付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「デパートを発明した夫婦」 鹿島茂

2007-10-10 | 伝記・ノンフィクション
「とにかく商品を見せてしまえ」

 『デパートを発明した夫婦』を読了。現在のデパートの原型……というより完成形は19世紀のパリに存在していました。
 多品種大量の商品の陳列、チラシや新聞記事で宣伝し、ウィンドウ・ディスプレイや店内装飾によって衝動買いを誘引し、中産階級としての意識をくすぐりつつ、消費者にあるべきライフスタイルを教育。万国博にパビリオンを出店し、全世界を相手に通信販売を展開する。美術展やコンサートなどの文化事業にも手を出し、社員食堂や寮を設置し、退職金や年金制度を発明する(ついでに万引きも生み出す)……。
 つまり「デパートを発明した」ということは、消費型資本主義社会を生みだしたということであり、徒弟制の延長しか存在しなかった社会にサラリーマンと福利厚生の概念を導入したということなのです。
 そう考えると、これがほとんどの人が存在すら知らない、たった1組の夫婦の成し遂げたことというのは、奇跡と考えるしかありません。

「デパートを発明した夫婦」★★★

【クリスマスセール】【カタログ販売】
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「魔女探偵レイチェル~死せる魔女がゆく」 ハリスン・キム

2007-10-10 | その他SF(スコシフシギとかも)
 最近翻訳も増えてきている、現代を舞台にした吸血鬼もの。まあ、主人公は魔女で相棒が吸血鬼なので、ダーティ・ペアみたいな女コンビものといってもいいかもしれませんが。

 人間の科学が生物工学に傾倒して発達した20世紀。行きすぎた科学の発展はバイオハザードを引き起こし、人類は瞬く間に壊滅寸前。
 ところが人間の数が少なくなったことにより、今度は逆にこれまで人間の間にまぎれて生きてきた異世界のモノたち、エルフ、吸血鬼、魔法使い、狼男、ピクシー、フェアリーといった存在が明るみに出てきてしまう。そしてお互い居心地の悪いまま文明の再建に励んでおよそ40年。
 邪悪な黒魔法使いや人狼などの犯罪を取り締まる<異界保安局>ISの捜査官レイチェル・モーガンは上司に嫌われ、閑職に回されて、ついに辞表を叩きつけて私立探偵を始めてしまう。けれども、それに優秀な捜査官<生ける吸血鬼>アイヴィ・タムウッドまで彼女に付き合って辞職してしまったことから、今度はイヤガラセばかりでなく賞金までかけられて殺し屋たちにつけねらわれるはめに。
 そんな状況で古教会にねぐらを定めたレイチェルとアイビーは、禁忌のバイオテクノロジーの闇取引を調査することになるのだが……。


 上下巻だけれども、シリーズものの第1作というかスペシャル版といった感じ。とりあえず小さな問題は解決して一息ついたけれど、敵のボスは余裕かましたままだし、レイチェルを助けたニックも隣家の老人も一般人のくせにいろいろ知りすぎているし、アイヴィだって山ほど隠していることがあって、これら伏線を次回以後どう回収していくのか楽しみです。

【魔女探偵レイチェル】【死せる魔女がゆく】【ハリスン・キム】【エナミカツミ】【トマト】【ネズミ】【悪魔】
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「狼と香辛料」 支倉凍砂

2007-10-10 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 麦の取引を終え、村から町へと出発した馬車の荷台で行商人・ロレンスが見つけたものは、麦の束に埋もれて眠る少女だった。狼の耳と尾を持つ美しい娘は、自らを豊穣の神と同じホロという名を名乗るのだが……。

 旅の商人と狼神の少女の交流と商売の顛末を描いた作品。麦を買って、毛皮を仕入れ、これをうまく売り飛ばせたら次は何を仕入れよう?という話。
 気にはなってはいたけれど、出たときは他に買う本も多くて手を出せず、気がついたらぽんぽんと巻を重ねていて、ますます手を出しにくくなってました。続刊がどんどん出るのは面白くて人気のある証拠なんだけれど、問題は誰に人気があるかってことで、自分が面白いと思うかどうかは別問題。
 でも、周囲の評判がけっこう良いので、なら読んでみようかということに。そしたら、自分にも面白かったね。2人の旅がどこまで行くか、少し追いかけてみることにしましょう。

「狼と香辛料」★★★★

【時代の流れ】【北へ】【損得勘定】
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「バッカーノ!2002 Aside」 成田良悟 

2007-10-10 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 この『バッカーノ!』のシリーズは分類区分に困るよね。錬金術師や悪魔や不死者が出てくるけれどファンタジーともホラーとも違うし、なら単なるアクションものかというとそれも違う。面倒だから「SFだっ!SF好きな人間の好きな作品はみんなSFだ!」などとバカな思考停止をしたくなるくらいだけれど、それくらいなら「今までの常識ではありえないことが起こり、しかもそのことに科学的な説明がつけられないからファンタジー」ということにしておこう。少なくともSFと言い張るよりマシそうだ。
 さて不死者となった人々が中心に奇想天外な大騒ぎが起こる『バッカーノ!』ですが、今回は太平洋航路の豪華客船を舞台にしたシージャックの話。

 交際し始めて70年となるフィーロとエニスがついに新婚旅行に。けれども、ついエニスに新婚旅行と言いそびれたフィーロは、家族旅行だとチェスくんを連れての三人旅にしてしまう。同型の船と洋上ですれ違うのが目玉だという、豪華客船に乗り込んでの日本への旅である。
 しかし、毎年のように事件に巻き込まれるのがあたりまえの彼らの旅が平穏に終わるはずもなかった。映画宣伝に乗り込む撮影スタッフや天才子役、ファミリーの若頭に復讐しようという愚連隊、テロリストに殺し屋と既に出港時点で大騒ぎの予感が……。

 時代が2002年ということなので当然のように1930年代から動き回っていた連中のひ孫やらなんやらが混ざって、さらに大騒ぎに。あいかわらず、不死者とか悪魔とか出てくるけれど、普通の生身の人間の方がよほどトチ狂っていて超人的に暴れ回るのがこの作品の醍醐味かも。
 『バッカーノ!1931』と同様に、巻ごとに舞台や視点が変わって、トータルで1つの物語になる趣向のよう……って、これ、Bサイドで終わるの? そもそもレコードもLDもカセットテープもほとんど消えてしまって、A面B面といわれて判る中高生は多くないと思うね。

 しかし10月発売したばかりの新刊がアマゾンで品切れしていて、定価578円の本に869円のプレミア価格がついているのもバカみたい。きっと地方はまだ流通途中だよ。

【バッカーノ!】【2002 Aside】【成田良悟】【いきなり欠けた四天王】【とりあえず胸に銃弾4発】【世界は私のためにある】
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