付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「ストームクイーン」 マリオン・ジマー・ブラッドリー

2007-10-03 | その他SF(スコシフシギとかも)
「男に息子がなければ悲劇だわ。でも、多すぎたりしたらもっと悲劇よ」
 アリシアンの言葉。我が家は奪い合うほど財産も権力もないから安心です。

 深紅の背表紙も懐かしい、創元SFから刊行されたダーコーヴァ年代記の1冊です。『ストームクイーン』は、天候を操る能力を持ったアルダランの城の王女が成長し、そして戦争に巻き込まれていく話。
 太古にこの惑星ダーコーヴァに不時着した地球人の子孫であるかも知れないダーコーヴァの民には、ラランと呼ばれる超能力を持つ者が生まれることがありました。その中でも力の強い7つの氏族を中心に、不時着した人々が生き残りの手段を模索する時代からさまざまな氏族が争い繰り広げる混沌の時代、そしてコミン評議会によって統治される時代を経由し、地球帝国との再接近により旧秩序が崩壊していくまでの長い歳月を、さまざまな主人公のさまざまな視点から描いていくのがこのシリーズです。日本でいうと、戦国時代から明治維新までという感じ。

 全巻の翻訳が終わらないまま中断してしまった残念なシリーズ。昔、ダイナコンEXのときに聞いた話では、翻訳が遅くて延び延びになっているうちに……ということでしたが。

【ストームクイーン】【ダーコーヴァ年代記】【マリオン・ジマー・ブラッドリー】【超能力者】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「江戸時代医学・本草学資料の整理と研究II」 

2007-10-03 | エッセー・人文・科学
 ……文部科学省関連の特定領域研究の論文集。図版、解説が収められたA4サイズで550頁ほどのもの。書物の装丁の変遷や修復について扱った原稿も掲載されていて、これはこれで大変面白く(時には大笑いして)読んでいるのですが、机の上に出しっぱなしになっていたのを、遊びに来た嫁さんの友達が「面白~っ!」と読みふけって帰って行きました。国文卒だったそうです。そうか、まっとうな意味で面白いのか……。

「江戸時代医学・本草学資料の整理と研究II」★★★

【本草】【医学】【書】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「こいわらい」 松宮宏

2007-10-03 | その他フィクション
「わたしは普通の女子大生ですよ。それも学生課でアルバイトの掲示見て応募してきただけの。相手は拳銃を持ってるんですよ。わたしなんか、棒ですよ棒」

 自動車事故で両親を失い、自らも脳損傷によって半身不随となった少女メグルは、たった1本の木ぎれによって甦った。土手で拾った小さな棒きれが、彼女を救ったのだ。
 だが彼女は父親の残した借金によって、まだ幼い弟とともに家屋敷から放逐されてしまう。そんな彼女が偶然見つけたアルバイトは用心棒。女性限定で月50万円という仕事だった……。


 21世紀の京都を舞台にした時代小説。女子大生な天才剣士が小太刀サイズの棒きれ一本でヤクザ相手に立ち回る。そこに見え隠れするのは秘剣こいわらいの謎……という話。エンタテイメント小説ってのは、パッケージ次第でライトノベルにも一般文芸にもなるんだなあ……。
 すっとぼけた展開ににやにやしながら読了。

【こいわらい】【松宮宏】【ヤクザ】【秘剣】【ご隠居】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「超電磁マシーン ボルテスV」 東映

2007-10-03 | 巨大ロボット
 お子様のものだったはずのアニメ世界に若い女性ファン層がドッと増え、美形悪役キャラ人気がほぼ頂点に達していた頃の作品。今ならラ・ゴール×ズ・ザンジバルとか腐った組み合わせも出ていたに違いない。
 ぼくにとっては聖悠紀がキャラクター・デザインを担当していた作品で、ろくに放送は見てないくせに聖悠紀書き下ろしの女性キャラ・ヌードピンナップ付の総集編本を購入していて、内容だけはしっかり頭に入っていたりする。司令官がよく戦死して交代する話だよね。

 さて、この作品がNHKのドキュメントに取り上げられて問題視されていたぞと随分前に仲間うちで話題になっていたので、記憶を掘り起こしつつネットで検索したことがあります。日本製アニメが海外でヒットしているという評判がちまたに流れ始めた時期で、そのうちの1つが対日感情のもつれから放映禁止になったということでした。
 ああ、91年放映の、アジアの対日感情を考察するというNHKスペシャル「日本製アニメに何を見たか」ってやつ。フィリピン側に製作させたドキュメンタリーにNHKが勝手なコメントをつけて、「戦争を知らない若い世代には大人気だったけれど、戦争を体験している世代にとってボルテスVは日本軍国主義の象徴であり、放映禁止になったのも仕方のないことだった」みたい論調にまとめたもの。
 ネットを散策してみると、アニメのことを知らない人でも、フィリピンに行くとみんなでオープニングを熱唱していたとか、日本に来たフィリピン人が合唱したとか、街中をイラストを横書きした車が街を走り回っているとか、報告してますし、アニメにちょっと詳しい人になりますと、視聴率70%を超える人気で、今でも人気は根強いとか、テーマ曲はフィリピン軍の行進曲にもなっているとか、放映中止になったのは実は暴力描写とか武器が日本の軍刀みたいに見えた(ぜんぜん似てないことは現物を比較すれば一目瞭然です)のが問題だったのではなく、クライマックスの「独裁政権を民衆革命が打倒する」展開を当時のマルコス政権が嫌ったからなんだとか……。

 ただ、日本のファンが自国の作品を高く評価しようと好意的に解釈したり、おひれがつくのはありがちな話なので、じゃあ海外ではどうかいなと現地のネットを検索してみたら……なんか雑学レベルの日本のサイトより熱いことになっていました。
 「マルコス政権はすべての罪を否定した。だが70年代に子供時代をおくった僕らは知っている。マルコス大統領はボルテスVを殺したのだ!」とか「ボルテスVがなければエドサは動かなかった(革命は起きなかった)」とか……。
 ここらへん、もっと覗いて回る価値はあるかも。(2007/10/03)

 ニューズウィーク日本版のいとうせいこうの連載記事「『国境なき医師団』を見に行く」の2017年6月8日「困難と良心を前にして──マニラのスラムにて」に、「前日もかかっていたアニメソングが鳴り響き、映像もビジョンにでかでかと映った。ロセルによると、それは『ボルテスV』という日本アニメで、内容が革命を賛美しているように思われたためマルコス時代に放送禁止になったものなのだそうだった。だからこそ『ボルテスV』を堂々と映し、主題歌に声を合わせることは彼ら抗議者の勇気をあらわすことなのだ。文化はやはり戦う力なのである。」という一節があり、再確認。(2017/07/08)


【超電磁マシーン ボルテスV】【東映】【革命】【異母兄弟】【ザンバジル、ザンジバルで逃げる】【行軍歌】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする