一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

忠臣蔵2018

2018-05-26 23:46:23 | プライベート
このたびの関西学院大学と日本大学とのアメフトの反則を巡るやりとりは、日本中が注目する最悪の事態になってしまった。
不謹慎ではあるが、ここに至る経緯が、フィクションのようにおもしろいのだ。とくに、加害者の宮川選手が謝罪会見を開いたころから、俄然おもしろ味を増してきた。
22日の会見を見ると、彼はあばれる君みたいな雰囲気で、アメフト命の真っすぐな青年に見えた。真摯な応答に、みなが彼に感化したのである。
対して、翌日行われた内田前監督と井上前コーチの反論はあまりにも稚拙で、私は呆れるばかりだった。しかも広報担当氏という強烈な新キャラまで登場して、またも騒ぎが大きくなってしまった。とにかく予想もしない展開に私などは、現在進行形で3時間ドラマを観ているような錯覚に陥ったのである。
現在は内田前監督・井上前コーチと宮川選手の言い分が180度違っており真相は藪の中だが、個々の発言内容や態度から察するに、宮川選手の言葉に信用を置かざるを得ない。
なぜ、話がここまで大きくなってしまったのか。それは、内田前監督が悪人顔をしているからだと思う。あのふてぶてしい顔は、どうしたって忠臣蔵の吉良上野介を想起する。
日本人は忠臣蔵が大好きだ。私たちは無意識のうちに、忠臣蔵とアメフトの関係者を重ね合わせているのではなかろうか。
となれば井上前コーチは、上杉綱憲か清水一学の役回りか。
浅野内匠頭は被害選手となるが、ここでは宮川選手がその役を担っているように思う。とすれば四十七士は、日大アメフト部の現役選手ということになろうか。
話を戻し、仮に内田前監督からの「指示」があったとする。ここで不可解なのは、内田前監督の姿勢だ。日大は昨年の「甲子園ボウル」で、同大会27年振りの優勝を果たしたという。だったら実力はあるのだから、小細工はせず、横綱アメフトをやればよかったのではないか。「QBをつぶせ」などと物騒な言葉を使う必要はなかったと思うのだ。
まさかと思うが内田前監督には、相手選手に負傷をさせても、ゲーム内のことですべてが収まると考えていたのだろうか。
もしそうだとしたら、読みが甘すぎる。少なくとも週刊文春の音声データを聴く限りでは、まったく危機感が感じられなかった。監督があんな読みをしているようでは、とてもゲームに勝てません。
昨日25日は日大の学長が「出演」した。もはや3時間ドラマというより大河ドラマの趣である。
ところが肝心の謝罪会見はほとんど中身がなく、これでは何のためにお出ましになったのか、私は意味が分からなかった。
アメフト問題はまだ中盤戦であろう。これからどういった展開になり、どういった収束を見せるのか。
日大選手が世間にすべてをぶちまけて切腹。すなわち廃部、という展開は考え過ぎだと思うが、とにかく今回の一件、名人戦以上に目が離せない。
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今朝見た夢(2018.05.25)

2018-05-25 10:43:24 | 
今朝見た夢を記す。

私は北陸のローカルバスのバス停にいた。雨の中、私と多くの女子高生が乗車した。バスは座席のレイアウトがおもしろく、車内の中央が仕切られていて、運転席の後方、すなわち右半分の左右に、座席が4列設置されていた。
私は左側の前から3つめに座ったのだが、私の前、すなわち2つめの席は3つめより1メートル近く高くなっていて、そこに女子高生が座ったら私の目の前に彼女の太ももがドーンときて、ビックリした。
ほかの席も女子高生が座っていたので私は移動しなかったが、場面はすぐに変わってしまった。
そのあと、小さな郵便局で旅行貯金をすることになったのだが、そこは島根県の出雲大社か、岡山県倉敷市のイメージがあった。
私がATMの脇で貯金通帳を出してゴチャゴチャやっているうち、尿意で目が覚めた。
ほかもいくつか夢を見たのだが、憶えているのはこのくらいである。

なぜバスの座席があんな奇抜なレイアウトだったかと考えるに、前夜、4月11日に放送された「笑ってコラえて!4月号」のビデオを観たのだが、その「ダーツの旅」が岡山県美咲町柵原だった。レポーターの所ジョージが岡山駅から津山線に乗車したのだが、その気動車の車内の座席が一部おもしろく、それが脳裏に残っていたからだと思う。
夢で倉敷市がイメージされたのも、ダーツの旅の舞台が岡山県だったからと思われる。
バスに女子高生が出てきた理由は、前日に、ミニスカートの女子高生が跳ねているネット動画を観たからだと思う。あるいは、上野駅前で見た3人組の女子高生が脳裏に残っていたからだろうか。

いずれにしても、私はロクな生活をしていない。
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第11回世田谷花みず木女流オープン戦(4)

2018-05-24 00:24:13 | 将棋イベント

第3図以下の指し手。▲4三歩△同飛▲4四歩△同飛▲6六角△5五歩▲同銀△3四飛▲3五歩△同飛▲2四飛△3八飛成▲3九歩△4九竜▲2二飛成△5八と▲7九金(第4図)

両者のきもの姿は艶やかだが、どちらもそれをまとっていることを忘れているだろう。
中盤の難しい局面。森下卓九段が「昔、悪夢の端攻めというのがありましたけど」と言う。
先手はどこかで▲9五歩をやらねばならないということか。まず渡部女流二段は▲4三歩と打った。「後手はどこかで△4六角と打ちたい」が中村修九段説。▲2四飛の飛び出しも防ぎ、味がいい。
△4三同飛に▲4四歩△同飛。ここで▲6六角△3四飛▲1一角成となれば、次に▲6三香を見て先手も指せる、と中村九段。
果たして渡部女流二段は▲6六角と放ったが、中村女流三段は手筋の△5五歩。こういう手が私には指せず、さすがに中村女流三段は振り飛車を指しなれていると感心する。
渡部女流二段は▲5五同銀と取ったが、これは銀が守りから離れて辛かった。
以下お互い飛車を成ったが、と金が残っている分、後手がよい。先手はどこでやり損なったのだろう。

第4図以下の指し手。△6八歩▲9五歩△6九歩成▲8九金△6八と引▲9四歩△7八と▲同金(第5図)

△6八歩。この垂れ歩が見習うべき手筋で、マムシのと金攻めだ。渡部女流二段は待望の▲9五歩。森下九段は「なるほど」と唸り、中村九段「ここで(行った)」とつぶやいた。
しかし△6九歩成が大きい。渡部女流二段は▲8九金と、涙の辛抱だ。△6八と引には▲9四歩と取り込み、銀損を甘受する。
第5図で私なら△9二歩だが…。

第5図以下の指し手。△9八歩▲8五桂△9九竜▲7七玉△5九角▲8七玉△8九竜▲8八金△7八銀▲9六玉△9四香▲9五歩(第6図)

中村女流三段は△9八歩と打った。森下九段「なるほど。これは端攻めを逆用したということですね」
中村九段「厳しいですね」
渡部女流二段は▲8五桂と跳ぶ。端に攻めを増強しつつ、7七への逃げ道を作ったものだが、いかんせん形勢が離れすぎている。まったく、最近の両者の調子からは考えられない展開だが、それが勝負事でもある。
▲7七玉で中村女流三段が秒読みに入ったが、もう時間は要らないだろう。△5九角から収束に入った。

第6図以下の指し手。△8八竜▲同角△9五香▲同玉△8四金(投了図」
まで、90手で中村女流三段の勝ち。

△8八竜が決め手。以下△8四金まで、渡部女流二段が駒を投じた。
会場からすかさず、大きな拍手が起こる。中村女流三段、うれしい「3度目」の優勝となった。中盤からの構想が冴え、会心の出来だったのではないか。
一方渡部女流二段は、意外な拙局だった。こんなに不出来な将棋を見たのは初めてである。
まだ時間もあるので、大盤で感想戦となった。

森下九段「(途中図から)▲2四飛△2三歩▲2七飛△5五歩▲6五歩でしたか。本譜は△4七のと金が大きかった」
中村九段「▲9五歩もタイミングが遅かったかな」
渡部女流二段も、そうですね、と頷いていた。しかし本譜の、中村女流三段の攻めも巧妙だった。
さて表彰式である。グランドチャンピオン戦を制した中村女流三段は、さすがにうれしそうだ。
ここで最後の撮影タイムとなり、私も何枚か撮らせていただく。今度はうまく撮れただろうか。



客席には渡部女流二段が移動していた。中村女流三段の雄姿を撮るためであろう。渡部女流二段は残念だったが、この悔しさは来たる女流王位戦で晴らせばいい。
締めは岡田・世田谷副区長の挨拶である。「将棋は世代を越えて楽しめる、日本文化と思います。今日は白熱した戦いに、皆様も楽しんでいただけたのではないでしょうか」
個人的には最終局がちょっと残念だったが、とても楽しめた。来年もこの棋戦は開催されるだろうが、私がどんな肩書でここに来られるかは、不明である。
ともあれ出場女流棋士の皆様、お疲れ様でした。
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第11回世田谷花みず木女流オープン戦(3)

2018-05-23 00:06:57 | 将棋イベント
あのメモ用紙がなければ、今回のイベントがブログに書けない。しかしメモを探そうにも、この突風では、どこかに落ちた用紙など吹き飛ばされているだろう。
私は行きつ戻りつを繰り返したが、結局高島屋S・Cに戻った。
6階会場に上がったが、念のためエスカレーター周りを調べてみる。再び1階に降り、上がっていく。4階で渡部愛女流二段とバッタリ遭ったが、私はメモのことで頭が一杯で、「決勝戦ガンバッテください」と散文的なことしか言えない。
しかし…。渡部女流二段は5月にも女流王位戦五番勝負を控えて充実しているのに、自分は何をやっているのだろう。
6階は、子ども竜王戦の真っ最中だった。現在は中学生の決勝戦が行われていた。解説は島朗九段、聞き手は鈴木環那女流二段の黄金コンビである。
島九段が鈴木女流二段に、「今日は対局者だったのに聞き手にかりだしてしまって申し訳ありません」みたいなことを言う。鈴木女流二段は「いえいえ」と返す。相変わらず息が合っている。
局面は終盤である。もちろん双方秒読みだ。
「私もJT杯に出たことがあるんですけど、公開対局の場で秒読みは厳しいです」と島九段。「将棋は慌てないことが大事です」
形勢は先手君がいいようだが、後手君も追い上げている。後手勝ちか、と思った瞬間、先手君が後手玉を長手数で詰ました。中学生ともなると、さすがに将棋がしっかりしている。
私のすぐ近くに、谷口由紀女流二段と飯野愛女流初段がいた。私は両者に1局ずつ将棋を教わったことがあるが、べつに挨拶には行かない。あちらは私を憶えてないだろうし、行っても迷惑を掛けるだけである。
近くに中村修九段がいたので、一声掛けさせていただく。
「先生、昨年LPSAのパーティーでお会いした時、話をさせていただいた者なんですが、その時先生は、順位戦は初戦の(中村)太地戦に勝てば何とか…とおっしゃっていましたが、負けましたね。(順位戦の)後半は追い上げましたけど」
私のイヤミ?に、中村九段は苦笑する。今期の中村九段は期待していいのだろうか。
表彰式が行われ、飯野健二七段の講評となった。
「今日は朝早くからお疲れ様でした。決勝戦は格調高い、素晴らしい内容でした。
現在藤井聡太六段が活躍していますが、藤井六段も昔から強かったわけではなく、小学生のころからがんばっていました。
将棋は単なるゲームではなく、自ら考え、見出していくところに面白味があります…」

子ども竜王戦が滞りなく終わり、最後は本日のメインイベント、花みず木女流オープン戦・決勝戦である。
対局者は中村真梨花女流三段と渡部女流二段。2人が登場した。決勝戦の見どころのひとつは両者のきもの姿で、どちらも艶やかである。
対局前のインタビュー。
渡部女流二段「(きものを着て)気が引き締まります」
中村女流三段「自分らしい将棋が指せるようがんばります」
渡部女流二段「私もがんばります」
対局前の撮影タイムがあったが、私はうまく撮れなかった。
解説は中村修九段と森下卓九段。何と、島九段は登板しなかった。
森下九段「今回はグランドチャンピオン戦ということで、選りすぐりの強者が決勝に残りました」
中村九段「私は聞き手に回ります」
渡部女流二段の先手で対局開始となった。

初手からの指し手。▲2六歩△3四歩▲7六歩△4四歩▲4八銀△4二飛▲6八玉△9四歩▲7八玉△3二銀▲5八金右△7二銀▲5六歩△6二玉▲5七銀(第1図)

戦前の予想通り、中村女流三段の四間飛車となった。居玉で早めの端歩突きは、藤井システムというべきか。
森下九段「今の若い人は、藤井システムを(藤井)聡太システムと思っている人もいるらしいですね」
中村女流三段は△6二玉と上がり、通常の四間飛車に戻った。渡部女流二段は▲5七銀と上がり、左美濃か穴熊か。

第1図以下の指し手。△7一玉▲7七角△3三角▲2五歩△8二玉▲8八玉△4五歩▲9六歩△3五歩▲7八銀△5二金左▲8六歩△6四歩▲6六歩△5四歩▲6七金△6三金(第2図)

森下九段「美濃囲いに組むには△8二玉から△7二銀が一般的ですが、△7二銀を先にして、△7一玉から組む手順を見た時は、感動しました」
中村九段「……」
中村九段は、そんなに感動します? という顔だ。「まあ7一で戦いが起こった時はいいですね」
中村女流三段は△4五歩と角道を通し、渡部女流二段は▲9六歩。両解説者が「おー」と口を揃えた。
△3五歩には▲7八銀とし、左美濃を採った。森下九段「後手が急戦を狙ってくるので、左美濃に収めました」
△6四歩には▲6六歩△4四飛▲6五歩の進行が考えられる、と両九段。
森下九段「▲5五歩もありますか」
中村九段「(堂々と)符号を言わないでください」
なんだか、漫才を見ているようだ。
渡部女流二段はやはり▲6六歩とした。銀冠への第一歩だろうか。
中村九段「森下先生の銀冠は大したもんですから」
森下九段が銀冠に組めば必勝だった、と言う。
森下九段「イエイエ30年前の話で」

第2図以下の指し手。▲3六歩△5五歩▲2四歩△同歩▲3五歩△5六歩▲同銀△4六歩▲3四歩△2二角▲6五歩△7七角成▲同桂△4七歩成▲6四歩△6二金引(第3図)

▲3六歩に、行きましたねぇー、と解説陣。中村女流三段も△5五歩と応じ、「迫力がある手ですよ」と森下九段。以下▲3五歩△5六歩▲同銀△5五歩▲3四歩△2二角▲6五歩、が大盤に並べられる。本譜は△5五歩のところで△4六歩の突きを入れた。
渡部女流二段、とりあえず▲3四歩△2二角を入れる。
森下九段「中盤戦の始まりというところですか」
渡部女流二段は▲4六歩と戻さず、▲6五歩と行った。「なるほどいきなり行きました」
しかし角を換わったあと△4七歩成も大きい気がする。
▲6四歩△6二金引を利かせて、さて渡部女流二段はどうするのか。

(つづく)
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第11回世田谷花みず木女流オープン戦(2)

2018-05-22 00:14:32 | 将棋イベント
続いて準決勝の第2局である。対局者は鈴木環那女流二段と渡部愛女流二段。2人が登場し、中村雅子アナが「お2人とも白のジャケットですね」と言った。
まずは対局前のインタビュー。
鈴木女流二段「先ほど秒読みの声を聞いて、(あまりの緊張に)気を失ないそうになりました」
渡部女流二段「今日は先輩方が多いので、頑張ります」
聞き手は飯野愛女流初段。「今年は(対局者ではないので)気が楽で…」と観客を笑わせる。
解説は森下卓九段。「先ほどは相振り飛車でしたが、本局は相居飛車の将棋が見られるでしょう」
鈴木女流二段の先手で対局開始となった。▲7六歩△8四歩の出だしから、渡部女流二段は早くも8手目に△8五歩と伸ばす。そして△7三銀と出た。今は玉の囲いそっちのけで、速攻が主流になりつつある。
それを警戒してか、先手は▲2四歩の交換を保留している。
森下九段「幕末の棋聖天野宗歩は、飛車先の歩の交換は3つの得がある、と説いています」
ひとつは1歩を手持ちにする。ひとつは飛車先が直通する。そして残りの1つが意外に知られてないという。正解は「2五の地点に味方の駒が進出できる」で、私たちは分かったような分からないような反応である。それほど飛車先の歩の交換は得があるのに、昨今の将棋界は、それすら後回しにしている。「この天野宗歩の教えが、(近代)将棋二百年の歴史で覆されているのです」
森下九段は中村修九段と違い、言語明瞭である。
鈴木女流二段は雁木に構えた。この形になると必ず持ち出されるのが、増田康宏五段の「矢倉は終わりました」発言である。しかも増田五段は森下九段の弟子であり、避けて通れない話題だ。
「矢倉はなくなったわけではないんですが、雁木は金銀の連携がいいんですね」
と森下九段。「矢倉がじっくりした将棋なのに対し、雁木は急戦調です」
一手一手、緊張した指し手が続く。
鈴木女流二段▲5六歩(第1図)。私ならノータイムで△同歩だが、それだと▲5五歩とフタをする手があり、以下先手が盛り上がって必勝になるという。

「昔はコピー機がなかったんで、記譜を何枚も手書きするのが修行でした」
と森下九段が述懐する。「それから印刷できるようになったんですが、昔は青焼きといいまして、印刷用の紙が青かったんですね。時間が経つと変色してきまして…」
現在はコピーどころか、記譜もタブレットで付ける時代だ。
森下九段「ところで女流棋士会は、先日谷口由紀さんと高浜愛子さんが結婚しました。その前は藤田綾さんも結婚しまして、ショッキングな出来事が続きました。ショックを受けているファンの方も多いんじゃないでしょうか」
そこに触れますか、という感じである。私などその最たるものだが、ご丁寧に飯野女流初段まで、客席に挙手を取る。私は意地でも手を挙げるわけにはいかないが、それでも2人の方が正直に手を挙げた。ちょっと少ない気もするが、もっとも谷口女流二段の結婚にショックを受けた連中は、今日この場に来ていない。ファンは黙って去っていくものなのだ。
局面は第1図から、△5四銀▲5五歩△同銀▲2四歩△同歩▲2五歩と進む(第2図)。

この継ぎ歩も厳しい攻めで、ふつうに△2五同歩は▲同飛で十字飛車だ。よって森下九段は「△4四銀▲2四歩△2五歩▲同飛△3三桂▲2八飛△2五歩」と解説する。「△2五歩が大駒を近づける手筋です」
しかし以下▲4四角△同歩▲2三銀も先手相当だと思うのだがそこはそれ、とにかく△2五歩~△3三桂は、中級者必須の手筋である。
渡部女流二段は△5二飛と回った。そして▲2四歩に△2六歩がもう一つの大駒を近づける手筋で、実戦は▲2六同飛△4四角▲2八飛△2二銀まで、うまく2筋をまとめてしまった。森下九段は「なるほど」と叫ぶ。これからこのフレーズが頻出するのだろう。

そこから▲6九玉△7三桂と進み、▲6四歩(第3図)が、森下九段が唸った手。△6四同歩なら▲6三角だ。よって△同銀しかないが、先手は後手銀を退却させて、ポイントを挙げた。
以下▲4四角△同歩▲8三角。これが鈴木女流二段の狙いだったと思うが、私ならこの角で▲2三歩成△同銀▲4三角(参考図)△同金▲2三飛成と強襲するところ。でもそれは筋がわるいのだろう。

本譜はお互い馬を作りじっくりした戦いになったが、そこで▲4六歩(第4図)が失着となった。

以下△5六馬▲同歩に△4四角(第5図)が痛打。▲2八飛に△9九角成となり、大きく形勢が傾いてしまった。

鈴木女流二段は悪びれず▲2三歩成。再び森下九段が「なるほど」と唸る。九段の「なるほど」は大安売りであまり価値はないが、この手は△2五香に歩の受けを作ったものらしい。
ただ鈴木女流二段の狙いは別にあり、△2三同銀に▲4三角だった。つまりさっき私が考えた手だ。
しかし今回は似て非なる局面で、△4三同金▲2三飛成△2二香の時、3三桂がいるので▲4三竜とできない。
鈴木女流二段は▲3二銀と捨て飛車交換に持ち込んだが、これでは角損の攻めになってしまった。
もはや公開対局でなければ投げているだろうが、こういう場では詰まされるまで投げられないのが辛いところ。鈴木女流二段はかぶりを上げ虚空を見る。そこに何を見ていたか。
△3二同飛▲同竜△同玉▲2三歩△同歩▲5一飛に、△5七歩(第6図)が軽妙な一打。「なるほどぉ」と森下九段が唸る。もはや合いの手みたいだが、この手には心底感心しているふうだ。

▲5七同銀は△3九飛が厳しいので、▲5九金と引く。そして△8九馬▲1一飛成△7七歩(第7図)。

「△7七歩! いやこの筋にも歩が利くんですか!」
森下九段が再び唸る。実に厳しい手で、以下は渡部女流二段の寄せを見るばかりとなった。数手進んで、△6七馬と切った。返す刀で△5五桂(第8図)。

「ほぉー、こう打つということは…」と森下九段。もちろん即詰みを読み切っていたわけで、▲5五同歩に△8九角。先の△5五桂は、5六の地点に空間を開け、カナ駒を打ち込む意味だった。ここで鈴木女流二段が投了した。以下は▲5七玉△5六金▲5八玉△6七角成まで。
終局後のインタビュー。鈴木女流二段「途中までは森下先生の解説もにぎやかで、私もやれると思っていたんですが、△4四角のあたりからシーンとなってしまって、これはやっちゃったかな、と」
渡部女流二段はうれしい勝利で、ホッとした表情。まずは会心の一局だった。

これから子ども竜王戦が始まるが、私は昼食タイムである。私が贔屓にしているのは、高島屋からちょっと離れた中華料理屋である。
今年もそこに向かったが、いつの間にか通り過ぎてしまった。何と、今年は休みだった!
ここのタンメンを食すのがルーティーンだったのに、予定が狂った。
私はあっちこっちの店を回り、結局、海鮮料理の店に入った。
ランチの丼物を注文した。値段、量とも、ま、こんなものであろう。
私は店を出て、薬を飲む。この時、大変な落とし物をしていることに気付いた。
本日ここまでの観戦メモを記したA4の用紙を、どこかに落としてしまったのだ!!
(つづく)
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