予期しない展開だった。
墓地の近くだから、道は我がクルマがギリギリ1台通れるのみ。しかも急な坂道で、右側は塀が続き、左側はフェンス、その手前は民家だった。
Uターンをするスペースはまったくないので、ここからバックで、自力で脱出しなければならない。しかも雨が降っている。大変な状況になってしまった。
私は気持ちを落ち着け、そろそろとバックをする。しかし右側の塀にこすりそうで、つい元に戻ってしまう。
なら右側に余裕を持ち、左側に寄ればいいのだが、すぐ先は民家の塀で、こちらにぶつけるわけにはいかない。
時間はたっぷりあるから焦るな、と言い聞かせつつも、オヤジから電話がかかってきたら、この状況を説明しなければならない。そうなると面倒だから、やはり早く脱出しなければならない。
しかし、バックで急な坂道をせり上がるというのは難儀だ。そもそも、内輪差と外輪差がうまく把握できない。クルマは派手な音を響かせ、徐々に上がる。と思うと軌道修正でまた元に戻る。もう、どうなってもいいからバックしちゃいたいが、それをやったら終わりだ。
私は窓を開けて後ろを見る。雨が盛大に入ってくるが、もう仕方ない。さっきまでの「平和な日々」が、懐かしく感じられる。
クルマは相変わらず盛大な音を立てる。不幸中のわずかな幸いはオートマだったことで、これがマニュアルだったら、バックの坂道発進で、大変なことになっていた。
10回以上ごちゃごちゃやって、ようやく最初のカーブを脱出できた。ガクン、と音がしたが、右前のタイヤが縁石に乗り上げたようだ。
そこからも慎重に運転し、ようやく魔のクランクを脱出することができた。
と、そこでオヤジから治療終了の電話がかかってきた。
もう、こんな思いはしたくない。運転は、知っている道に限ると思った。
その日、オヤジは歯医者で、小雨が降っていたこともあり、私がクルマで歯医者まで送っていった。ま、いつものことである。
そのあと私は治療が終わるまで時間を潰すのだが、私はクルマをほとんど運転しないので、ちょっと走ったのちにエンジンを切ると、そのままバッテリーが上がって、エンジンがかからなくなることがある。それで近所のガソリンスタンド等のお世話になったことが、2回あった。
それに懲りて、家に着くまではエンジンを切らないことにしている。しかし路上駐車でアイドリングはできないので、現在では、しばしアテもなくクルマを走らせている。
とりあえず大学病院まで足を伸ばし、戻ってきたのち、墓地の中を走る。しかし今回は墓地の中を、いつもは通らない道を行った。
道はゆるゆるとカーブを描きながら、下ってゆく。そのままどこかの道に出るだろうと思ったら、JRの線路に阻まれ、唐突に道が終わっていた。この先にトンネルはなく、文字通りのふん詰まりである。
エエッ!?!?
私は心底驚いた。予期しない展開だった。
墓地の近くだから、道は我がクルマがギリギリ1台通れるのみ。しかも急な坂道で、右側は塀が続き、左側はフェンス、その手前は民家だった。
Uターンをするスペースはまったくないので、ここからバックで、自力で脱出しなければならない。しかも雨が降っている。大変な状況になってしまった。
私は気持ちを落ち着け、そろそろとバックをする。しかし右側の塀にこすりそうで、つい元に戻ってしまう。
なら右側に余裕を持ち、左側に寄ればいいのだが、すぐ先は民家の塀で、こちらにぶつけるわけにはいかない。
時間はたっぷりあるから焦るな、と言い聞かせつつも、オヤジから電話がかかってきたら、この状況を説明しなければならない。そうなると面倒だから、やはり早く脱出しなければならない。
しかし、バックで急な坂道をせり上がるというのは難儀だ。そもそも、内輪差と外輪差がうまく把握できない。クルマは派手な音を響かせ、徐々に上がる。と思うと軌道修正でまた元に戻る。もう、どうなってもいいからバックしちゃいたいが、それをやったら終わりだ。
私は窓を開けて後ろを見る。雨が盛大に入ってくるが、もう仕方ない。さっきまでの「平和な日々」が、懐かしく感じられる。
クルマは相変わらず盛大な音を立てる。不幸中のわずかな幸いはオートマだったことで、これがマニュアルだったら、バックの坂道発進で、大変なことになっていた。
10回以上ごちゃごちゃやって、ようやく最初のカーブを脱出できた。ガクン、と音がしたが、右前のタイヤが縁石に乗り上げたようだ。
そこからも慎重に運転し、ようやく魔のクランクを脱出することができた。
と、そこでオヤジから治療終了の電話がかかってきた。
もう、こんな思いはしたくない。運転は、知っている道に限ると思った。