一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

過去のプレーオフ

2023-03-08 00:23:18 | 将棋雑記
藤井聡太竜王と広瀬章人八段が激突する第81期A級順位戦プレーオフは、8日に行われる。両者の対戦成績は藤井竜王10勝、広瀬八段3勝。実績からいっても藤井竜王の優位は動かないが、前期竜王戦七番勝負では広瀬八段が2勝を挙げ、内容的にも互角に渡り合った。本局も、広瀬八段が先手になれば、勝負の行方は分からない。
そのプレーオフだが、同星でプレーオフをするようになったのは、第5期から。そこで、現在までのプレーオフ全結果を記してみたい。
なお、○数字は順位。赤字と青字が名人挑戦者。赤字はそのまま名人奪取、青字は敗退を示す。

1952年 第6期 ①升田幸三八段(1勝)VS②大山康晴九段(2勝)
1953年 第7期 ③塚田正夫九段VS⑥松田茂行八段→①升田幸三八段(2勝)VS③塚田九段(0勝)
1954年 第8期 ①升田幸三八段(2勝)VS②塚田正夫九段(0勝)
1955年 第10期 ④花村元司八段(2勝)VS張出・升田幸三八段(1勝)
1957年 第11期 ②升田幸三王将(2勝)VS⑧塚田正夫九段(1勝)
1958年 第12期 ⑨大野源一八段VS⑩丸田祐三八段→①大山康晴前名人(2勝)VS⑨大野八段(0勝)
1959年 第13期 ①大山康晴九段(2勝)VS⑥塚田正夫九段(0勝)
1965年 第19期 ⑦加藤博二八段(1勝)VS⑩山田道美八段(2勝)
1971年 第25期 ③升田幸三九段VS⑥二上達也八段
1979年 第37期 ④大山康晴十五世名人VS⑤二上達也九段→③米長邦雄八段VS④大山十五世名人→①森雞二八段VS③米長八段
1983年 第41期 ①中原誠十段VS⑩谷川浩司八段
1986年 第44期 ⑦加藤一二三九段VS張出・大山康晴十五世名人→④米長邦雄十段VS張出・大山十五世名人
1987年 第45期 ④谷川浩司九段VS⑥桐山清澄棋聖→②米長邦雄九段VS④桐山棋聖
1990年 第48期 ⑤中原誠棋聖VS⑩高橋道雄八段
1992年 第50期 ⑥高橋道雄九段VS⑦大山康晴十五世名人→④南芳一九段VS⑥高橋九段→②谷川浩司竜王VS⑥高橋九段
1994年 第52期 ④谷川浩司王将VS⑨羽生善治四冠
1995年 第53期 ③中原誠永世十段VS⑩森下卓八段
1998年 第56期 ①羽生善治四冠VS④佐藤康光八段
1999年 第57期 ①谷川浩司九段VS③森内俊之八段
2003年 第61期 ④羽生善治竜王VS⑥藤井猛九段→②佐藤康光王将VS④羽生竜王
2006年 第64期 ①羽生善治四冠VS⑤谷川浩司九段
2015年 第73期 ⑦久保利明九段VS⑨広瀬章人八段→③渡辺明二冠VS⑦久保九段→②行方尚史八段VS⑦久保九段
2018年 第76期 ⑨久保利明王将VS⑩豊島将之八段→⑧佐藤康光九段VS⑩豊島八段→④広瀬章人八段VS⑩豊島八段→②羽生善治竜王VS⑩豊島八段→①稲葉陽八段VS②羽生竜王

以上23回。少なくとも第19期までは、挑戦者決定戦は三番勝負だった。そして名人奪取が8回、敗退が15回である。そのどれもドラマがあるが、3局だけ紹介しよう。
まずは第41期。若き谷川八段が名人9期の中原十段に挑んだ一局である。

△3四銀の角取りに、▲7三銀(第1図)と飛車取りに打ったのが、当時話題になった妙手。以下△9二飛▲6四銀成△同金▲同角△3五銀で角の丸損になったが、そこで▲6六飛と回ったのが狙いの一手。蟄居していた飛車が世に出て、一気に勝勢になった。
谷川八段はこの将棋に勝ち、20歳で名人挑戦を決めた。そして名人戦では加藤一二三名人に4勝2敗で勝ち、21歳で名人という大記録を打ち立てたのであった。

第2図は第44期の挑戦者決定戦。対局日は3月23日だったが朝から雪が降る異常な天気だった。大山十五世名人は休場明け。米長九段は本割1勝4敗から追い上げ、プレーオフに持ち込んだ。流れは米長九段だとみなが思ったが……。
第2図から大山十五世名人は▲2五歩△同歩▲1七桂とした。まったく大山十五世名人らしからぬ指し方だが、意表を衝かれた米長九段は、以下の指し方がチグハグになってしまう。対して大山十五世名人の指し回しが絶品で、完勝。かくて63歳の名人挑戦者が誕生した。

第3図は第64期の羽生四冠VS谷川九段戦。プレーオフは通常、7勝2敗で二者、6勝3敗で三者以上の参加となる。しかし本局は、本割8勝1敗である。いかに両者の力が傑出していたかが分かる。
角換わり相腰掛け銀で始まった本局、第3図で自陣が受けなしと見た羽生四冠は、▲3一角から詰ましにいった。しかしわずかに詰まず、投了。戻って▲3一角では、黙って▲5八金が最善だったというが、1分将棋でその手は指せない。
ガックリと首を垂れる姿は羽生四冠らしくなく、意外な気がした。それほどこの一局に懸けていたのだ。
いずれにしても、谷川十七世名人も羽生九段も、プレーオフを制して名人に就いた。となれば、藤井竜王もいい流れになっているといえまいか。
いっぽう、広瀬八段の藤井戦3勝のうちのもう1勝は、3年前の王将戦挑戦者決定リーグで挙げたもの。これに勝って自身は王将挑戦、そして藤井七段のタイトル戦初登場を阻んだのだ。今回も同じ結果になるだろうか。
本局を中継してくれるABEMA様には、感謝あるのみである。
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