付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「囮のテクニック~暗号編」 ダドリ・ポープ

2007-10-27 | 戦記・戦史・軍事
 さほどのマニアではないのだけれど、第二次大戦を舞台とした作品を見ていると、けっこうドイツの暗号器エニグマとかトライトンを題材にしたものが多いことに気づきます……というか、集まっちゃいました。特に最近は第二次世界大戦中に極秘扱いになった文書の非公開期限が切れ始めているので、ノンフィクション系が面白いかもしれません。
 で、暗号を巡る諜報戦といえば『暗号名エニグマ』とか『エニグマ奇襲命令』とか『暗号機エニグマへの挑戦』とか『イントレピッドと呼ばれた男』(デビット・ニーヴン主演のテレビムービー☆)とかあれこれありますが、やはりエニグマ暗号器をU-ボートごと奪取するという話が本命です。
 ちょっと前の映画『U-751』もそれをテーマにした作品でしたが、これは英国海軍の作戦を勝手にアメリカ軍の手柄話にしてしまって非難囂々だったのは自業自得。
 同じテーマで海洋冒険小説の重鎮、ダグラス・リーマンが『国王陛下のU-ボート』なんて作品を書いてますが、個人的に好きなのはダドリ・ポープの『囮のテクニック~暗号編』の方。ポープの本は至誠堂からいろんなシリーズが出ていましたが(潰れたけど)、その共通項は「説明が多く、優しく、かつ細かい」こと。B級ハードボイルドや戦記物で、よくウンチクを並べて枚数稼ぎをしているのがあるけれど、これもそう。決まり文句は「それは聞いたことがありますが、一応念のために最初から説明してください」。
 大学の先輩が「ポープって訳が読みにくくないか?」と言ってましたが、そんなことはこのシリーズでは感じませんでしたね。
 護送船団の回避運動やメリット・デメリット、暗号装置の重要性やその代表的なものまで、折に触れ読者に紹介してくれるという、初心者向けの……って、誉めてるよね。

【囮のテクニック】【暗号編】【ダドリ・ポープ】【暗号機】【潜水艦】【機密保持】
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「どくそせん」 内田弘樹&EXCEL

2007-10-27 | 戦記・戦史・軍事
 自分もまあ、かつては「男の子」でしたし、タミヤの1/35で戦車のプラモデルなんぞ作っておりましたから「独ソ戦」などは常識でした。生まれて2番目にプレイしたゲームは「スターリングラード攻防戦」でしたし。
 常識っていうのは、わざわざ確認しなくても、義務教育を終えた人間なら詳細はともかく存在は知っていて当然ということなんですが、でも常識ではなかったんですねえ。
 少なくとも妻は知らなかった。彼女にとっての第二次大戦は満州事変あたりで終わっていて、連合国と枢軸国が戦っていたことは知っていてもその中で「ドイツとソ連」という組み合わせにはピンとこなかった様子。少なくともガチで戦っていたという認識はなかったのです。
 で、「この本ってタメになるねえ」と『どくそせん』。
 確かに文章の方は、簡単な用語解説から始まり、歴史の流れに従って概要(一般的な視点では詳細)を書きつづっていて、なかなか面白く読めます。
 間に挟まるコミックの方は面白いことは面白く、コミック単独で評価するなら文句はないけれど、本編のそこかしこに挟まっている存在としては少し浮いているかな。でも、これがないとどこにも「萌え」がなくなっちゃうなあ……。

【独ソ戦】【萌え】【輪姦】【末期戦】
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「ホーンテッド・ファミリー」 草上仁

2007-10-27 | 宇宙・スペースオペラ
 草上仁という作家名とるりあ046のイラストに吊られ、『ホーンテッド・ファミリー』を購入。
 三世代6人家族の沢田家がマイホーム代わりに格安で購入した航宙船<マリー・セレステ>は、しっかり幽霊船でした……というドタバタ・ホラーSF……しまった! 昔からこの手の話は性に合わなかったんだ。梶尾真治の『占星王をぶっとばせ!』とかハインラインの『ボディの宇宙旅行』とか、一癖も二癖もある家族を乗せた宇宙船の冒険譚(特に主人公少女の1人語り)で面白いと思った試しがない……。
 草上仁は好きなんだけれど、ちょっと相性がよくありませんでした。

【ホーンテッド・ファミリー】【草上仁】【幽霊船】【家族の絆】
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「ドラッカー 20世紀を生きて」 ピーター・ドラッカー

2007-10-27 | 伝記・ノンフィクション
 2005年の11月11日に亡くなったP.F.ドラッカーは現代経営学の大家であり、20世紀を代表する思索家といわれていた人物です。大学時代の経営学では知っているのが常識という扱いでした。
 そのドラッカーが自分の生涯について日本経済新聞の『私の履歴書』で語った内容に、訳者がさまざまな注釈や本人のインタビューから聞き出したエピソードを加えたのがこの本『ドラッカー 20世紀を生きて』です。実は唯一無二の自叙伝。
 さまざまな経済学者や経営者に出会ったエピソードも十分に面白い話ですが、彼が1909年にオーストリア・ハンガリー二重帝国に生まれたことから始まる歴史的な面白さもたっぷり。ハプスブルグ帝国の外国貿易省の長官だった父親が開戦を阻止しようと奔走し徒労に終わったこと。8歳のときにフロイトと握手したこと。新聞記者になりヒトラーやゲッベルスにインタビューしたこと。1938年には処女作『経済人の終わり』を書き上げ、そこで「ナチスはユダヤ人抹殺に踏み切り、ソ連と手を組むだろう」と指摘し、タイムズにウィンストン・チャーチルが書評を書いて絶賛したこと……。
 ヤング・インディやフォレスト・ガンプみたいな人は本当にいるんだなあ。
 あっさり流されるには惜しいエピソードが満載でした。

【ドラッカー 20世紀を生きて】【私の履歴書】【ピーター・F・ドラッカー】【日本経済新聞社】【経営学】【ナチス】【ハプスブルグ帝国】
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「パーム」 伸たまき

2007-10-27 | その他フィクション
 スタートしてもう20年以上経つのが、伸たまき(獸木野生)の『パーム』。あんまり長すぎて、今でも新刊はB6版で出てるのに文庫化してるし、その文庫ですら最初の頃のは入手が難しくなってるんだから……。
 これも名言の多い作品です。

「会議って説教の腕自慢みたいなもんかと思ってたけど、要するにケンカだな」
 これは名言とは違うかな……?

 巨大シンジケートのボスの血を引く天才青年ジェームス・ブライアンを中心に、元外科医で探偵に鞍替えしたカーター、ライオンと暮らしていたアンディら、椰子のように流れ着いた人々の物語。アメリカのホームドラマのようなシチュエーションの中、刑務所の中の話が続いたかと思えば、CIAの陰謀になったり、コンゲームや環境保護の話になったりと二転三転する大河ホームコメディ。
そろそろ終わるはずなのに、連載ペースが落ちてちょっと残念。
 ただ、この話に関しては未完の大作になって結末が判らずヤキモキする心配がないので、その点は安心。そもそも第1話の「お豆の半分」が、以後の話の総集編的な内容です。さらに、もうメインキャラクターの何人かはいつどういう形で死んで、そのとき周囲の人たちがどう反応したか……まで描かれているので、あとはのんびり待つだけです。

「パーム」★★★★★

【エコロジー】【マフィア】【幽霊】【精霊】【コンゲーム】
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「ぴよぴよキングダム3~あかりの国のあかり」 木村航

2007-10-27 | その他SF(スコシフシギとかも)
「男の誇りと女の見栄はテロリズムの温床だ」
 黒い子猫、星刺されのチープの言葉。

 メルヘンチックな皮を被ってファーストコンタクトから次元を超えた認識と自我まで語り尽くそうという勢いの『ぴよぴよキングダム』。この世の外、時空のどこか、遙かなる高次元空間の無限の海と空を超えた先に、あると思えばある、ないと思えばない国で物語は展開します。

 あかりは地球人類として初めて3次元の次の段階へと進化した存在となる。だがその結果、あかりの体とチュルリラ姫が融合したあかリラと、あかりの心が実体を持った磐座あかり一世が出現して大混乱に。
 さらに海賊キャプテン・ジュリアーノが出現し、拓とチュルリラあかりをさらってしまうのだが……。


 精神世界の大冒険という、不思議の国のアリス的な展開に、このノベル本来の読者層を置いてきぼりにしそうになりながら、そこはチープという魅力的なキャラがしっかり押さえているので万事OK☆

【ぴよぴよキングダム3】【あかりの国のあかり】【木村航】【竹岡美穂】 【ツンデレ】【高次元生命体】【マンガ家】【海賊】
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「ぴよぴよキングダム2~ときのしおり」 木村航

2007-10-27 | その他SF(スコシフシギとかも)
 木村航の『ぴよぴよキングダム2~ときのしおり』を購入。
 メインキャラが絞れているだけ、じっくり書き込めてます。基本設定は、頭の上に突然宇宙から来た小鳥が住み着いてしまい、異星人同士の恋の儀式に巻き込まれ、かわいいクラスメイトと金持ち二枚目のライバルとの(二重の)三角関係に翻弄されるという話。
 宇宙人がいきなり押しかけ、それによって凡庸な主人公がいきなり世界の中心になってしまうコミックやライトノベルでお馴染みの黄金パターン。今回はこの恋の儀式に異議申し立てがあったと銀河系から査察官が来る話。
 やろうと思えば、いくらでも『天地無用!』や『うる星やつら』みたいに美少女いっぱいのポップなコメディにできるのに、それをしないで過去・現在・未来の無限の選択肢に翻弄される高次元生命体の意識の話にしてしまうわけで……個人的には嬉しいけれど、営業的にはどうなんでしょう?
 そしてあいかわらず暗い部分は暗いものとして描く木村節は全開。打算とか嫉妬とか、当然あるだろう人間の内面もきちんと書くところも、好きずきの分かれるところかも。

【ぴよぴよキングダム2】【ときのしおり】【木村航】【竹岡美穂】【婚姻】【次元接続】
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「ぴよぴよキングダム」 木村航

2007-10-27 | その他SF(スコシフシギとかも)
「恋とは常に不確かなものだ。相手の心を知ったとき、恋は終わり、愛か絶望が始まる」

 ある日、ある朝目を覚ますと、森山拓の頭の上に1羽のヒヨコが住み着いていた。
 ヒヨコの正体は、高次元生命体ピッチパッチのピックル。拓の頭を領土として宣言し、伝統にのっとってこの未開の惑星・地球で恋をするのだという。
 そのお相手は、同じくピッチパッチのチュルリラ姫。そして姫もまた拓のクラスメート・磐座あかりの頭上を領地として宣言していた。さらにピックルの恋のライバル『ブラ麿』も大富豪の御曹司と融合し、恋の行方は混沌とするばかりで、世界各国はただ息を潜めてこのロイヤルウェディングの成り行きを見守っている……はいいけれど、領地にされた高校生は災難だよな~。


 ヒヨコを頭に載せた高校生の男女3人の恋のかけひきのお話で、中盤以後、愛想が悪くて乱暴なヒロイン、磐座あかりが積極的に動き出してから一気に面白くなりました。ほんわかほのぼのした物語に、ぴりりと辛い現実を薬味につける木村節も健在。

【ぴよぴよキングダム】【木村航】【竹岡美穂】【高次元生命体】【ヒヨコ】【マンガ家】【ゼニ】
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