付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「虚船」 松浦秀昭

2007-10-24 | 破滅SF・侵略・新世界
 『謎の円盤UFO』の影響を受けた作品の1つに、松浦秀昭の『虚船』と『虚船2~大江戸爆裂攻防記』があります。

 文化年間。日本人は既に地球防衛組織<青奉行>を結成していた。
 <青奉行>の本部は江戸のとある問屋の地下深く、秘密裏に造られ、直情径行な奉行職・浅葱のもと、日夜、謎の円盤・虚船に対し、敢然と立ち向かっていたのである……。


 人類を食餌にしようと襲来する異星人に対抗すべく、江戸幕府内に設置された秘密組織<青奉行>の活躍を描くシリーズ。史実や伝承をベースに巧みに設定を練り上げ、それをもとに時代小説とジュブナイル小説を足して割ったような破天荒な展開を用意しました。武芸の達人はもちろん、鉄砲鍛冶の名人やらエレキテルの専門家や生臭坊主が登場し、江戸時代に、江戸時代のテクノロジーで、ちゃんと迎撃するんだよ! 空飛ぶ円盤を!!
 そして、続く第2弾「大江戸爆裂攻防記」では、

 人類を食餌とすべく襲来する異星人に対抗すべく、江戸幕府内に設置された秘密組織<青奉行>だったが、鳥居妖蔵が奉行職になってからというもの、有能だが出自の身分の低い者や正論を唱える者は閑職へと追いやられ、強大な破壊力を秘めた新兵器の開発が進められる一方で、異星人の迎撃は次第におこなわれなくなっていった……。


という展開。
 ストーリーそのものは数人のメインキャラを中心に流れていきますが、江戸城内、青奉行所内部、兵器開発部門、迎撃の最前線と、さまざまな場所でのエピソードが綴られます。理不尽でも組織の秩序のために上からの命令に従うのか、反抗するのか、それとも単に長いものに巻かれて日和るのか。
 静かに崩壊していく組織、その背後に広がる陰謀の目。新奉行は何を考えているのか、侵略はくい止められるのか。

 あなたのおかげで、江戸は守られたのだ。
 ありがとう、阿弥陀如来。
 さようなら、阿弥陀如来。


 ソノラマ文庫から出ていたけれど絶版。続刊の見込みもなさそうだけれど、このまま埋もれさせるには惜しい快作ですね。

【虚船~大江戸攻防珍奇談】【虚船2~大江戸爆裂攻防記】【松浦秀昭】【いのまたむつみ】【ソノラマ文庫】【UFO】【天狐】【グレイ】【猿】【龍勢】【千手観音】【核エネルギー】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ミラクルマスター」 監督:ドン・コスカレリ

2007-10-24 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 まだ映画のビデオが1本2万円くらいして、レンタルしても一泊二日で定価の1割というのが料金相場だった時代。ビデオレンタル屋の洋画コーナーには吹き替えはおろか字幕すらついてない作品がゴロゴロしていました。
 そんなとき、いつものお店で1本の新作を借りてきました。『The Beastmaster』という米伊合作っぽいファンタジー映画です。同じ制作年の作品にはシュワルツネッガーの『コナン・ザ・グレート』もあったのに、なんでこれにしたかというと(ということは金が無くて何本も借りることが困難だったからですが)、ヒロインが好みだったから。
 主役のダールは『V』が有名なマーク・シンガー(ぼくはよくマーク・ハミルと間違えた)。ヒロインのキリは『地上最強の美女たち!~チャーリーズ・エンジェル』や『密林の女王シーナ』でお色気アクション女優として名をあげたタニア・ロバーツ(黒髪に染めて)。頼りになる黒人戦士セスは『ダイハード2』の特殊部隊のグラント隊長にして『ザ・ホワイトハウス』のフィッツウォレス統合参謀本部議長ことジョン・エイモス(ハナ肇に似てないかしら)。

 剣と魔法の世界。まだ王妃の体内にあるうちに邪神アーの神官によって奪い去られてしまった王子は、殺される寸前、通りかかった狩人に救われ、彼の息子として生きることになる。成長した少年ダールには不思議な力があった。誘拐されるときに魔術で獣の腹を経由したためか、動物と心を通わせることができたのだ。
 生まれ育った村が騎馬民族ジャン族によって滅ぼされたとき、ダールは2匹のフェレットとワシと黒トラを連れ、復讐と自分の本当の家族を捜す旅に出ることになる。そして女剣士と熟練の戦士を仲間にし、生まれ故郷で王を殺した邪悪な神官を滅ぼす。そこでダールの持つ王家の証を目にしたセスは「あなたこそが王だ」と指摘するが、ダールは彼を兄とは知らない弟に後を託して再び旅に出るのだった……。


 で、けっこう面白かったんですよ。不気味で、コミカルで、主人公は年相応にエッチで。『コナン』が正統派ヒロイックファンタジーなら、こちらは今でいうならライトノベル・ファンタジーといった感じ。でも字幕がないので、よく判らない部分もあちこちにあって、そこらへんの疑問は1年後の日本公開で解決されるのですが……まず邦題がダサい! 『ミラクルマスター~七つの大冒険』って何さ? あんたはハリー・ハウゼンかっ!? それから、劇場公開の段階ですでにオリジナルより数分尺が短くなってます(たぶん6分くらい)。ラストの伏線になる鳥人の村での一幕とダールがワシにメダルを持たせて旅立たせるシーンがすっぱりカットされ、話が唐突な展開で決着することになっています。LDが発売されるとすかさず購入しましたが……やっぱりカット版でした。おいっ!

 で、後にこの作品がアンドレ・ノートン原案だったと聞いてまたびっくり。確かにそういうタイトルの小説があって、実際に原作かと思って買って読んで全然違っていてがっかりしたのに……本当に原案だったんかい!?(英語サイトによると「inspired by Andre Norton's fantasy novel」だそうです。ファンタジーじゃなくてSFなんだけどな) 主人公が動物と意思疎通ができて、荒野をさまよう以外に共通点ないじゃないか……。
 アメリカではケーブルテレビで人気が出たらしく、映画は3作目まで、テレビシリーズは第2シーズンまでDVD化されていますが、そこまで追いかけたくはないなあ。
 ただ、最初の映画の全長版にきちんと字幕をつけてDVDを出してくれればよいです……。

【ビーストマスター】【ミラクルマスター】【七つの大冒険】【ドン・コスカレリ】【獣使い】【出生の秘密】【3つのしもべ】【アンドレ・ノートン】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「世界征服は可能か」 岡田斗司夫

2007-10-24 | エッセー・人文・科学
 「世界征服は可能か」という大テーマに真っ向から挑んだ意欲作。中身はとりたてて目新しいモノはないけれど、あらためてきっちりまとめたところがミソかな。
 ただ真っ向から挑みすぎて、物足りなくはあります。
 昔のSF大会で、悪の組織が一国を支配する場合、どのような手順でどれだけ予算をかければ征服できるかという企画があって、そのときにかなりきっちり予算だてしていたので、それの世界征服版を期待していたのですが、抽象論というか理論に走って実践編ではなかったのが残念。ただ、中の「ヨミさまスゴロク」が最高。これだけで代金分の価値はあったな。

「世界征服は可能か」★★★

【世界征服の定義】【ヨミさま、たいへんです】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「アンジェリック・ノワール 1」 椎葉周

2007-10-24 | 超能力・超人・サイボーグ
 地球は宇宙人に監視されていて、その宇宙人は天使型していて、中には地球人と組んで悪いことをするやつもいるので、監視する方も地球人に力を与えて撃退しようとするのでした。その結果はギャングと高校生の代理戦争……。

 なんかぐちゃぐちゃで血みどろです。
 普通は「宇宙人から特別な力を与えられて正義のために戦う」「不登校になってしまったいじめられっこを復帰させる」というお題が与えられたら、『UFO時代のときめき飛行アメリカン・ヒーロー』みたいなさわやかコメディになっても不思議ではなかろうに、そもそも宇宙人が高飛車ドSのギャルではハートフル・ヒューマンコメディにはならんわなあ。
 そこが味なんですが。

「アンジェリック・ノワール」★★★★

【天使】【宇宙人】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「JOIN!」 祭紀りゅーじ

2007-10-24 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「名も無き魔王の軍団!出撃ー!」

 どこかに封印されているはずの魔王復活を予兆させる事件の勃発に、王国はでっちあげの英雄と魔王を用意した。ニセ魔王軍を英雄が倒す図式を民衆に提供することで、一般市民の動揺を抑えようというのだ。
 兵学校を卒業したばかりの少女ミュンヒィは、父親を魔物の群れによって失い、決意を持ってこの極秘計画に参加したのだが、彼女に与えられた役割は魔王軍のリーダー役だった……。

 アグレッサー物です。「aggressor」っていうのは語彙的には「侵略者」の意味で、もっぱら軍隊の訓練のために仮想敵を務める部隊のことなんで、間違ってはいないよな……。ただ、物足りない。一癖も二癖もあるメンバーがニセ魔王軍として呼び集められるんだけど……一癖も二癖もあるはずなのに、今ひとつ活躍の場が物足りない。あれこれ伏線っぽくネタをふりまきながら(もしかしたらあるかもしれない次巻のために取ってあるのかもしれないけれど)、結果としてどれもこれも半端に終わっている。この長さであれば、ニセ魔王軍をつくることが決まるまでを切りつめて、その分、魔王軍が悪さをする部分の比重を大きくして欲しかった。
 結局、こういう話だからこそプロフェッショナルな仕事をしっかり描写して欲しかったなあということですね。せっかくの「一癖や二癖」が泣いてます。

【JOIN!】【ジョイン!】【祭紀りゅーじ】【尾谷おさむ】【電撃文庫】【魔王】【アグレッサー】【地には平和を】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「おんなのこ物語」 森脇真末味

2007-10-24 | アイドル・声優・芸能
 なんとなく矢沢あいの『Nana』を7巻まで一気読み。いえ、なんとなくゴロリと転がった先に積んであって、他に手の届く範囲に読むモノが無かったので(不精)。
 大ヒットしているコミックで、映画も公開されたし、そのコラボでキティちゃんが登場したり企画CDに人気アーティストが投入されたりと話題の作で……………………自分には向かないなと思った。
 りぼんマスコットコミックスだからというんじゃなくて、つまらないからというのでもなくて……あれだよ、いかにも「若者」な浅はかな行動や考えに「はいはい」としか思えない年寄りの自分がいるから(もうグロギ太守みたいなもんです)。だから恋愛ものとしては楽しめないし、音楽業界をテーマにしながら実は音楽モノじゃなさそうだし。

 純粋な音楽モノとしてなら森脇真末味の『緑茶夢』とか『おんなのこ物語』が好きです。それぞれの音楽感をぶつけ合う若者たちを描いたロックバンドもの。これまた30年以上前の作品ですが、ハヤカワコミック文庫から復刻されて入手しやすくなりました。
 特にSFというわけでもないのにハヤカワから文庫が出たり、登場するバンドに「スラン」と名前が付いているなど、当時の少女マンガとSFの関係についてもうかがい知れますね。(2007/10/24 2012/09/20改稿)

【おんなのこ物語】【森脇真末味】【ハヤカワコミック文庫】【フラワーコミックス】【緑茶夢】【Nana】【バンド】【音楽】【自家中毒】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「山・動く~湾岸戦争に学ぶ経営戦略」 W・G・パゴニス

2007-10-24 | 戦記・戦史・軍事
 「湾岸戦争に学ぶ経営戦略」なんていう、とってつけたような副題が小癪。ともかく湾岸戦争時にアメリカ軍の補給兵站を統括したパゴニス陸軍中将の自伝。
 読んでみれば、兵站のバケモノみたいに思っていた米軍も、そんなに完璧なわけではなく、平時からもちろんさまざまなケースを想定していても、いざとなると現場はひどいものだという話(もちろんそれを短期間でクリアできたのも事実)。
 戦闘部隊を優先して送り込むのは良いけれど、そのために後方支援要員が丸ごと本国で何ヶ月も先まで待機中だとか、200人収容の施設に5000 人を寝泊まりさせていたとか、到着して最初の3日間は放置してあった4ドアセダンが後方支援司令部だったとか、到着した戦闘部隊の片っ端から後方支援要員を引き抜いたとか。楽屋裏の苦労話って愉しいよね。

メモ
○「すべての蛸壺にフルーツバスケットを」
○侵攻時の補給システムはアレキサンダー大王から借りた。
○奮闘するゴーストバスターズ。
○官僚制は巨大組織を機能させる力である。
○部隊は投入するより引き上げさせる方が手間がかかる。パッケージの問題。
○ベトナム戦争時にはしけに火砲を搭載するシステムは、南北戦争時の河川砲艦を参考にした。
「ただのはしけに砲なんか積めんのかよー!なんか過去の例はなーいー?」「南北戦争の時のなら図面送るよー」……さすが戦史編纂室。

 まあ、アメリカというのは「輸送軍」というものをわざわざ設置するくらい、補給兵站に力を入れている国で、しかも1つのパターンで満足することなく、常に改革を進めているわけで(それが必要なくらいこまめに戦争している)、イラク戦争の時も、民間の輸送機を集めて「空輸中心!」と胸を張ってみたら、結局高速輸送船の方が…という話になって、見直しが進んだのだとか。
 そういう意味では、経営戦略の勉強にもなるかなあ……?
 最前線のすぐ後方までハンバーガーショップが進出していたり、砂漠にプールを作ったりと福利厚生に手抜きがないというのも、さすがアメリカ軍。

【山・動く】【湾岸戦争に学ぶ経営戦略】【W・G・パゴニス】【補給兵站】【ハンバーガー】【官僚制】【湾岸戦争】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「アーカム計画」 ロバート・ブロック

2007-10-24 | ホラー・伝奇・妖怪小説
……ラブクラフトの書いたことは全部真実だったんだあという前提で、次々に原典をなぞるような事件が勃発し、関わった人物は次々に死んでいく話。
 ホラーとしては怖くないし、カタルシスもないし、驚愕の結末と言うには「それもやっぱりラブクラフト・ネタの焼き直し」なので意外性もなく。

 元々ブロックが同人誌向けに書き下ろした半パロディらしいので、まあ、こんなものかな。

「アーカム計画」★★

【血】【謎の財団】【官憲の摘発】【神の再生】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする