一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

順位戦は恐ろしい

2020-12-26 00:26:25 | 男性棋戦
24日はB級1組順位戦10回戦が行われた。結果を記してみよう。

○木村一基九段(5勝4敗)VS●行方尚史九段(2勝7敗)
○久保利明九段(4勝5敗)VS●近藤誠也七段(5勝4敗)
●永瀬拓矢王座(7勝3敗)VS○山崎隆之八段(8勝1敗)
●千田翔太七段(4勝5敗)VS○郷田真隆九段(7勝2敗)
○屋敷伸之九段(4勝6敗)VS●松尾歩八段(4勝5敗)
●阿久津主税八段(4勝5敗)VS○丸山忠久九段(4勝6敗)
抜け番 深浦康市九段(2勝7敗)

注目の一番は永瀬王座VS山崎八段戦で、2敗と1敗の首位攻防戦だったが、深夜に及ぶ激闘の末、山崎八段が勝ち名乗りを挙げた。これは大きすぎる星である。
そもそも今期は6回戦が終わった時点で永瀬王座の6勝0敗。当時永瀬王座はタイトル戦その他の公式戦に出ずっぱりで、その充実度から見ても1枠は永瀬王座でキマリと見られていた。ところがそこから1勝3敗と失速した。対戦相手も曲者ぞろいで、そう簡単には勝星を上乗せできない。ここが順位戦の恐ろしいところである。
戻って山崎八段は8勝1敗。残り3局を2勝でA級昇級が決まる。将棋ソフト発の戦法が猛威を振るう中、山崎八段はそれには目もくれず、独自の将棋を貫く。それは裸玉もいとわぬ変態的なもので、とうてい余人には真似できないものだ。だがそれゆえA級に昇級するには無理があるとフンでいたが、ここまでくればあと2勝だ。絶対に昇級して、全国に変態山崎将棋を披露してもらいたい。
ほかは郷田九段が千田七段に勝って、ついに自力になった。相手の千田七段は将棋ソフトの申し子で毎期好成績を残す。当然今期も昇級者候補だったが、郷田九段はその手ごわいところを退けた。49歳のベテランがA級に復帰したら、これも愉快だ。
ほかは木村九段VS行方九段が、深夜に千日手。0時37分に指し直しとなった。指し直し局は、持ち時間の少ないほうが1時間に設定される。千日手局は双方残り数分だったからほぼ1時間ずつの上乗せで、この時点で終局まで、2時間以上はかかることが必至となった。
終局は深夜3時43分で、木村九段の勝ち。47歳、まさに粘りの勝利だった。木村九段はこれで、4番手に浮上となった。
ここでハッと気が付き各棋士の年齢を調べると、10回戦は6局とも年長者が勝っていた。

○木村一基九段(47歳)VS●行方尚史九段(46歳)
○久保利明九段(45歳)VS●近藤誠也七段(24歳)
●永瀬拓矢王座(28歳)VS○山崎隆之八段(39歳)
●千田翔太七段(26歳)VS○郷田真隆九段(49歳)
○屋敷伸之九段(48歳)VS●松尾歩八段(40歳)
●阿久津主税八段(38歳)VS○丸山忠久九段(50歳)
抜け番 深浦康市九段(48歳)

これは稀有なことで、そもそも同程度のレベルの棋士が戦えば、若い方が勝つ、というのが相場である。しかも、持ち時間が3時間以下の棋戦ならまだしも、順位戦は6時間である。戦いが深夜に及べば体力に劣る年長者に読みの瑕疵が出るのは自明で、どの角度から見ても年少者に分がある。そこを年長者が全勝とは!
やっぱり棋士は将棋が好きなのだろう。そして棋士は読めば読むほど、全身にアドレナリンが放出されるのではないだろうか。夜戦になればなるほど、妙な力が漲る。これなら年長者が勝っても不思議ではない。私たちは「将棋を指す体力」について、考察を改める必要があるのではないか。
この12名で陰に隠れていたが、抜け番だった深浦九段が最下位、というのも恐ろしい。B級1組は鬼の住処なので誰でも最下位になる可能性はあるが、それにしたって2勝はないだろう。深浦九段は前回のNHK杯覇者である。全棋士参加棋戦で優勝をしているのに、その人が年末に降級争いをしている。私は同じ文言を書くが、順位戦は本当に恐ろしい。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

12月11日の大野金曜教室(後編)

2020-12-25 00:42:48 | 新・大野教室

第5図以下の指し手。▲8六角△6五桂▲5一飛△6四桂▲同角△同歩▲5四桂△4一金(投了図)
まで、77手で大野七段の勝ち。

近場で観戦していた佐藤氏が、「よく見つけたね……」とつぶやく。私が何かいい手を指したかと困惑したが、右のShin氏がいい手を指したのだろう。
やがてバタバタを手が進み、Shin氏が勝った。Shin氏、大野八一雄七段に平手で勝つとは大したものである。そして佐藤氏が感心した手は、やはりShin氏の「▲7五香」だった。
2人が平手で勝って、これでは私も勝たねばならないが、旗色は悪い。第5図で▲3三角成と行っちゃいたかったが、角桂交換はさすがに抵抗がある。それで△4二金に狙いをつけて▲8六角と上がった。が、切るなら切れと△6五桂と跳ばれると、やはり苦しい。
私は角切りを含みに残して▲5一飛と下ろしたが、そこで△6四桂が攻防で、これで下手は何の楽しみもなくなってしまった。私は▲同角と暴発し、▲5四桂に△4一金まで投了した。

感想戦は、第3図の周辺を軽くやった。大野七段は桂得をした時点で、やれる、と確信したという。
私が帰宅してから後悔したのは第5図での▲8六角で、ここはやはり▲3三角成といっちゃうべきだった。これに△同金なら▲7二飛。上手の応手如何で▲5四桂か▲7三飛成かを決める。▲4五桂もあるかもしれない。また△3三同玉なら▲7一飛がある。対局中はこの手が見えず、指せなかった。
下手は▲7三飛成とした時△5五角があるが、桂を2枚持てば、まだ勝負所があったと思う。

感想戦を終えると、Shin氏が「じゃあ(私と)やりましょう」と言う。もちろん私も望むところだが、時刻は午後10時10分。お互い将棋バカではある。
和室で指すことになったが、室内が暗い。私の未来も暗いが、部屋も暗い。みんな暗い。
将棋は私の後手で、相矢倉になった。矢倉の後手番は急戦が定番だが、私はその指し方に疲れたので、Shin氏に大人しく追随した。
私は△6四角と覗く。これに▲4六角(第1図)とぶつけたのがShin氏の作戦だ。

これに△同角は▲同歩で4筋の歩を伸ばさせるのが面白くない。私は△5三銀と上がり、▲第2図と進行した。

ここがまた難しい局面で、△1四歩は▲6四角△同銀に▲2六銀で、次に▲1五歩がある。
そこで発作的に△7三桂、と跳ねたのだが、▲1五歩と伸ばされ苦戦。しかもよく見ると、先手には▲6四角△同歩(△同銀が正着)▲4一角の狙いが残っている。しかしこちらから角を換えたくないので、恥を忍んで△4二金寄とした(▲4一角の防ぎ)。
が、Shin氏は▲6八角と引く。次に▲6五歩△同桂▲6六銀で、桂取りが受からない。よって私は△6二銀と引いたが、こんな退廃的な手を連発しては、大作戦負けである。
こっちは△8五歩を突いていたのに右桂を跳ねたから、攻める筋がない。仕方ないから△9五歩▲同歩△9七歩▲同香に△同角成と切って捨て、▲同桂に△9五飛と走った。角香換わりの駒損だが、端を破って勝負、である。
その後私は桂、銀を取ったが、Shin氏も的確に反撃し、どうも私のほうが悪くなった。

局面は進んで第3図。以下、▲4五香△4四歩▲9一飛△3一歩▲2四歩△同歩▲4四香△同金▲2三歩と進み、ここで私は投了した。

手順中、▲9一飛には△4一桂が固かったが、戦力が減るので指し切れなかった。
感想戦。第1図でShin氏は△1四歩を予想していたという。そこで▲6四角△同銀▲2六銀がShin氏の予定。それがイヤだから私は△7三桂と跳ねたのだが、Shin氏はありがたいと感じたという。やはりこの手が敗着だったようだ。
終盤に進み、第2図の▲4五香がShin氏いわく手順前後で、▲9一飛△4一歩の交換をしてから▲4五香と打つべきだったという。まあ私は元から形勢が悪かったから、どっちでもいい。
本譜△3一歩で△4一桂なら、▲2四歩△同歩▲3五銀、とShin氏は言った。しかし以下△2三銀▲2四銀(▲4四香は△同銀▲同銀に△4六角の王手飛車で粘る)△同銀▲同飛△2三歩は、△4六角の王手もあるから後手も粘れる。
そこで大野八一雄七段の教えは▲3五銀に代えて▲3五銀打!(参考図)で、これなら4六に銀が頑張っているから△4六角がない。次は▲2四歩や▲4四香を狙って先手必勝である。

なるほど「▲3五銀打」は手厚い手で、こういう手が私たちは指せないのだ。今日はこの手を教えていただいただけで、教室に来た甲斐があった。
もう午後11時近くになり、これでお開きである。私は3戦全敗でまったくいい所がなかった。
私「来るんじゃなかったですよオ」
大野七段「またそんなことを言う」
Shin氏が大野七段に、詰将棋のプリントを所望した。Shin氏は明日からTaga氏、Ok氏と3人で、地方に将棋合宿に行くという。2人が指していると1人が余るから、ひとりのときに詰将棋を解くという。
3人で将棋合宿に行くのもアレだが、空き時間も将棋の勉強に充てるとは、何たる将棋バカか。私も誘われたが、私は見たいテレビ番組があるので、丁重にお断りした。
さて、食事である。メンバーは大野七段、W氏、Shin氏、私の4人である。駅前の中華料理屋は満席だったが、ちょいと先の日高屋は空いていた。そしてここが肝心だが、4人が同じテーブルに座れた。このご時世なので、1テーブルに2人しか座らせない店舗もあるのだ。
私は昼も日高屋のタンメンだったので、ここでは炒飯と餃子にした。W氏は3人前くらい頼み、その食欲に脱帽した。
店を出てShin氏と別れ、3人で駅まで行くとき、「そういえば、Shinさんは去年のいまごろ、将棋熱が冷めたと言って、教室に来なくなったんだよね」とW氏が言った。
そういえばそうで、Shin氏は将棋から距離を置いていたのだ。だが1年も経たずに現場復帰し、以前にも増して、将棋のトリコになってしまった。ここが将棋の恐ろしいところである。
私も将棋は好きだが、最近は他者との交流のアイテムのひとつに利用しているにすぎない。

帰宅後、大野七段との指導対局日を調べてみた。新宿将棋センターは1月6日だったが、私は8月2日に大野教室で指導対局を受けていた。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

12月11日の大野金曜教室(中編)

2020-12-24 00:31:31 | 新・大野教室
23日の伊集院光のラジオ番組で、マジックバーに行って驚いた、という聴取者の投稿が紹介された。「千円札が生卵の中から出てきた。そのシリアルナンバーは、事前に確認したものと同じでした」。これ、あんでるせんでは定番のマジックである。マジックバーは各所にあるが、聴取者はあんでるせんのことを云っていた気がしてならない。

   ◇

(きのうのつづき)

第1図以下の指し手。△8四歩▲7八金△8五歩▲6九玉△8六歩▲同歩△同飛▲9六歩△8二飛▲7七桂△7二金(第2図)

私の左では堀彩乃女流1級、右ではShin氏が対局を受けている。堀女流1級のところは相掛かり系で、中盤の難しいところ。Shin氏のところはShin氏の居飛車で対抗型だ。うん? 対抗型? Shin氏は平手で指していたのだ。「研究したいところがあって……」。なんでShin氏はこんなに研究熱心なのだ。
私は大野八一雄七段には、必ず駒を落としてもらっている。むろん平手も受けてくれるが、駒を落としてもらって下手感を味わうのがいいのである。
大野七段は△8五歩と伸ばす。▲6九玉には△8六歩から交換にきた。これはやや珍しい手で、下手は将来▲8五飛とぶつける手があり、上手はせっかく交換した歩を△8四歩と謝ることになる。よって下手が待ち受けるところなのだが、私の▲7七桂に△7二金が大野七段の用意していた手だった。前述の飛車回りには△8三金と上がる手を見ている。

第2図以下の指し手。▲5九金△8三金▲9七角△7四金▲7五歩△6四金▲6六歩△7四歩▲同歩△同金▲7五歩(第3図)

堀女流1級戦は、大野七段が端を突き捨て△1八歩。これで攻めが決まっているようには見えないが、これがのちのち効いてくるのだろう。
私の▲5九金は形で指したが、▲8五飛とぶつけちゃうのだったか。しかし上手はよろこんで△8三金と上がるに違いなく、指し切れなかった。
しかし▲5九金にも△8三金。かなり早く態度を示した。そして▲9七角に△7四金。単騎の金出は恐くないが、すぐ▲7五歩と突いたのはつまらなかったかもしれない。△6四金に▲6六歩と突いて金を圧迫したつもりが、△7四歩で金の動きがラクになったからだ。
戻って▲7五歩では、▲6六歩が先だったかもしれない。そこで△8九飛成は▲8八角とフタをしてどうか。これも難しいが、本譜よりベターだった気がする。
本譜△7四同金には▲7五歩と打ち、ふつうに△8四金と寄ると思ったが……。

第3図以下の指し手。△7六歩▲7四歩△7七歩成▲8五歩△7八と▲同銀△6四銀▲7六金△5五歩▲同歩△7五歩▲8六金△3四歩(第4図)

強く△7六歩と打たれて参った。幸便に▲6五桂と跳ねたいが、△6二銀と引いて△6四歩を見せるのは、私が一手早く▲7四歩と金を取れるからいい。よって上手は△6五同金と取るしかない。以下▲同歩△7七歩成▲同金△8五桂▲8六角△7七桂成▲同角△8九飛成は、さすがに竜の威力が大きく下手苦戦だ。
よって私は黙って▲7四歩と金を取り、△7七歩成には▲8五歩と耐えた。私は飛車の横利きが頼みである。大野七段は△7八とと金を取り、これで私の桂損。角落ちのハンデがほぼなくなってしまった。
ここで7六あたりのスカスカが気になったので、▲7六金と一枚入れた。のちの△7五歩にも▲8六金と我慢する。ここは▲7五同金と取ってしまいたいが、△同銀▲同角△8五飛は下手が勝てない。

第4図以下の指し手。▲5四歩△3三桂▲2六飛△5二飛▲6五歩△5五銀▲7五金△5四飛▲8八角△5六歩▲7六金△7四飛▲5五角△7六飛(途中図)

▲7七銀打△同飛成▲同角△7三桂(第5図)

私は▲5四歩と伸ばしたが、△3三桂で飛車の横利きを外され、面白くない。私は▲7五金から▲8八角。何とか駒を有効に働かせようとするのだが、どうもはっきりしない。
私は▲7六金と引いた。▲7四歩が浮くが、△7四飛ならこちらも▲5五角と銀を取れる。それでも大野七段は△7四飛と回り、金銀の取り合いになった。
堀女流1級はよく指し、大野七段が投了した。ぶつかり稽古とはいえ、男性プロに平手で勝つとは大したものである。堀女流1級に必要なもの、それは自信であろう。
途中図では▲6七銀打を考えた。が、△8六飛と寄られたあと△7七歩が残るのが面白くない。それで▲7七銀打と一路左に打ったのだが、大野七段は文字通りノータイムで△同飛成と切って捨てた。▲同角にゆうゆう△7三桂と跳ぶ。なるほど、これが上手の指し方か、と感心した。
その第5図、ここが最後の勝負所だったかもしれない。

(つづく)
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

12月11日の大野金曜教室(前編)

2020-12-23 00:42:14 | 新・大野教室
11日は久し振りに大野金曜教室に行こうと思った。前の週に大野八一雄七段やW氏から電話をいただいたということもあるが、ちょっと将棋で癒されたくなった。
当日はちょいと所用があり、教室に入るのが遅くなった。川口のエキナカで立ち食いソバをたぐったりして、教室に入ったのは午後8時40分ごろだった。金曜夜だが生徒は多く、堀彩乃女流1級ら女性が3人もいた。ふた昔前は考えられなかった光景である。
私がスーツを着ていたからみなは驚いたが、この服装が長く続かないことを、私は本能的に気付いていた。
W氏としばしおしゃべりし、まずは対局待ちの青年と指す。和室を覗くと、佐藤氏、Shin氏、Ok氏らがいた。こっちは誰もいないと思っていたのでビックリ。今夜はどうしたのだろう。
洋室の隅で青年と対峙する。彼とは以前指したことがあるのだろうが、私はすっかり忘れている。
振駒で私の先手になった。▲7六歩に△8四歩と来たので、▲6八銀。私は矢倉を目指したが青年も追随し、正統相矢倉となった。双方の脳裏に、6日のNHK杯(渡辺明名人VS羽生善治九段戦)があったのかもしれない。
私は▲3七銀から▲4六銀。本当はスズメ刺しが好きなのだが、現代将棋では立ち遅れる。

第1図以下の指し手。▲3七桂△4五歩▲同桂△4四銀▲1八飛△4五銀▲同銀△3七角成▲6八角△3三桂▲4六歩△4五桂▲同歩(第2図)

私は何も考えず▲3七桂と跳ねたが、すかさず△4五歩と突かれて参った。これは▲同桂と取るしかないが、△4四銀と上がられて忙しい。私は▲1八飛と寄ったが、馬を作られてしまった。
ここで▲4六角は△4七馬があり不可。よって▲6八角だが、この1回休みは痛かった。
△3三桂には▲3四歩も考えたが、まあ、ない。そこで▲4六歩と突いたが△4五桂と取ってくれたので、被害は最小限で済んだ。

第2図以下の指し手。△3六馬▲7九玉△8六歩▲同銀△1八馬▲同香△4九飛▲8八玉△9四桂▲4四桂△同金▲同歩△8六桂▲同角△同飛(第3図)

第2図の△3六馬はこう指すところなのだろう。私はよろこんで▲7九玉と寄る。
△8六歩に▲同歩は△8七歩がある。矢倉が弱体化するが▲同銀はやむを得ない。ここで青年は1八の飛車を取って王手だが、私は脅威の馬と蟄居の飛車を交換してくれたのでありがたかった。
△9四桂の瞬間に▲4四桂を一発利かす。△4二金寄とも逃げにくく、青年は△同金。この判断はよかったと思う。
△8六桂に▲同角は後手玉が詰めろではないが、相当危ない。騎虎の勢いで△8六同飛も当然であろう。

第3図以下の指し手。▲8六同歩△8七歩▲同金△7八銀▲2一飛△3一桂▲7八玉△6九角▲7七玉△8七角成▲同玉△8九飛成▲8八桂△7八銀▲9六玉△6七銀不成▲6一角△8四桂▲8五玉△7六銀不成(投了図)
まで、青年氏の勝ち。

第3図で私は当然のように▲同歩と取ったが、▲4三銀も考えた。でもさすがにないか、と▲同歩。しかしついに△8七歩が実現し、これで先手敗勢である。▲8七同金に△7九銀▲9八玉△6九飛成でも相当受けにくいと思ったが、青年は△7八銀。玉の腹から銀、でこれでも後手勝ちだ。
私は▲2一飛と王手したが、△3一桂で盤石になってしまった。してみると▲2一飛では▲6一飛だったか。しかしこれも強く△5二玉で負けだ。
以下は青年の寄せを見るのみとなった。

感想戦。第1図からの▲3七桂はやはり悪く、△4五歩からは一本道で後手優勢。青年は第2図からの▲7九玉に△6九銀を考えたというが、本譜△8六歩でいいと思う。ただ、安易に△1八馬と飛車を取ったのは反省していた。
私の主張は第3図で▲4三銀(参考A図)の是非だ。△8六飛を無視しての着手だから青年も驚いたが、△4三同金▲同歩成△同飛成▲8六歩にやはり△8七歩が厳しく、▲同玉△4九竜(参考B図)で後手優勢、の結論になった。


参考B図以下一例は、▲7九金打△9五桂▲9六玉△7九竜だ。
結局、敗着は▲3七桂となった。

アマ1級、と自称する少女と私が大駒落ちで指しそうになったが、彼女は青年と指すことになり、私は大野七段の前に座った。久しぶりの指導対局である。「新宿将棋センター以来ですね」と大野七段。それがいつだったか忘れたが、その間大野教室では指導対局を受けていなかっただろうか。
いつも通り角落ちでお願いした。

初手からの指し手。△6二銀▲7六歩△5四歩▲5六歩△5三銀▲2六歩△4二玉▲2五歩△3二玉▲4八銀△4二金▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2五飛(第1図)

いつも通りの出だしで、私は△2三歩に▲2五飛。いわゆる「一公流▲2五飛戦法」で、大野七段は「懐かしい」とつぶやいた。私は角落ち戦で年中採用しているので、これは△8五飛の形そのものを云ったのだろう。

(つづく)
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第48期女流名人戦予選

2020-12-22 00:17:36 | 勝敗予想
第47期女流名人戦五番勝負は来年1月17日から始まるが、来期(第48期)予選が12月17日から始まっている。21日にも4局が行われた。
では、予選の組み合わせと、リーグ入り予想を軽くしてみよう。なお、氏名の後ろの※はLPSA所属、中井広恵女流六段はフリーである。また各枠の一番最後が、前期リーグ陥落者である。

【1枠】
甲斐智美女流五段VS(中倉宏美女流二段※VS和田はな女流2級)
(山田久美女流四段VS加藤結李愛女流初段)VS(石高澄恵女流二段VS中村真梨花女流三段)
(宮宗紫野女流二段VS礒谷真帆女流初段※)VS(○藤田綾女流二段VS●竹部さゆり女流四段)
(船戸陽子女流二段※VS貞升南女流初段)VS上田初美女流四段

ここは甲斐女流五段と上田女流四段が勝ち上がり、両者でリーグ入りを争うと思う。それで、上田女流四段がリーグ入りか。将棋にのめりこんでいる女流棋士はやはり強い。

【2枠】
(中村桃子女流初段VS相川春香女流初段)VS(岩根忍女流三段VS上川香織女流二段※)
(島井咲緒里女流二段※VS安食総子女流初段)VS(斎田晴子女流五段VS伊奈川愛菓女流初段)
(中井広恵女流六段VS高浜愛子女流2級)VS(カロリーナ・ステチェンスカ女流1級VS小高佐季子女流1級)
(矢内理絵子女流五段VS山口恵梨子女流二段)VS室谷由紀女流三段

室谷女流三段が本命、岩根女流三段が対抗に思えるが、室谷女流三段は調子がいまひとつ、岩根女流三段も微妙に信用できないところがある。そこでクローズアップされるのが中井女流六段だ。苦手にしている女流棋士もおらず、着実に勝ち抜いていきそうな気がする。

【3枠】
石本さくら女流二段VS(長谷川優貴女流二段VS中澤沙耶女流初段)
(里見沙紀女流初段VS脇田菜々子女流初段)VS(山口仁子梨女流2級VS北尾まどか女流二段)
(飯野愛女流初段VS清水市代女流七段)VS(●渡辺弥生女流初段VS○塚田恵梨花女流初段)
(内山あや女流2級VS井道千尋女流二段)VS千葉涼子女流四段

3枠は実績から見て清水女流七段が本命なのだが、清水女流七段は今年度4勝5敗でパッとしていない。そこで、最近女流二段に昇段した、実力者の石本女流二段を最有力に挙げたい。

【4枠】
(藤井奈々女流初段VS北村桂香女流初段)VS(山口稀良莉女流2級VS山口絵美菜女流1級)
(村田智穂女流二段VS水町みゆ女流初段)VS(武富礼衣女流初段VS室田伊緒女流二段)
(頼本奈菜女流初段VS本田小百合女流三段)VS(長沢千和子女流四段VS堀彩乃女流1級※)
(野原未蘭女流2級VS和田あき女流初段)VS山根ことみ女流二段

ここは本命がいないが、3期連続リーグ入りしている山根女流二段が最有力に挙げられるだろう。

清麗戦や女流順位戦の創設で、女流棋士もだいぶ公式戦を戦う機会が増えた。しかし女流名人リーグ入りの栄誉と公式戦9局増は、まだまだ大きな魅力だ。スポーツ報知に観戦記が載るのも大きい。
皆様頑張ってください。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする