一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

藤井王将、結局防衛

2023-03-13 23:48:07 | 男性棋戦
第72期王将戦第6局が11日・12日に行われた。ここまで先手番がすべて制し、藤井聡太王将3勝、羽生善治九段2勝。となれば次は羽生九段が勝つ番……という考えにはならず、第6局は藤井王将が勝つ、と考える将棋ファンが大半だったと思う。
将棋は角換わりになったが、羽生九段は早繰り銀に出た。対して藤井王将も早繰り銀。これは珍しい戦型になった。
羽生九段は3筋の歩を交換する。対して藤井王将は8筋に継ぎ歩をする。後手に1歩を与えると、この反撃があるのが先手はイヤミだ。
しかし羽生九段はそれを甘受し、好点に角を打った。対して藤井王将がナナメ2つ先のところに短考で角を打ったのが「新手」だった。
実はこの将棋、羽生九段自身に実戦例があり、昨年11月に、叡王戦九段戦予選で永瀬拓矢王座に指していた。
ただしそのときは羽生九段が後手で、先手の角打ちに対しては、3つ先のところに角を打っていた。そしてその結果は、羽生九段が負けていた。
ということは不安でしかないが、今回は、羽生九段が勝った側を持って指している。よって、本局の採用の理屈は通っているのだ。むろん事前研究に怠りはないだろうから、今回は羽生九段に相当なアドバンテージに思われた。
ところがどっこい、藤井王将もその将棋を研究していたのだ。その証左が短考の角打ちである。これにはさすがの羽生九段も面食らったのではあるまいか。
羽生九段は判断を誤っていたのだ。「永瀬王座VS羽生九段」は屈指の好カードである。藤井王将は嬉々として、駒を動かしていたに違いない。
盤面は藤井王将の支配だった。果たして1日目の封じ手時点で、羽生九段は、だいぶ模様が悪かったようである。ことに、3九に玉がいる羽生陣は、2筋と3筋に歩がない。
かつて羽生九段は、「囲いの歩は人間の皮膚にあたる」と書いていた。とすると今回の陣形は、いきなり肉が見えていることになる。これでは勝てない。
実際、あとは藤井王将の勝利への儀式を鑑賞するのみだった。
かくして、88手まで藤井王将の勝ち。王将も初防衛で、タイトルは総合で「12期」となった。まるでマンガである。
しかし、同じ防衛にしても、羽生九段がここまで藤井王将を苦しめるとは思わなかった。実際これまでのどの棋士より奮戦したわけで、この七番勝負はとても面白かった。
羽生九段の捲土重来に期待したい。
コメント (2)
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